『転生したらバーバリアンになった』小説版・第84話ロングあらすじ【初心者向け・保存版】

転生したらバーバリアンだった
Surviving the Game as a Barbarian | Chapter: 84 | MVLEMPYR
Sewers (5) Thud. The moment the barbarian collapses to the ground, raising dust… Amelia Rainwales clenches her teeth and...

下水道(5)


倒れた巨躯と赤髪の女

バーバリアンのビョルンが頭部を吹き飛ばされ、地面に崩れ落ちた。
赤髪の探索者――アメリア・レインウェイルズは息を荒げながら自らの肋骨の痛みに気づく。

「……油断の代償ね」

確かに勝利はした。しかし、ほんの三か月前に迷宮に入ったばかりのバーバリアンにここまで傷を負わされたこと自体が驚きだった。
彼女は長年、最も才能ある冒険者と呼ばれ続け、20年もの経験を積んできた。その彼女ですら危機感を抱くほど、ビョルンは急成長していたのだ。


不死の力

一方のビョルンは、吸血鬼の本質スキル【闇の源】によって死を免れていた。
頭部を吹き飛ばされても心臓が破壊されない限り死なず、さらに【不死】の効果で肉体は再生し続ける。

「……怪物のような再生能力ね」

アメリアはダガーを収め、ポーションを取り出してビョルンの傷口に注ぐ。彼女にとって彼は“殺すべき対象”ではなかったからだ。


記憶を消す薬

やがて意識を取り戻したビョルンは、彼女に問いかける。
「なぜ殺さなかった?」

アメリアの答えは単純だ。――彼らは王家の間者でも敵でもない。だから殺す必要がないのだと。

そして彼女は黒ずんだ錠剤を取り出す。
「これはノアークの錬金術師が作った薬。飲めば直近1時間の記憶が消える」

それを飲めば、下水道の“門”や彼女の存在を覚えてはいられない。
ビョルンは反論を試みるが、強引に口をこじ開けられ薬を流し込まれた。


仲間の記憶は消えたが…

目を覚ますと、そこは再び下水道。
ビョルンの仲間――ミーシャ、ドゥワルキー、ヒクロド、ロトミラーも気を失っていたが、彼らの装備は脱ぎ捨てられているだけで無事だった。

仲間たちが次々と目を覚ますと、皆一様に首を傾げる。
「俺たち……なぜ気を失っていた?」
「追っていたのはあの悪女のはず……」

不思議なことに、彼らは“記憶”を失っていた。最後の記憶は「逃亡者の隠れ家を追っていた」ところで止まっている。

しかしビョルンだけは違った。薬を飲まされたにも関わらず、彼だけは全てを覚えていたのだ。


死んだはずのエリサ

仲間たちとともに装備を整えていると、ロトミラーが声を上げた。
「みんな、あれを見ろ!」

そこには――かつて因縁を持った女司祭、エリサの死体が転がっていた。
手足は無惨に粉砕され、完全に息絶えている。

仲間たちは混乱する。
「どうして記憶がない?」
「俺たちはこいつを倒したのか?」

ドゥワルキーが魔力の痕跡を調べ、確かに自分の【麻痺毒】が残っていると証言。
さらにロトミラーは「死体の損壊具合から見て、倒したのは俺たちに違いない」と推測する。

結論として、彼らは「戦いの末に勝利したが、エリサの邪悪な力で記憶を奪われた」と整理した。


ビョルンの沈黙

だがビョルンは真実を知っている。
記憶を消す薬を渡されたのは自分だけだった。そして効かなかった。
本来なら仲間たちに全てを語るべきだろう。

しかし彼は口を閉ざす。
「もし知られれば、アメリアが再び自分を狙ってくるかもしれない」
生き残るため、ビョルンは沈黙を選んだ。


下水道の秘密

こうして一行は混乱を抱えたまま地上へと戻る。
ロトミラーは「寺院に行き、身体に異常がないか検査しよう」と提案し、仲間たちも同意する。

ビョルンは最後に一度だけ振り返り、暗い下水道の奥を見つめた。

そこには“自分が知らない世界の秘密”が眠っている。
好奇心が疼く。だが彼は苦笑し、思いを振り切った。

「……命の方が大事だ」


第84話のポイント・考察

  • アメリアは敵か味方か?
     殺すこともできたのに、彼女はビョルンを生かし、仲間の記憶を消して帰した。単なる狂気ではなく、彼女なりの規律がある。
  • ビョルンだけが真実を知る
     仲間たちは「記憶を奪われた」と思い込んだが、実際は薬による操作。しかも効かなかったのはビョルンだけ。この差が今後どう影響するか。
  • エリサの最期
     宿敵エリサはついに死亡。しかし、その死に至る過程は謎のまま。アメリアが処理した可能性が高い。
  • 下水道=禁断の領域
     古代都市ノアークと繋がる“門”の存在が示唆された。ここから物語はさらに大きなスケールへと広がっていく。

まとめ

第84話は、ビョルンが“不死”の真価を示しつつ、強敵アメリアと奇妙な共存関係を結んだ回でした。
仲間には知らされない秘密を抱え、下水道の深淵に潜む謎はそのまま残る。

次回は、彼が「知ってはいけない真実」とどう向き合うのかが注目されます。

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