『転生したらバーバリアンになった』小説版・第217話ロングあらすじ【初心者向け・保存版】

転生したらバーバリアンだった

【徹底解説】“王は去り、兵は残る”――『転生したらバーバリアンだった』第217話あらすじ&考察(Monarch①)

Surviving the Game as a Barbarian | Chapter: 217 | MVLEMPYR
Monarch (1) Monarch (1) Dimensional Gate. A unique magic spell handled only by a few schools. It goes without saying how...

導入

第217話は、1層の安全地帯が静かに崩れはじめる瞬間を克明に描きます。第三騎士団長マルコ・エルバーンは《ディメンショナル・ゲート(Dimensional Gate)》の段階的運用へ舵を切り、突破戦を放棄。これは「誰を救い、誰を捨てるか」の選別戦略です。一方、主人公ビョルン・ヤンデルは、団長から**“ビョルン+魔術師1名”のみという救出提案を受けるも即断で拒否――「仲間は捨てない」を選びます。そして“第八の階層主”が倒れ、第九体目の出現前夜、中心部では脱出に殺到する探索者と騎士団が衝突。ビョルンは見捨てられた有力者の拾い上げ**に向けて動き出します。決断の重さと統治の冷酷が、濃霧のように胸に残る一話です。


詳細あらすじ

霧の1層で囁かれるのは《ディメンショナル・ゲート》の噂。これは一部学派のみが扱う空間魔法で、一回につき最大30名を都市へ門送できる“究極の生存スキル”。ただし戦闘下での即時脱出には対策が浸透しており、さらに術者は生涯で一度しか使えない(近代化した魔法理論による“代替式”運用)という制約がある。ビョルンは冷静に算盤を弾く。上位クランは“門使い”を優先採用し、学派側も支援に出すとはいえ、総数はせいぜい150名規模。1発30名としても4,500人に満たない。残余は――棄民

その推定が正しかったと判明するのは、マルコ・エルバーン本人が姿を現したときだ。彼はさりげなく管理担当からビョルン隊の構成を把握しており、“お前と魔術師を連れていく。1年の王軍奉仕を条件に”と切り出す。枠は2つ――他の仲間は置いていけ、ということだ。待ったなしの二者択一。だがビョルンの返答は即答だった。「仲間は捨てない」。この瞬間、彼は“生還率”より“矜持”を取る。

以後、ビョルンは提案内容を秘匿する。団長からの**「黙っていろ。仲間が大事なら」という圧もあったが、いずれ噂は広がる――そう踏んだからだ。実際、レイヴン(Arrua Raven)の耳にもすぐ届く。アヴマンやミーシャ・カルシュタインも動揺を隠しつつ視線で問いかけるが、ビョルンは“楽観を演じる指揮官”として「大丈夫だ」**と押し切る。カロン率いる即席バーバリアン組は、今日もアダマンタイト大剣で腕力比べ――この素朴さがむしろ救いだ。

時は動く。1層の結晶が血のように赤く輝き、第八の階層主が出現、ほどなく討伐される。第九体目が倒れた後に起きる“あの事”(※ゲーム準拠の危機)を知るビョルンは、残り4時間のカウントを胸の内で刻む。対照的に、外縁の探索者たちは**「なぜ上層部は動かない」と苛立つばかり。大型クラン〈エラメルの星〉**が救援の“出動演技”を続けるのも、本心を悟らせないための舞台装置だとビョルンは読む。

そして――中心広場。王家幕舎に近い通路で、が次々と開き、学派ごとに段階運用が始まっていた。順番に門を開くのは、術式が周囲のマナを吸い上げる性質ゆえ同時展開が難しいからだ。だが“順番”は暴発を生んだ。「置いていくのか!」と群衆が殺到、騎士の警告に斬り結ぶ者まで出る。マルコは「外に敵がいるのに、無益な流血だ」と舌打ちしつつも、計画を止めない。「半分は逃がした。予定より遅い」――そして自分たちの番が来る。

門前に立ち、彼はふとビョルンとの会話を思い出す。「罪悪感を僕に流用するな」。あのバーバリアンは、“助けの指名”が団長の良心の慰撫でもあったことを言い当てたのだ。だが彼は**「ラフドニアのために」**と一歩を踏み出す。王都を守る最後の戦力を温存する――それが“彼の仕事”だ。

