バーバリアンとして生き残る – 第94話 「バーバリアントロフィー (1)」要約と考察
第94話は、再び「貴族社会におけるバーバリアンの立場」を描く回です。
前話まで続いたゴーストバスターズや情報戦の流れから一転し、今回は バロン・マルトアンの「見せびらかし用戦利品」 として振り回されるビョルン視点が中心になります。
ゴーストバスターズ後の現実感
精神世界＝ゴーストバスターズから戻った直後。
わずか 12秒の“無防備タイム” が発生していることに気づき、ビョルンは注意を促します。
「もし何かがその瞬間に起きたら、対応が遅れる」
合理主義者らしいリスク管理。
ただし利便性が勝るため、利用をやめるつもりはありません。
そして眠りについた翌朝――
マルトアン男爵との約束の日 がやって来ます。
“戦利品”としての装飾
マルトアン邸に到着すると、即座に控室へ。
ビョルンは「宴席にふさわしい姿」に仕立て上げられます。
- 上半身裸にスパイク付きの肩当て
- 獣頭の肩飾り
- 腰には無駄に幅広なチャンピオンベルト
- 髪は長く垂らされ、視界を妨げる
- 片足7kgの過剰装飾プレートブーツ
防御力も機能性も無視。
ただただ「威圧感」を演出するためだけの装備です。
鏡を見たビョルンは悟ります。
「これは“ショーウィンドウ・バーバリアン”だ」
実用性ゼロだが、見た目の迫力は満点。
周囲を震え上がらせるには十分。
横柄な執事 vs. 良識派の騎士
ここで新たな人物が登場します。
- 執事（アシスタントマネージャー）
- 常に見下した態度。
- 「身長が低い」と中敷きを入れさせるなど、ビョルンを完全に“下賤の者”扱い。
- カルス・エリムーア（元探索者の騎士）
- 行列中に気遣いの声をかけ、宴席でも休むよう勧める。
- 探索者経験があるため、バーバリアンへの偏見が少ない。
この対比が鮮やかに描かれます。
執事の横暴さは読者の苛立ちを誘い、カルスの存在が一服の清涼剤として働きます。
宴席にて：見世物としての役割
バロン・マルトアン一行が伯爵邸に到着すると、注目を集めたのは“バーバリアン先導”という異例の演出でした。
- 「古代の逸話を真似たのか！」
- 「まるで巨人が歩いているようだ！」
貴族たちは驚嘆し、マルトアンは上機嫌。
「後で褒美を取らせる」 とまで口にします。
しかしその裏で――
ビョルンは「一人だけ異様な格好で放置される孤立感」を味わうことになります。
バーバリアンを“演じる”覚悟
宴席では、周囲から好奇の視線が集中。
「動物園の猿のようだ」と感じるビョルン。
そこで再び執事が口を出し、
「座るな、弱く見える」「鉄血の戦士らしく振る舞え」と小言を浴びせます。
この時、ビョルンの内心でスイッチが切り替わります。
「そうだ。俺はバーバリアンだ」
そう悟った瞬間、彼は 雄叫びを上げ、肉を掴み取り、骨ごと噛み砕き始めます。
- 「ベヘル――ラァァァァ！」（雄叫び）
- 骨までバリバリ咀嚼
- 「執事、お前の頭を砕きたい」→「ただそうしたいからだ！」
その迫力に執事は蒼白。
「ギルド事件」の噂を思い出し、恐怖に駆られて退散します。
カルスは大笑い。
「あいつのあんな顔、初めて見た！」
貴族社会への“適応”
骨を砕きながら肉を頬張る姿に、貴婦人たちは口々に「なんて野蛮！」と囁きます。
しかしビョルンは吹っ切れます。
「恥を捨てれば、これほど楽な立場はない」
そのまま宴席を全力で楽しみ、食材を食い尽くし、何度も雄叫びを上げるのでした。
第94話のテーマと考察
- 「戦利品」としての存在感
- マルトアンにとってビョルンは“強さの象徴”＝トロフィー。
- 機能性ゼロの衣装はその象徴化の極み。
- バーバリアンを“演じる”決意
- ビョルンは屈辱を逆手に取り、むしろ「野蛮人を演じ切る」ことで主導権を握る。
- その結果、恐怖と畏敬を同時に植え付けることに成功。
- 人間関係の布石
- 執事＝敵対的存在。
- カルス＝潜在的な友人・理解者。
- 貴族社会における「敵と味方」がここで整理される。
まとめ
第94話は、前章までの情報戦から一転し、
「社交の場で戦利品として扱われるビョルン」 を描いた回でした。
- 見せ物としての扱いに屈辱を覚えつつも、逆に“演じ切る”ことで力を誇示。
- 執事を恐怖で黙らせ、騎士カルスとの交流も生まれる。
- バーバリアンとしての「社会的適応の仕方」を学ぶ重要な一幕。
次回以降、この宴席でさらに事件が広がっていくことが示唆されています。
