『転生したらバーバリアンになった』小説版・第316話ロングあらすじ【初心者向け・保存版】

転生したらバーバリアンだった
Surviving the Game as a Barbarian | Chapter: 316 | MVLEMPYR
Tick, tock, tick, tock… The second hand completed a full circle, and the minute hand finally moved to the next mark. But...

【徹底解説】記憶が“呼ばれない”という異常|『転生したらバーバリアンだった』第316話あらすじ

導入

第316話「Memory (1)」は、派手な戦闘も劇的な死もない。
だが、これまで積み上げてきた因果編の前提そのものが、静かに、しかし確実に揺さぶられる回だ。

ビョルン・ヤンデルは“呼ばれない”。
それだけで、この章は成立してしまう。

これまで彼を導いてきた「精神世界への招集」「GM(管理者)との接触」「15日という周期」――
それらが何の説明もなく機能停止する

理由は分からない。
確認手段もない。
そして何より、待っても何も起きない

第316話が描くのは、戦えない主人公だ。
剣も知恵も使えないまま、ただ時間だけが過ぎていく。
その中で浮かび上がるのは、「記憶」と「世界」の関係性、そしてビョルン自身が“原因”になっているかもしれないという疑念である。


時計は動くのに、呼ばれない

物語は、あまりにも静かな違和感から始まる。

チク、タク、チク、タク……

秒針は一周し、分針も進む。
日付も合っている。
それでも、精神世界への招集は起きない。

ビョルンはまず機械的な異常を疑う。
時計が壊れているのか。
時間の認識がズレているのか。

しかし、朝まで待っても何も起きない。
ここで初めて、「おかしい」という感覚が確信へと変わる。

彼はアメリアと一晩中話し合い、可能性を三つに絞る。

  1. 単なる一時的なエラー
  2. オーリル・ガビスによる意図的な遮断
  3. オーリル・ガビス自身に何かが起きた

最初の可能性は、理論上は否定できない。
魔道具も人の手で作られたものであり、サブスペースリングですら不具合を起こす世界だ。

だが、ビョルン自身も分かっている。
これは都合のいい逃げ道だ。

より現実的なのは、二つ目と三つ目。
特に彼が「最もあり得る」と感じているのは三つ目――
あの怪物のような老人に、何か避けられない事態が起きた可能性だ。

「……まあ、寝るか」

結論を出せないまま、彼は思考を打ち切る。
分からないことを考え続けても、答えは出ない。

だが、この“一時停止”こそが、第316話全体のトーンを決定づける。
進めない主人公
それはこの物語において、最も不安定な状態だ。


何も起きないまま、日常だけが進む

数日が過ぎる。
ビョルンは迷宮にも潜る。

[ははは! またやったな! これを続けていけば、みんな金持ちだ!]

迷宮内では何も起きない。
前回と同じように略奪者を狩り、閉鎖まで動く。

異常は、世界の外側にしか存在しない

そして迎えた、次の15日。
深夜0時。

「……行けなかったのか?」
「……ああ」

身体は、ここにある。
精神だけが呼ばれることはなかった。

ここでビョルンの中に、はっきりとした感情が生まれる。

「くそ……」

焦りだ。
状況が変わらないことそのものが、彼を削っていく。


六か月という“停滞”

