『転生したらバーバリアンだった』第174話「Choice(2)」徹底まとめ
— 退かぬ者と、退けぬ者。リーダーの“矜持”が場を制す —
1) 冒頭:この世界の“序列”は年齢ではなく力で決まる
本話は、価値観の置き換えをビョルン自身が再確認する場面から始まります。
この都市ラフドニアでは、年長者への敬意や肩書きよりも純粋な実力が序列を決める。だからこそ、ビョルンは場の空気よりチームの尊厳を優先し、面倒ごとを避けるより正面から片を付ける選択を取ります。
2) 火種:ネビスウルフ所属・ジャックの“安っぽい優越”
5階層探索者の懇親会。全体は穏やかでも、ジャック・ジョンソンビル一人だけが鼻につくマウントを連発します。
「クランの店の方が上等だ」「討伐に出ないのは弱いからだ」等々――内容は薄いのに調子だけは大きいタイプ。ホストのデルベス(ペペ)が雰囲気を繕ってくれている間は、ビョルンも“飲み込む理性”で対応。しかし、一線を越えた言葉に対して、ついにK‐バーバリアン流の反撃に切り替えます。
3) 正面からの通告:決闘か、退場か
ビョルンは公的に認められた紛争解決手段=決闘を申し出ます。
ここで重要なのは「暴力ではなく法に則る」という点。街のルールを尊重しながらも、一切怯まない。
対するジャックは“理性人”を装い、相手にしない体(てい)で立ち去ろうとしますが、実際は恐れからの撤退。ビョルンが静かに、「怖いのか」と核心を突くと、彼の見栄は完全に剥がれ落ちます。
4) 言葉の勝負:劣等感と現実の数字
ここでビョルンが示すのは具体的な成果です。
- 探索者歴8か月で5階層到達
- 称号持ちで、さらに自分のチームを組織している
- 部族内でも後継候補として注目される実力
数字と事実で静かに殴る。虚勢ではなくロジック。だから刺さる。
最後は肩に手を置いて、小声で“出口はこちらだ”と耳打ち――“武”に頼らず“話”で勝ち切る、ビョルンの成熟が見える名場面でした。
5) その後の空気:場は凍ったが、すぐに解けた
一瞬の静寂のあと、参加者はふたたび盃を掲げます。
誰もビョルンを責めないのは、
- ジャックが明確に場を壊していた
- クランにいるからといって個の品格が保証されるわけではない
- ビョルンのやり方がルールに則っていた
から。
デルベスいわく、ジャックはクラン内でも末端で、今回の件を持ち帰っても「自分の恥」として処理されるだけ。組織的な報復の蓋然性は低いと判断され、話はそこで手打ちになります。
6) 話題は討伐へ:各チームの“選ぶ自由”
酒席は自然とノアーク討伐の話題へ。
デルベスのチームは参加を選択。理由は単純で、「ラビリンス内の狩りも充分危険、ならば一時の大報酬に賭ける価値がある」と読むから。
ビョルンは不参加を貫きますが、相手の選択を否定しない。この距離感が良い。
結局、今宵の収穫は各隊の温度感と現場の常識。トップクランでなくとも、彼らなりの合理の上で選んでいる事実を、ビョルンは肌で理解します。
7) 帰路:アヴマンとの距離が縮まる
深夜2時過ぎに解散。熊男アヴマンは豪快に飲み干しつつも、意外に足取りはしっかり。
7地区の自宅まで徒歩で送り届ける過程で、ビョルンは「この男となら背中を預け合える」と再確認します。
玄関口では妻の温かい蜂蜜湯で労いを受ける。遠征で大きく稼いだ今サイクル、アヴマン家の空気は柔らかい。家族が支え、仲間が支える。表の戦いだけでなく、日常が強さを作ることを印象づける描写でした。
8) 宿へ:ミーシャの一言が“チームの輪”を締める
宿に戻ると、ミーシャが起きて待っていました。
「社交も探索者の仕事の一部」――労いと信頼の短い言葉。
それを受けて、ビョルンはりんご飴の串を手渡します。翌日にアイナルにも分けるつもり――小さな気配りですが、こういうさりげない配慮こそ、長期遠征でメンバーのメンタルを守る“見えない装備”です。
