【徹底解説】精髄を巡る“正面衝突”と魔術師同士の停戦交渉――5層〈大魔力の森〉の現実|『転生したらバーバリアンだった』要約・考察
赤い精髄が呼ぶもの――沈黙、きしむ空気、矢羽の音
イフリートが霧散し、赤い精髄がふわりと浮かぶ。
向こうの五人組――休憩に戻る途中で横合いから“水塊”と矢でトドメを刺した連中――の視線が一斉に鋭くなる。こちらも同じだ。沈黙が落ちる。
先に口を開いたのは大槌の戦士。
大槌「俺たちが倒した魔物から精髄が出たんだが?」
後方の魔術師「ネルボさん……」
大槌「**黙ってろ。**俺が話す」
“ネルボ”と呼ばれた男が主導権を握る構え。精髄は自分たちのもの――そう主張する腹積もりが見えた。
ビョルン・ヤンデルは短く号令をかける。
ビョルン「戦闘配置」
それは自分の仲間へ、というより相手への通告だった。「血を見る覚悟がある」と。
矢を番える音。こちらでもアヴマン・ウリクフリトが静かにボルトを装填する。糸のような緊張が張り詰め、切れれば即、流血沙汰。
そのとき――ネルボが兜の面頬を上げる。
ギラリ、と照り返す頭皮。
ビョルン「……ハゲ」
ネルボ「死にてえのか、蛮族。今度は地方管理官は庇っちゃくれねえぞ」
――**交渉の席でビョルンを拘束しようとした、あの“ハゲ”**だった。向こうの仲間が吹き出し、ネルボの耳まで赤く染まる。
ぶつかるカスタム――「最後に一撃は誰か」vs「介入者の貢献」
慣例では、先に狩っていた側に所有権の分がある。ネルボもそこは理解しているはずだ。だが今回は精髄が出た。等級5の精髄は金額にしても一撃で隊の数日分の稼ぎに匹敵する。
ビョルン「石(魔石)ならくれてやる。だが精髄は違う」
ネルボ「計算できねえ蛮族だな。最後に仕留めたのは俺たちだ。全部俺たちのもんだ」
退かない。5対5、どちらも5層に来られる腕がある。一人でも欠けば赤字だと分かっていても、引いた方が“負け”になるチキンレースに入った。
ビョルンは腹を括る。最悪、精髄は自分で吸収し、崖落としの地形活用で短期決戦に持ち込む――。
そこへ、両陣営の魔術師が一歩進み出る。
魔術師の名乗り――学派の一声が剣を鞘に戻す
???「やめろ。ネルボ、あなたも」
レイヴン「武器を下ろして、ヤンデルさん」
ネルボが苛立つ。
ネルボ「黙ってろって言ってるだろ」
魔術師「ネルボさん、その喋り方はダサい。次回の潜行、ご一緒しません」
ネルボ「……」
一言で沈黙。魔術師の発言力が隊の命綱になっているのが分かる。
レイヴンは相手のローブの文様に目を留める。
レイヴン「その紋……ワートン派ね?」
魔術師「ええ。そちらはアルテミオン派?」
レイヴン「アールア・レイヴンです」
魔術師「エフレイン・ヴェロ。一年ほど前の学会でアルテミオンの師匠にお会いしましたよ」
学派の連帯が暴発をなだめる。“通り一遍の慣例”と“委員会の裁定傾向”を踏まえ、言葉で落とし所を描く。
レイヴン「慣例は慣例。でも壊せば信用が落ちる。委員会に持ち込んでも個人間紛争の扱い。合理的なのは――あなた方が退くこと」
エフレイン「同意。――降ります。正直、僕は最初から乗り気じゃなかった」
ネルボは食い下がるが、魔術師にズバリ斬られる。
エフレイン「権利の保全じゃない。強欲だ。山賊(マローダー)と何が違う?」
ネルボは言葉を失う。ビョルンは無言でメイスを下げる。剣より速い会話が、今は正解だった。
名乗りと“ハンス”――嫌な名は、必ずもう一度現れる
処理に移る。精髄は試験管保存→都市で売却――当初の方針通りだ。
アイナール「私に吸収は……」
ビョルン「今回は売る。もっと相性のいい精髄を後で取る」
ミーシャ・カルシュタイン「綿あめ何万個だって買えるよ」
アイナール「な、何万……!」
去り際、ネルボが名を問う。
ネルボ「名前を聞いておく。縁だ」
ビョルン「ビョルン・ヤンデルの子」
ネルボ「……聞いたことがある。メルトソン・ネルボだ」
最後尾の弓手とすれ違う瞬間、ビョルンは睨みつける。
弓手(先ほどの科白)『しんどい、落としてくか』
――こいつが油を注いだ張本人だ。
仲間「ハンス! 何してる!」
弓手は目を逸らし、名を呼ばれて走り去る。
ビョルン(硬直)「……ハンス」
嫌な名は、必ずもう一度現れる。
日数の堆積――地図を書く蛮族、そして“慣れない迷宮”
Day21、夜明け。5層入り四日目。
“Apple Nark”は下り基調の尾根を選び、狩猟と探索を積み重ねる。途中、難敵や吊りロープでの横断もあったが、致命的な事故はなし。アイナールは等級4に到達。
