- “借り”と“恩”と“利害一致”──アメリアとビョルン、最後の波の直前へ
- 1. ベルバーソンの最期と、アメリアの再生能力
- 2. アヴマン“死亡”誤認事件と、蘇生アイテムの種明かし
- 3. 「バリアの中のキャンプ」──目覚めたら1日経過
- 4. エルウェンの説明パート:アメリアvsパーツランの一触即発
- 5. その後の戦い:第3波の4等級ボスとアメリアのキャリー
- 6. ミーシャ&アメリア側の出来事:スクロールと“先制無効”エッセンス
- 7. 島イベントの真相:「ガヴリリウスの装置」を起動したのは誰か
- 8. ついに明かされる“歴史を変える”アイテム──…かと思いきや打ち切り
- 9. そして、最後の波が始まる──風の合図と“怪物”
- 10. 第277話のポイントまとめ
“借り”と“恩”と“利害一致”──アメリアとビョルン、最後の波の直前へ
第277話「Whirlpool(3)」は、
・ベルバーソン戦の完全決着
・ミーシャたちとの本格的な再合流
・アメリアの能力と真意の一端
・島イベントの“黒幕”とトリガーの正体
・そして最終ウェーブ(ラストボス)開幕の予告
まで一気に話が進む、“大きな区切り前夜”的な一話です。
1. ベルバーソンの最期と、アメリアの再生能力
前話ラストでベルバーソンにトドメを刺したアメリア。
277話冒頭では、その“後始末”から始まります。
ベルバーソンは最後に弱々しく「いやだ……」と呟きますが、
アメリアはその懇願を一切聞き入れず、頭を踏み潰して即死させる。
スイカのように頭が潰れる描写
→ 彼があれほど必死に足掻いた末路としては、あまりにあっけない
この「虚無感のある終わり方」は、
“どれだけもがいても一瞬で終わる”ダンジョン世界の冷たさを象徴しています。
● [不死の泉]系エッセンスによる“腕の再接合”
その後アメリアは、
ベルバーソンのサブスペースポケットから切断された腕を取り出し、
まるで「落としたパーツを拾う」くらいのノリで、それを彼の肩の断面に押し当てます。
- 数秒ほどギュッと押し付ける
- そのまま“ボンドで貼ったかのように”ぴたりとくっつく
- 神経が完全に繋がるにはあと一日ほどかかるが、機能的には再生
ここでビョルンは、
「そういえば、以前アメリアは『ポーションが使えない』と言っていた」
→ つまり、“回復を無効化して超自然治癒を得るエッセンス”を持っているのでは?
と推測します。
名前として挙げられるのが**[不死の泉(Fountain of Immortality)]**。
- すべての治癒・回復効果を無効化
- その代わり、“自然治癒”が常識外れに強化される
- 切断された手足が時間経過で再接合するほど
という、一種の“超自己再生”エッセンス。
「ポーションも回復魔法も受けられないが、自前の再生力で生き残る」
という、アメリアの戦い方と噛み合った選択と言えます。
2. アヴマン“死亡”誤認事件と、蘇生アイテムの種明かし
ビョルンの意識がまだはっきりしているうちに、
ミーシャたちと本格的に合流します。
そこでミーシャの視線が向かったのは、
地面に倒れているアヴマン。
- 呼吸なし
- 脈もなし
- 血まみれで冷たくなっている
レイヴンも俯き、
「……そうね」と死を認める空気になります。
しかしビョルンだけは、
「いや、普通に生きてるぞ」
と冷静です。
● 腕輪アイテム No.7611「死霊術師の欺き(Deceiver of the Necromancer)」
ビョルンはアヴマンの手首を見せながら説明します。
- 特殊アイテム No.7611「死霊術師の欺き」
- 致命傷を受けた瞬間、自動的に「仮死状態+一時的無敵」を付与する
- 周囲から見ると「完全に死んでいる」ようにしか見えない
- 一定時間が経つ前に回復を入れれば、そこから復活させられる
アヴマンの腕輪には、
埋め込まれた宝石がひとつだけ光っており、
「この光っている分が“一回分使った証拠”」
という仕様になっています。
ビョルンがポーションを傷口にかけると、
乾ききっていた血がジュウジュウと泡立ち、溶けるように反応。
- ポーションは“死体”には反応しない
- つまりこの反応がある時点で、生体判定が残っている=まだ生きている
ここに、
「システムを知っているビョルン」と
「この世界原住民である仲間たち」の知識差が出ます。
エルシナが回復魔法を重ねることで、
アヴマンは無事“本当の意味での生還”を果たすことに。
「アイテムの効果が切れる前にたどり着けて良かった」
「俺がここで気を失っていたら、みんな本当に“遺体”として扱っていただろう」
とビョルンは内心で冷や汗をかきます。
● そしてビョルンも限界 → そのまま倒れる
アヴマン救出で安心したところで、
ビョルン自身の体力も限界を迎えます。
- 全身満身創痍