その頃、外縁の通路まで怒号が届く。「王家は逃げる!止めろ!」。ビョルンは目を閉じ、最終計画を確認する。目を開け、一言。「中央へ行く。捨てられた“使える奴”を拾う」。彼の戦いは、ここからが本番だ。


考察

1)王の論理:突破から“選別輸送”へ

ポータル封鎖屍術師/ルイン・スカラー/ブラッドナイト/裏切り者が貼り付いた時点で、正面突破は被害の桁が合わない。マルコは**“クラスターの保存”に切り替え、《ディメンショナル・ゲート》による段階退去を選ぶ。これは短期の道義的非難と引き換えに、長期の国家存続確率を最大化する“正しい悪手”だ。にもかかわらず、順次展開は群衆心理のパニックを招く。秘匿は必要だが、説明の欠如は“裏切られ感”を増幅させる。軍事的合理と民衆的感情の非整合**が、流血を生む典型例だ。

2)ビョルンの論理:功利を超える“同盟価値”

ビョルンは生存期待値だけ見れば、2枠を掴むのが合理。だが彼は**「仲間は捨てない」**を選ぶ。これは単なる情ではない。

  • 将来のクラン核形成(信義の蓄積=最強のリクルート資産)。
  • 外縁に取り残される“実力者の拾い上げ”による戦力急造(実務合理)。
  • 指揮官が**“楽観を演じる”ことで隊の心理摩耗を抑制**(人事合理)。
    つまり短期の生還率より中期の集団生存力を選んだ、と読める。

3)罪悪感の受け皿

団長は国家理性を遂行しながら、個人の呵責から逃れられない。そこで“ビョルン指名”という象徴的免罪を無意識に求めた――「彼(蛮族)すら救った」という語りのために。ビョルンがこれを看破して拒む場面は、指揮の職能と感情の清算を切り分ける、極めて鋭い倫理シーンである。

4)第九体目の意味

“第八が倒れた”という描写と残り4時間の刻みは、“第九体目の後に起きる事態”を示唆する時限装置。王家の退避はその前に終える必要があり、外縁の探索者は最悪のタイミングで無力化される恐れがある。ビョルンの中央回収作戦は、時間との戦いでもある。


用語ミニ解説

  • 《ディメンショナル・ゲート(Dimensional Gate)》:一部学派に伝わる高等転移魔法最大30名を都市へ転送。近代(ゲーム時代から150年後)の共同研究により“生涯一度”の代替式使用が普及。同時多発展開は周辺マナ吸収の衝突で困難
  • 伝言指輪(Message Ring):宝玉に情報記録術式を施した指輪。魔力を通すと録音・念写内容が流入し、身元担保/伝令に用いられる。
  • 階層主(Floor Master):1層ボス。Day3以降6時間周期で再召喚30人規模で迅速討伐が定石。ドロップは乏しく、**等級審査(4級昇格)**の検定役。
  • 主要人物表記
    • Bjorn Yandel(ビョルン・ヤンデル)/主人公。
    • Misha Kaltstein(ミーシャ・カルシュタイン)
    • Erwen(エルウィン)
    • Ainar(アイナル)
    • Arrua Raven(レイヴン)
    • Marco Elburn(マルコ・エルバーン)/第3騎士団長。
    • Avman Urikfrit(アヴマン・ウリクフリト)
    • Karon Tarson(カロン)

まとめ

  • 王家は突破を棄て、段階的《ゲート》で戦力保存に転じた。説明なき選別は暴発を招き、中心部は流血の混乱へ。
  • ビョルンは“2枠”を拒否し、仲間と外縁の実力者回収に賭ける。短期合理より同盟価値と中期の集団生存を選んだ判断は、指揮官の覚悟の更新でもある。
  • 第九体目がもたらす“何か”まで残り4時間。時間制約の中で、誰をどう束ねるかが勝負所。
  • 次回は、中心部での人材スカウト/即席隊列の再編、そして撤収済み勢力の空隙ビョルンがどう埋めるかが焦点。王の論理が去った後、**“残る者たちの論理”**が試されます。

“仲間は捨てない”というモットーの再定義――それは誰を拾い上げるかという現実の選別と、ついに真正面から噛み合い始めました。

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