『転生したらバーバリアンになった』小説版・第323話ロングあらすじ【初心者向け・保存版】

転生したらバーバリアンだった
Surviving the Game as a Barbarian | Chapter: 323 | MVLEMPYR
Long white hair. Wrinkled skin. A kind and gentle face. A straight back that belied his age and blue eyes that seemed to...

【徹底解説】役割が交差する瞬間と歴史改変の兆し|『転生したらバーバリアンだった』第323話あらすじ&考察


導入

第323話は、「戦うか」「逃げるか」といった単純な二択を超えた回だ。
ここで問われるのは、力でも覚悟でもない。
正体を明かすか、隠し通すか──その一点である。

第322話で描かれた「役割」は、この話数でさらに歪み、重なり合う。
ビョルンは“バーバリアン”として生きているが、同時に未来を知る異物でもある。
その彼の前に現れたのが、オーリル・ガビスという存在だった。

この出会いは、戦闘ではない。
しかし、これまで以上に致命的な危険をはらんでいる。
なぜなら、ここで正体を見抜かれれば、未来そのものが破綻する可能性があるからだ。


詳細あらすじ

墓地での邂逅──見覚えのある老人

長い白髪、深い皺、穏やかな顔立ち。
だが、その背筋は年齢を感じさせないほど真っ直ぐで、青い瞳には奇妙な鋭さが宿っている。

墓地の薄暗さの中に立つその老人を見た瞬間、ビョルンの心臓は沈み込んだ。
どこかで見た顔。
いや、正確には“知っている顔”だ。

コミュニティで見た人物。
そして、アメリアの記憶に残る名前。

オーリル・ガビス。

当然、今日会う可能性は考えていた。
だが、いざ現実で目の前に立たれると、思考は一瞬で白くなる。

なぜ、ここにいる?
なぜ、事件の中心ではなく、この墓地に?
そして何より──自分を見て、何を思っている?