- 毒や出血、肉体爆破の反動
- 痛覚耐性のおかげで“マシ”に感じていただけ
「あ、そういえば俺も治療してもらわないと──」
と思った瞬間に視界がぐにゃりと傾き、そのままバタリ。
ここで場面が暗転します。
3. 「バリアの中のキャンプ」──目覚めたら1日経過
次にビョルンが目を覚ますと、すでに夜。
- 高い木々
- 紺色の葉
- 所々から見える夜空
- そして傍らで燃える焚き火の音
周りにはいくつもの寝袋が並び、仲間たちは疲れ果てて熟睡中。
結界の外にはモンスターの影が見えるものの、
**[悪しき終焉の宣言]**による神聖バリアが張られ、直接襲いかかっては来ません。
見張り役として起きているのは、
エルウェンとアメリア。
● 経過した時間と、ここまでの“つなぎ”
- ビョルンが倒れてからおよそ一日が経過
- その間も、
- アヴマンは回復し
- 何度か防御→解除を繰り返しながら戦闘を継続
- すでに3回目のバリア休憩に入っている状態
ビョルンは「何が起きていたのか」をエルウェンから聞き出します。
4. エルウェンの説明パート:アメリアvsパーツランの一触即発
● ビョルン&アヴマン治療:毒解除はアメリアの手柄
まずビョルン自身の毒問題。
- 剣に塗られていた毒が強力で、
エルシナの神聖魔法や一般的な解毒魔法では処理しきれない - 神官の神力もほぼ枯渇していた
そこで登場するのがアメリア。
「これを使いなさい。恐らく解毒薬よ」
と、ベルバーソンのサブスペポケットから見つけたと思しき専用解毒薬を提供。
- それを飲ませる(or投与)ことで毒が中和
- はじめてポーションがビョルンに効き始める
つまり、
「ビョルンの生存には、アメリアの存在がかなりクリティカルだった」
という構図です。
● しかし、パーツランの“正当な怒り”も消えてはいない
パーツラン側から見れば、
- 自分たちを嵌め、島の状況をヤバくしたノーアーク側の人間
- 仲間を殺され、命を狙われた張本人の一人(アメリア)
に対する怒りは当然残っています。
- 「状況が状況だから手を組んでいるだけ」
- 「本来なら今すぐ斬りかかりたい」
という本音がある。
実際、バリア中の休憩タイムでは一触即発までいきます。
- パーツラン:
「ノーアークの略奪者と一緒に戦うなんて、正気か?」 - アメリア:
「そっちこそ文句ばかりね。嫌なら今ここで勝負してもいいわよ」
そこへミーシャとレイヴンが割って入ろうとする。
- ミーシャ:
「でも彼女は、私たちを助けてくれた」
「裏切られているのは彼女も同じ。いまは利害が一致しているはず」 - レイヴン:
「ここで戦い始めたら全滅するだけ。今は合理的に考えよう」
パーツランもバカではないので、
「今ここで仲間を減らすわけにはいかない」と判断し、
剣を引くところでギリギリ踏みとどまります。
- 敵視は消えない
- しかし、今は“敵の敵”として共闘する以外の選択肢がない
という、非常にギスギスした同盟関係が描かれます。
5. その後の戦い:第3波の4等級ボスとアメリアのキャリー
ビョルンが眠っている間にも、
パーティは波状攻撃を耐え続けていました。
- 第3ウェーブに突入
- 中ボスは4等級モンスター
- 途中、エルシナが気絶するほどのピンチも発生
しかしここでも活躍したのがアメリア。
- 高火力の単体DPS
- 前線での行動制限攻撃
- ノーアークトップクラスの実力
などで、
**火力面では完全に“エースアタッカー”**として働きます。
結果としてボスは撃破されるものの──
「……エッセンスは落ちませんでした」
という悲しいオチ。
- 4等級モンスターはそもそも個体数が少ない
- エッセンスドロップ率も低く、狙って量産できるものではない
ゲーム的には「うわ出なかったか……」な場面ですが、
“現実”として生きている今のビョルンには、
**「命をかけて戦っても何もリターンがない」**虚脱も乗ってきます。
6. ミーシャ&アメリア側の出来事:スクロールと“先制無効”エッセンス
ビョルンは、
「ミーシャとアメリアがどうやってここまで辿りついたか」
も確認していきます。
● [悪しき終焉の宣言]スクロールの出番
すでにミーシャ視点で描かれていた通り、
- アメリアは瀕死で身動きが取れない状態
- ミーシャが一人でモンスターの波を必死に捌き続ける
- 「歩けないならせめて何か手はないの!?」
→ アメリアのポーチから神聖スクロール「悪しき終焉の宣言」を取り出す
これにより、
二人の周囲に神聖バリアが発生し、一時的に安全地帯を確保。
- このスクロールは、元々エルシナが使っている本家スキル
- しかし神聖スクロールとしては、既に制作技術が失われたレベルの代物
- いわば“過去の遺物”級の希少アイテム
「どこで手に入れたんだそれ……」とビョルンが驚くのも無理はありません。
