……最初に彼と会ったとき、私は震えていたと思います。
だって、目の前に現れたのは、全身が筋肉の塊のような…獣以上の威圧感を放つバーバリアンだったのですから。
▶ 匂いが教えてくれた“違和感”
でも…彼の匂いには、何か“ズレ”があったんです。
恐怖や怒りではなく、理性と…戸惑い。
あの時の私はまだ未熟でしたが、鼻だけは信じてきました。
そして本能が言っていました。「この人は、敵じゃない」と。
「あなた…変わった匂いですね。けど、悪意はありません」 ――私、たしかそう言いました。
あれが、すべての始まりでした。
▶ 最初の一歩は、“勇気”ではなく“選択”だった
私は探索者。獣人の生き方ではなく、人間の社会で生きていくと決めた日から
ずっと、「正しく選ぶこと」を自分に課してきました。
だから…あの瞬間も、私は選んだんです。
彼を信じるという道を。
恐怖がなかったわけではありません。けれど…それ以上に、
「この人なら、背を預けてもいい」と、そう感じてしまったんです。
▶ ゴリラじゃなかったら…もっと怖かったかもしれません
時々、ふと思います。
彼がもし、完璧なイケメンで、すべてを計算で動かしていたら。
私は、あそこまで素直に心を開けたでしょうか?
……きっと無理だったと思います。
不器用で、感情が表に出過ぎてて。なのに…ものすごく周囲を気遣ってて。
彼は不思議な人です。まるで、外見は怪物、中身は理性の化け物。
でも、私は好きです。そういう不器用な強さ。
▶ 嗅覚で読む“彼の感情”
私は鼻が利きます。ときどき冗談で言われます。「それ、便利だね」って。
でも、それが逆に、人のウソや迷いまで全部嗅ぎ取れてしまうから、つらいことも多いです。
でも彼は、ずっと同じ匂いをしているんです。 「怖くても、前に出る」「仲間を守る」——その感情が、いつもブレない。 だから、私もそれに応えたいと思いました。
▶ 恋? いいえ、まだそこまでは…
よく他の人にからかわれます。「あんたたち、いい感じじゃん」って。
でも…私は今でも、あの人のことを“上司”でも“恋人”でもなく、仲間として見ています。
ただひとつだけ確かなのは—— 彼がいないと、私はここにいない。 そういう存在だということ。
📝 まとめ:私はまだ、彼の背中に守られている
- 出会いの決め手は、嗅覚が教えてくれた“善意”
- 選んだのは“勇気”ではなく“正しさ”だった
- ビヨルンの“におい”は一貫して、仲間を守る意志だった
- 今でも彼を“恋”ではなく、“信頼”で見ている
- けれど…たぶん、その距離感が心地いい
私は、探索者。 けれど、同時に彼の仲間でもありたいと思っています。 たとえ彼がゴリラでも……いえ、だからこそ。