時間は残酷だ。
止まっているのはシステムだけで、世界は進む。

ビョルンがカレンダーをしまう場面で、それが明示される。
過去に来てから、すでに六か月。

彼とアメリアの会話は、乾いている。

「今日も行くの?」
「他にやることがない」

短く、浅く、緊張を孕んだやり取り。
最初は耐えられたが、D-Dayが近づくにつれて不快感は増していく

解決策は見つからない。
コミュニティも開かない。

「……本当に、追放されたのか?」

ビョルンは、初めてその可能性を本気で考え始める。
確認しようにも、確認したところで何も変わらない。

そう理解していても、疑念は消えない。


ノアークの日常と、噂という異物

彼は地下都市ノアークの街を歩く。
この街にも、もう慣れた。
主要な通りはほとんど把握している。

クランハウスに入ると、ダンボが出迎える。
数か月の迷宮探索を経て、彼はすっかり“右腕”のような存在になっていた。

雑談の中で、ダンボがふと切り出す。

「ボス、バーバリアンの心臓の噂、知ってます?」

この一言で、空気が変わる。

内容はこうだ。
バーバリアンの心臓が、貴重な魔法素材だという噂が地上で広まっている

ビョルンは即座に違和感を覚える。
それが正式に発表されるのは、はるか未来――
妖精とバーバリアンの戦争の後、魔塔によってだ。

ダンボの説明で、噂の出どころが明らかになる。
発信源は魔塔ではない。
ノアークのクラン長、ペリック・バーカーが、メルタ交易会社に依頼して流したものだ。

略奪者を騙しやすくするため。
ただ、それが予想以上に広まってしまった。

地上から始まった噂が、地下に逆流している。
ビョルンは思わず悪態をつく。

ここで生まれるのが、第316話でもっとも重要な疑念の一つだ。

「……始まりかもしれない」

もしこの噂をきっかけに、魔法使いたちが研究を始めたら?
その結果が、十年後の“公式発表”に繋がるのだとしたら?