● 「敵から先には攻撃されない」系のエッセンス
その後、アメリアがある程度動けるようになってから、
二人は激戦区をくぐり抜け、ビョルンたちと合流します。
そのカギになったのが、
アメリアの持つ**「モンスターから先制されない」タイプのエッセンス**。
- モンスターの“先制攻撃”を封じる
- こちらから手を出さない限り、向こうも攻撃してこない
- 結果として、多少無理なルートでも“すり抜け”が可能になる
このエッセンスは、
- ぼっち探索
- 奇襲戦法
- 危険地帯の単独移動
などに超有用なため、
“略奪者(レイダー)”であるアメリアが持っているのは非常に納得のいく選択です。
7. 島イベントの真相:「ガヴリリウスの装置」を起動したのは誰か
ビョルンが一番気にしていたのが、
**「なぜこの島がこんなイベント状態になったのか」**という点。
アメリアの口から語られる真相はこうです。
- この島には“隠し要素(Hidden Piece)”が存在する
- 名前は**「ガヴリリウスの装置(Gavrilius’ Arrangement)」**
- カーミラ&ベルバーソンの二人がそれに触れたことで、
→ 「島を包むこの波状イベント」が発動 - 彼らの狙いは、“アメリアをこの島に閉じ込めてから始末する”こと
つまり、
- 事前にアメリアの行動ルートとタイミングを把握
- “脱出手段を奪った上で、波とモンスターでじわじわ殺す”
という計画だったというわけです。
ビョルン視点からすると、
「隠し要素の存在を知っている=かなりコアなプレイヤー寄りの知識」
なので、
カーミラかベルバーソンのどちらか、もしくは両方が
**元プレイヤー(=転生/転移組)**である可能性が高いと推測します。
● カーミラの処遇:逃がさないアメリア
ビョルンは、
「ドレイク使いの召喚士が生きていれば、脱出に使えたのでは?」
と内心ツッコミを入れますが、
アメリアの答えは一言。
「裏切り者は許さない」
- カーミラはベルバーソンと組んでアメリアを殺そうとした
- その“裏切り”に対するアメリアの答えは、即処刑一択
利便性よりも、
「裏切りに対する報復」を優先するあたり、
彼女の価値観がはっきり表れています。
8. ついに明かされる“歴史を変える”アイテム──…かと思いきや打ち切り
ビョルンはもうひとつ、
どうしても聞きたかったことをアメリアにぶつけます。
「その隠しアイテム、何なんだ?」
「“歴史を変える”ほどの力を持ってるって話だっただろ」
これに対し、アメリアは明確に線を引きます。
「……やめなさい」
と、珍しく強い調子で会話を止め、
それ以上の問いかけを拒否。
ビョルンもさすがに雰囲気を察し、
「ただの興味だから!」とフォローを入れますが、
アメリアの表情は険しいまま。
ここに、
- 彼女個人にとって、そのアイテムが 「単なるレアドロップ以上の意味」 を持つこと
- その内容が、
“世界観レベルの大ネタ”に繋がっている可能性
が匂わされます。
今はまだ、その正体は闇の中。
9. そして、最後の波が始まる──風の合図と“怪物”
会話の終盤、
アメリアがぽつりと呟きます。
「モンスター」
それと同時に、
森の木々を揺らすほどの強風が島を吹き抜ける。
- ザァァァァァ……という大きな風の音
- 樹冠が激しく揺れ、葉がざわめき立つ
ビョルンはそこでようやく理解します。
「ああ、最後の波が来たな」
アメリアは静かに告げます。
「強力なモンスターが近づいてる。
みんなを起こしなさい」
ここで第277話は幕を下ろし、
ついにラストウェーブ(最終ボス戦)開幕が予告されます。
10. 第277話のポイントまとめ
● 戦闘・システム面
- 【死霊術師の欺き】という“疑似死亡+無敵”アイテムの存在
- [不死の泉]系エッセンスによる「回復封印と引き換えの鬼再生」
- [悪しき終焉の宣言]スクロール+“先制無効”エッセンスによる生存ルート
- 島イベント「ガヴリリウスの装置」のトリガーと、隠し要素の存在
● 人間関係・心理面
- パーツラン vs アメリアの殺気立った対立
- それを“理屈”と“経験”でなだめるミーシャ&レイヴン
- ビョルンとアメリアの間に生まれつつある「借り」と「恩」と「腹の探り合い」
- アヴマンのセリフ
「これ、嫁にバレたら探索やめさせられるな……」という、
死の淵から戻ってきた男のリアルな家庭事情
● 物語全体への布石
- アメリアが手に入れた“歴史を変える”アイテムの存在
- それを彼女がビョルンにも明かさないほどの重要性
- ガヴリリウスの装置という、プレイヤーでも知る人が少ない隠し要素
- これらが、今後の“世界レベルのストーリー”に直結しそうな雰囲気
そして何より、
「最後の波が始まる」
という一文で、
6階層・パルネ島イベントがついに最終局面に入ることが確定しました。