疑問が渦を巻く中で、最悪の仮説が浮かぶ。
自分を探してきたのではないか。

もし、ビョルン・ヤンデルだと見抜かれたら。
もし、未来から来た存在だと察知されたら。
その瞬間から、すべての前提が崩れる。

心拍数が上がり、汗が滲む。
それでも、立ち尽くすわけにはいかない。


すれ違う認識──見抜かれていないという違和感

沈黙を破ったのは、老人のほうだった。

「ここは、いつも薄暗いですね」

その声には、敵意も警戒もない。
ただの感想のようでいて、妙に距離感が近い。

次に発せられたのは、さらに拍子抜けする言葉だった。
通り道を塞いでいることへの、穏やかな指摘。

その瞬間、ビョルンは理解する。
──見抜かれていない。

少なくとも、この場では。
自分を“あのバーバリアン”としてではなく、ただの通行人として見ている。

体が勝手に動いた。
口が先に反応する。

敬語。
それも、これまで一度も使ったことのないほど丁寧な言葉遣い。

それは礼儀ではない。
仮面だ。

相手との距離を作り、自分を「取るに足らない存在」に見せるための防御。
ビョルンは、無意識のうちにそれを選んでいた。

オーリル・ガビスは、その態度を好意的に受け取ったようだった。
礼儀正しさを評価し、生き延びる資質があるとまで口にする。

その言葉に、ビョルンは違和感を覚える。
ただの通行人に向けるには、少しだけ踏み込みすぎている。

だが、深追いはされない。
老人は通り過ぎ、足音が遠ざかっていく。

その瞬間、張り詰めていた空気がわずかに緩んだ。

正体は隠し通せた。
少なくとも、今は。

だが、胸の奥に残る感覚は消えない。
本当に、これでよかったのか。
そして──なぜ、彼はここにいたのか。

この出会いは、偶然ではない。
そう確信できてしまうほどの、奇妙な余韻だけが残っていた。

探り合い──質問の温度差が示す執着

オーリル・ガビスは、去り際に振り返る。
その仕草は自然で、未練がましい様子もない。
だが、そこで投げかけられた質問は、明らかに重みが違っていた。

まず聞かれたのは、今日この街で何が起きたのかという話題だ。
領主が王家と手を組み、オルクルスを奇襲したこと。
ビョルンは淡々と事実だけを伝える。

その反応は、拍子抜けするほど薄い。
興味はあるように見せているが、声の温度が低い。
街が壊れようと、人がどれだけ死のうと、彼にとっては重要ではない。

だが、次の質問で空気が一変する。

「最近、この街にバーバリアンが来なかったかね?」

何気ない口調。
しかし、その声には明確な関心が宿っている。
先ほどの質問とは、明らかに“熱量”が違う。

この瞬間、ビョルンは理解する。
オーリル・ガビスの目的は、街でも王家でもない。
最初から、バーバリアンだけを探していた。

心臓が跳ねる。
だが、ここで否定する選択肢はない。
数人に聞けば分かる話を、わざわざ嘘で塗り固める必要はないからだ。

ビョルンは事実だけを答える。
いたこと。
名前がビョルンだということ。
領主側についているらしいという推測。

そのすべてが、真実でありながら核心を外している。

オーリル・ガビスは満足そうに頷く。
その様子を見て、ビョルンはさらに確信する。

この老人は、「存在」を探している。
人格でも、思想でもない。
“ビョルン・ヤンデルという個体”そのものを。

肩を叩かれ、礼を言われ、解放される。
だが、その優しさは安心ではなく、不気味さを残す。

だからこそ、ビョルンはその場を離れた瞬間、全力で走り出した。
今はただ、距離を取るしかない。


正体隠蔽という選択──正しかったのか

走りながら、ビョルンは自分の判断を反芻する。
正体を隠したことは、本当に正しかったのか。

ここはコミュニティではない。
現実世界での遭遇だ。
もし正体を明かせば、未来に戻った後、どんな影響が出るか分からない。

オーリル・ガビスが、自分を“知っている存在”である以上、
下手に関われば、時間軸そのものが歪む可能性がある。

だから隠した。
逃げた。
それは臆病な選択かもしれない。

だが、今この瞬間に取るべき合理としては、最善だったはずだ。

そう自分に言い聞かせながらも、違和感は残る。
本当に、見抜かれていなかったのか。
それとも、見抜いた上で泳がされているのか。

答えは出ない。
ただひとつ確かなのは、彼はまだ諦めていないということだけだ。


王家視点──作戦成功と致命的な誤算

場面は変わり、東部戦線。
第一王立騎士団団長、ジェローム・サントレッドは部下から報告を受けていた。

戦況は計画通り。
最小限の戦力で時間を稼ぎ、いつでも撤退可能な状態を維持している。
主目的である“記録の欠片”も、すでに手中に収めた。

任務は成功している。
副次目的である内戦の誘発も、ほぼ確定だ。

ジェロームは満足していた。
初の特別任務としては、上出来と言っていい。

だが、部下の何気ない一言が、その空気を凍らせる。

ネックレスについての質問。
精製石が埋め込まれた魔導具ではないか、という指摘。

ジェロームは違和感を覚え、確認する。
返ってきた答えは、否定の余地がないものだった。

「……つまり、私は騙されたということか」

その瞬間、彼の中で何かが折れる。
これまで見せたことのない、露骨な怒り。

自分が騙されたという事実以上に、
王家の剣としての誇りを踏みにじられたことが許せなかった。

作戦は成功している。
だが、最重要人物を取り逃がした。

ジェロームは即座に判断する。
部隊は帰還させる。
自分は、戻らない。

やるべきことが残っている。
騙した相手を、このまま放置するという選択肢はなかった。

その背中を、部下は言葉もなく見送る。
彼らにとって、それは初めて見る“怒りを帯びた団長”の姿だった。

下水道──因果が収束する場所

ラフドニアの下水道は、都市の裏側をそのまま形にしたような場所だ。
悪臭、湿気、視界の悪さ。
そして何より、構造そのものが複雑で、人を迷わせることを前提に作られている。