9) その後の日常:お金が入ったら“投資”が最優先
遠征で潤った資金は、そのまま戦力に転化。
- アイナル:聖域で刻印3段階へ(系統は「スレイヤー」)。第3段階スキルは**《デヴァウア:討伐時に魂力を回収》**。連戦適性が伸び、バーサーカー運用が安定します。
- ミーシャ:貯めに貯めた資金を獣の血につぎ込み、ついに初の霊獣覚醒。能力は**《氷河の祝福》**で、氷属性の消費半減という破格の燃費改善。補助も火力も「息が続く」布陣に。
- ビョルン:拡張鞄を売却し、サブスペース指輪へ。個人携行で食材の鮮度保持や不測の分断対策が可能に。探索者の“身一つで動ける安心”は、死線で差になる。
さらにビョルンはロットミラーに師事して航法(ナビ)の体系化された指導を受けます。
地形把握、目印の拾い方、方位感の矯正、簡易図作成――“努力型のプロ”が積み上げた技術は、資金を払ってでも学ぶ価値がある。
ここでビョルンの中に、「いずれ本格的な地図術も身に付け、5階層の意思決定の主導権を握る」という野心が芽生えつつあります。
10) テーブルの空気:エルフ族の来訪と“仲間枠”の再考
食卓に顔を出す妖精エルウェンに、ミーシャとアイナルはややトゲのある反応。
(バーバリアン×妖精の相性問題、ミーシャの“妖精全般”への苦手意識)
それでもエルウェンはクランの傭兵枠で5階層に上がる予定。
「将来の合流」を見据えるなら、今は無理せず距離を測る時期――ビョルンの“隊長としての静かな調整”が続きます。
11) 冒険者の週課:魂は再び“特異点”へ
ラストは、ビョルンがいつもの“呼び声”を受け取るシーンで締め。
「魂が特定の世界に引かれる日」――この作品独特の外部セッションの予告で、次話への期待値がグッと高まります。
現実(都市の政治・討伐)と、異界(魂の試練)が二重らせんで絡むのが今期の面白さ。どちらの選択も“力”に変わるのが、彼の強みです。
戦術・経営・人心:本話で見えた“リーダー力”の三本柱
- 戦術:
- 決闘の申し入れで、合法的に主導権を取り、場の安全を担保。
- 実力を数字で示し、心理戦で勝つ。戦わずして勝つが、いざとなれば戦っても勝つ。
- 経営(投資判断):
- アイナルの刻印・ミーシャの覚醒・自分の装備更新――チーム総合DPSと持久力に投資。
- 航法スキルの外部委託(有償学習)で、迷いロスを資金で解決。次サイクルの収益に直結。
- 人心:
- 夜食の差し入れ、送迎、短い労いの言葉――ミクロの配慮で信頼を積む。
- エゴで仲間を振り回さず、他チームの選択も尊重。社交の場では相手の顔も立てる。
この三本柱が噛み合い、ビョルンは「若いのに一目置かれる隊長」へと成長中。
“耐える所は耐え、退かぬ所では退かない”――それが今回の核です。
今後の見どころ予想
- 懇親会勢の討伐参加組の帰還状況:敗北か、戦果か。街の空気がどちらに傾くかで、次サイクルの相場も変わる。
- 5階層の独自ルートの深化:ミラーハントの安定化、航法ノウハウの積み増しで「鏡内周回」をさらに効率化。
- アイナルのバーサーカー最適化:刻印と《翼》の相乗で、短期決戦に強い斬り込み隊長へ。回復・燃費をどう上げるかが鍵。
- ミーシャの氷運用革命:燃費半減により、寒冷コンボの常時展開が現実的に。特定フィールドで“別チーム級”の制圧力が出る可能性。
- 魂が導く“特異世界”:報酬と代償のバランス、今度は何を差し出すのか――ビョルンの選択が次の力に変わる。
一言まとめ
「序列は力が決める。だが力とは、殴る腕だけを指さない。」
法を守り、言葉で折り、投資で伸ばし、気遣いで繋ぐ――ビョルンのリーダーとしての選択が、もう“偶然の快進撃”ではないことを示した回でした。