地図を描き続けるビョルンに、レイヴンが小声で刺す。
レイヴン「もうやめない? それ、見返しても帰途は分からない」
ビョルン「最初から上手い奴なんていない。ロトミラーだって最初は迷ったはずだ」
レイヴン「……理屈は分かるけど、疲れるでしょ」
ビョルン「面倒だが、楽しくもある。仕様を覚えるのは成長だ」
〈大魔力の森〉は分岐の多さだけでなく、断絶→再接続の地形が多い。“骨”だけ描く地図でも、回収ルートの設計には役に立つ。何より――隊を行きたい場所へ連れて行く権限を、ナビ担当は自然に手にする。
クランの“縄張り”――人間が一番の障害
大皿のような広場型フィールド(オーク集落、魔女の森の別区画、鋼石丘……)は入口にクラン旗。狩場は既得権で満席。
ビョルン(心中)「ゲームより梯子外しが多い。一回ぶんの経験値だけ売って、二回目以降は門前払い。人間のほうがモンスターより厄介だ」
だが、ビョルンには十年遊んだ人間の“裏マップ”がある。5層に一年籠もった男の抜け道は少なくない。
ビョルン(心中)「――そろそろ“アレ”が出る頃だ」
考察:精髄を巡る“力学”と、魔術師の役割
- 所有権の慣例は万能ではない
- 先狩り側優先は“慣例”に過ぎず、委員会は相互介入の事実をもって紛争として扱うことがある。
- 言い負かす言葉と言い切る資格(学派・実績)を持つ者が、その場の裁定者になり得る。
- 魔術師の“社会的攻撃力”
- レイヴン(アルテミオン)とエフレイン(ワートン)の学派ネットワークが最小コストの解決を導いた。
- 暴力の前に、社会性で勝つ――5層ではこの力が生存率を押し上げる。
- “ハンス”というトリガー
- 名指しで呼ばれたハンスは、不運の記号として再登場。今後の火種になり得る。
- ナビ担当=隊の舵
- 地図作成は疲労を伴うが、ルート主導権とトラブル時の帰投力を隊にもたらす。斥候不在の“Apple Nark”では必須技能。
- 人間の“関門”
- フィールド専有は金と脅威で成り立つ。対価で一度入れてもらえるが、反復は拒否されがち。抜け道の知識がボトルネックを破る。
主要キャラクターの心情・成長
- ビョルン・ヤンデル:力で押す準備をしながらも、言葉の勝利を受け入れる柔軟さ。地図というスキルに手を伸ばし、**隊の“航路”**を握る。
- レイヴン:学派の威光と論理で停戦を成立。結果志向ゆえに地図の効率を疑うが、成長動機としての“練度上げ”も理解を示す。
- ミーシャ・カルシュタイン:空気の緩衝材。精髄は売却の計算へと即座に切り替え、現実的な資金運用を支える。
- アイナール:等級4へ到達。攻撃アクティブ不足という課題を織り込みつつ、前線滞在力は向上。
- アヴマン・ウリクフリト:矢の初動で抑止力を示す。横取りの場でも感情を抑え、隊の引き際を見極める。
- メルトソン・ネルボ:威勢だけでは隊を導けないことを突きつけられる。**魔術師が司る“社会的秩序”**の前に退却。
- エフレイン・ヴェロ:水系の名門・ワートン派。合理と面子の釣り合いを言葉で取る、いわば“隊の弁護士”。
戦術メモ:5層・横槍対策の“即応テンプレ”
- 初見介入に備えた“落とし”の準備
- 氷系(Ice Spear/Flash Freeze)を先置き→非実体の核固定
- 水矢の即応(アヴマン):水素袋や水瓶ボルトを先装填
- 遮熱+視界:レイヴンの**『冷血(Cold Blood)』**で燃費を守り、光球の位置を固定
- 地形活用
- 尾根の縁での戦闘は崖落としが最短。押し・刈りの役割分担(ビョルン押圧、ミーシャ刈り取り)。
- 揉めた時の出口
- 委員会に行く前に学派ネットで中間解決。記録魔法(録証)を併用できるなら尚可。
まとめ:剣と同じ重さの“言葉”を持て
精髄を巡る衝突は、刃の交差ではなく学派の握手で終わった。5層〈大魔力の森〉の現実は、モンスターだけでなく人間の利害とも戦うことを教える。
“Apple Nark”は力で押せる準備をしつつ、言葉で勝つ術も身につけた。
そして地図――斥候不在の穴を埋めるための地味で重い筋トレが、やがて隊の生存率を変える。
次回予告的考察
- ビョルンが狙う**“アレ”(5層の隠しギミック/成長の抜け道**)の正体
- ハンスの再登場と、その影響
- クラン占有地を避けた代替育成ルート
- アイナールの攻撃アクティブ獲得計画、ミーシャの霊獣段位引き上げ
剣と言葉、そして地図。
三つの道具を携え、“Apple Nark”はさらに深い森の心臓部へ進む。