ビョルンは、その迷宮の中を走り続けていた。
足元を満たす汚水の感触が、状況の異常さを嫌というほど意識させる。

壁に残る無数の剣痕。
浅いもの、深いもの。
切断面が異様に整っていることから、即座に使い手を推測できる。

浅い剣痕はアメリアのもの。
深く、正確で、容赦のない斬撃は──リウヘン・プラハ。

本来であれば、ここで彼を排除し、地下へ逃げ込むはずだった。
原作で描かれていた流れは、そうだった。

だが現実は違う。
痕跡は「失敗」を示している。

アメリアは彼を振り切れていない。
むしろ、追い詰められている。

この時点で、ビョルンは確信する。
因果がズレている。
自分が戻ってきたことで、物語はすでに原作から逸脱し始めている。


能力を奪われた戦士──アメリアの絶望

視点はアメリアへと移る。

身体能力は、まだある。
筋力も、反射も、戦闘経験も失われていない。

だが、彼女を探索者たらしめていた「翼」は、すべて奪われていた。

《不死の泉(Fountain of Immortality)》
回復手段を無効化し、自然再生を極端に高める能力。

《自己複製(Self-Replication)》
一対一で常に数的優位を生み出す能力。

《深淵の力》《阿修羅の怒り》。
彼女の戦闘を支えてきたすべての力が、封じられている。

原因は、目の前の男ただ一人。

リカルド・リウヘン・プラハ。
オルクルスの裏切り者にして、異常な剣士。

彼の前では、聖水(Essence)という前提そのものが通用しない。
能力に頼る探索者ほど、無力になる。

アメリアは理解していた。
この男は、強いのではない。
強さの土俵そのものを破壊してくる。


なぜ追うのか──理解できない執着

二時間以上、逃げ続けた。
地上から下水道へ。
何度も進路を変え、罠を張り、距離を取った。

それでも、振り切れない。

だから、アメリアは問いを投げる。

「……どうして、そこまで私に執着するの?」

その問いは、命乞いではない。
理解しようとする試みだった。

常識的に考えれば、彼が向かうべき場所は城だ。
領主と王家が手を組み、オルクルスを潰しに来ている。
指揮官である彼が、前線を離れて一人の女を追う理由はない。

だが、返ってきた答えは、冷酷だった。

赤いオーラ。
短剣特化。
戦闘スタイル。

それらは、王家の暗部を担う存在──ローズナイト団の特徴だという。

アメリアは否定する。
だが、彼は聞く耳を持たない。

彼の中で、結論はすでに出ている。
アメリアは「処理対象」だ。


切断──役割を奪う戦い

交渉は成立しない。
剣が振るわれる。

アメリアは防いだつもりだった。
だが、それは錯覚だった。

斬撃は正確すぎる。
狙いは急所ではない。
戦うための部位だ。

右手首が切断され、短剣が汚水に落ちる。
次は左手。

防御の軌道を読まれ、剣は蛇のように軌道を変える。
首元に冷たい感触。

逃げ場はない。
壁際に追い詰められ、呼吸すら満足にできない。

彼は、美しい顔だと評する。
それが、余計に残酷だった。

アメリアは理解する。
ここで死ぬ。


死を受け入れる思考──歴史は変わった

意識が遠のく中で、アメリアの思考は過去と未来を行き来する。

本来なら、ここで致命傷を負うだけで済むはずだった。
妹と合流し、生き延びるはずだった。

だが、今回は違う。

原因は、はっきりしている。

ビョルン・ヤンデルが戻ってきたからだ。

彼女は、意図的にビョルンをこの作戦から外した。
薬を盛り、眠らせ、手紙を残した。

借りを作りたくなかった。
そして、記録の欠片が未来を変える鍵になるかもしれないと、どこかで信じていた。

それは希望というより、渇いた人間が掴む錯覚に近い。
だが、結果として因果は変わった。

ビョルンは戻った。
歴史はズレた。
そして、自分は死ぬ。

「これでよかったのか」と問う余裕すらない。
ただ、妹の未来だけが気がかりだった。

彼女がいなければ、誰かが死ぬ。
だが、もしかしたら──自分がいないからこそ、平穏に終わるかもしれない。

答えは分からない。

刃がさらに食い込み、呼吸が途切れる。

アメリアは目を閉じる。
自分はやり切った。
そう思おうとした、その瞬間──


叫び声──因果の再接続

下水道の奥から、聞き覚えのある声が響いた。

「ベヘル――ラァァァ!」

あり得ない。
ここにいるはずがない。

だが、その声は確かに現実だった。

アメリアは、薄れゆく意識の中で理解する。
因果は、まだ終わっていない。

歴史は、まだ確定していない。

考察

オーリル・ガビスの役割

彼は事件を追っていない。
人物を追っている。
バーバリアンという存在そのものに、異常な関心を示している。

コミュニティ閉鎖との関連を考えれば、
彼は観測者、あるいは管理者に近い立場にいる可能性が高い。


正体隠蔽は正しかったのか

短期的には正解だ。
だが長期的には、追跡を許したとも言える。

ビョルンは強くなったが、同時に臆病にもなっている。
その変化が、今後の選択にどう影響するかが注目点だ。


ジェロームの怒りが意味するもの

王家の作戦は成功した。
だが、騎士個人としては失態だった。

この感情が、次の追撃を生む。
個人感情が戦争を加速させる典型例だ。


アメリアの自己犠牲と因果の破綻

彼女は、未来を変えるためにビョルンを排除した。
結果、未来は変わった。
だがその代償は、自分自身だった。

因果は修正されるのか。
それとも、さらに歪むのか。


用語解説

  • 聖水(Essence)
    探索者の能力構成の基盤。封印されると、戦術そのものが成立しなくなる。
  • ローズナイト団
    王家直属の秘密部隊。暗殺・諜報・潜入を専門とする。
  • 記録の欠片
    歴史や因果に干渉する可能性を持つ特異アイテム。
  • コミュニティ
    未来視点の共有空間。閉鎖は因果操作の兆候と考えられる。

まとめ

重要ポイント

  • オーリルはバーバリアンを探している
  • 正体隠蔽は一時的成功にすぎない
  • 王家は都市を切り捨てた
  • アメリアは役割を奪われた
  • 歴史はまだ確定していない

次回の注目点

  • ビョルンの介入は間に合うのか
  • リウヘン・プラハとの再戦
  • 因果は修正されるのか、それとも破綻するのか
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