つまり――
自分が未来を作っているのではないか

確証はない。
だが、否定もできない。


城を歩く男と、パンになる石

クランハウスを出たビョルンは、目的もなく領主城を歩く。
そのとき、不意に声をかけられる。

「君が鉄仮面か?」

老人だ。
この世界で、老人が無事に生きているという事実自体が、警戒対象になる。

男は小さな魔石を取り出し、口を開く。
次の瞬間、魔石は光り、パンに変わる

ここで、正体が明かされる。

錬金術師。
物質変換の固有能力を持つ、ノアークの基盤そのもの。

彼の名は、マルパ・イパエロ。

護衛の気配が、空間に満ちている。
見えないが、確実にいる。
これは親切ではなく、警告だ。

それでもイパエロは穏やかに語りかける。

「少し話さないか」

ビョルンが断る理由はない。
何より彼は知っている。
この老人こそが、レーテの祝福(記憶消去薬)を作った人物だ。


錬金術師の工房で語られること

三階の立入禁止区画を抜け、二人は工房へ向かう。
護衛は下がり、会話は二人きりになる。

話題は、自然とレインウェイルズ姉妹へ移る。
イパエロは彼女たちを気にかけており、ビョルンに託すような言葉を残す。

ここでビョルンは、一つの可能性を探る。

「エッセンスの制限は、錬金術で解除できるのか?」

返答は、曖昧から確信へ変わる。

「……不公平な契約のことか?」

そして、はっきりと否定される。
それは錬金術の領域外だ。

期待は潰える。
だが、彼は感情を表に出さない。

続いて、彼は記憶消去薬について尋ねる。
すると返ってきたのは、意外な答えだった。

「レーテの祝福? そんな名前はまだないが……」

ここで、名前が生まれる。

「レーテ……いい響きだ。忘却を祝福と呼ぶのは、ロマンがある」

記憶を消す行為が、“祝福”として名付けられる瞬間。
第316話のタイトル「Memory」は、この場面で静かに意味を帯び始める。

――ここまでが、この回で描かれる“異常の蓄積”だ。

次では、この記憶という概念が、どのように物語の核心へ触れていくのか。
そしてビョルンが、何を失い、何を選ぼうとするのかが語られていくことになる。

「名前が付く」という決定的な瞬間

イパエロの工房で交わされた会話は、表面的には穏やかだ。
だが、その中身は、ビョルンの行動原理を根底から揺さぶる。

記憶消去薬に名前がなかった――
それ自体は小さな事実に見える。

だが、ビョルンは知っている。
名前が付いた瞬間に、それは「概念」になる

「レーテ……いい響きだな。忘却を祝福と呼ぶのは、ロマンがある」

イパエロは軽い調子でそう言う。
だがその言葉は、未来で確立される“レーテの祝福”という存在を、この時代に固定してしまう。

ここで重要なのは、
ビョルンが未来を「知っている側」だという事実だ。

本来なら、もっと後の時代に名付けられるはずだったもの。
それを、彼は今ここで“確定させてしまった”。

彼自身が意識していようといまいと、
この瞬間、因果は一つ前に進んでいる。


未来は変わらないのか、それとも作られるのか

第316話は、一貫してこの問いを突きつけてくる。

精神世界に呼ばれない。
コミュニティは開かない。
GM(オーリル・ガビス)とも接触できない。

これまでビョルンは、「知識」を武器に動いてきた。
未来の出来事を知っているから、選択を間違えない。
間違えないから、生き残れる。

だが今、未来の管理者そのものが沈黙している

しかも、世界は勝手に“未来に向かう準備”を始めている。

  • バーバリアンの心臓の噂
  • レーテという名前の誕生
  • 研究が始まりかねない下地

どれもビョルンが直接命じたものではない。
だが、彼がこの時代に存在しなければ、起きなかった可能性が高い。

「もしかして……俺が原因なのか?」

この疑念は、はっきりと言語化されない。
だが、行動の端々に影を落とし始めている。


記憶は“武器”から“重荷”へ変わる

因果編に入ってから、記憶は武器だった。

  • この先で何が起きるか知っている
  • 誰が裏切り、誰が死ぬか知っている
  • どの選択が最善か知っている

だが第316話では、記憶はもはや使えない地図だ。

なぜなら、

  • GMが応答しない
  • コミュニティにアクセスできない
  • 「正解」が更新されない

つまり、参照点が消えた

ビョルンが知っている未来は、
「管理者が存在する世界」を前提にしたものだ。

その前提が崩れた今、記憶は保証にならない。

それどころか、
「本来起きるはずだった未来」を壊している可能性すらある。


アメリアとの距離が示す、静かな崩れ

第316話で印象的なのは、アメリアとの会話だ。

喧嘩はない。
罵倒もない。
だが、明確に距離がある

短く、事務的で、感情を避ける言葉遣い。

これは関係が悪化しているわけではない。
むしろ逆だ。

二人とも分かっている。
「今、踏み込むと壊れる」ことを。

D-Dayが近い。
それが何を意味するのか、明確な言葉はない。

だが、ビョルンの焦燥と、アメリアの静観は、
同じ不安を別の形で抱えている証拠だ。


記憶消去という“逃げ道”の輪郭

レーテの祝福。
記憶を消す薬。

これまでそれは、
「どうしようもなくなった時の最終手段」だった。

だが、名前が与えられたことで、その意味が変わる。

忘却を“祝福”と呼ぶ

それは、
「覚えていることが苦しみになる世界」の存在を前提にしている。

第316話は、はっきりとは言わない。
だが、読者には見えている。

この先、
記憶を持ち続けることが、罪になる局面が来る

ビョルン自身が、その中心に立つ可能性も高い。


まとめ

「記憶は、未来を保証しない」

第316話「Memory (1)」は、因果編の“地盤沈下”を描く回だ。

  • 精神世界に呼ばれない
  • GMと接触できない
  • コミュニティが機能しない

これまで当たり前だった「外部からの導き」が消えたことで、
ビョルンは初めて、完全にこの世界の住人になる

同時に、

  • バーバリアンの心臓の噂
  • レーテという名前の誕生

といった要素が、未来を“前倒し”で形作り始める。

ここで重要なのは、
未来が「変わった」のか、「作られている」のかが分からない点だ。

ビョルンはまだ答えを出せない。
だが、もう戻れないところまで来ている。

次に注目すべきポイントは三つ。

  • オーリル・ガビスは本当に沈黙しているのか
  • レーテの祝福が、誰に、どのタイミングで使われるのか
  • 記憶を持つビョルン自身が、“消す側”になる可能性

第316話は、爆発の直前だ。
音もなく、火花も散らない。

だが、
地面の下では、確実に何かが崩れている

この章が本当に恐ろしいのは、
敵が見えないことではない。

「正解が、もう存在しない」ことだ。

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