米価が下がらない本当の理由②

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LubosHouska / Pixabay

―JA流通と政府備蓄がつくる“鉄壁フロア”


5行まとめ(ここだけ読めば要点OK)

  1. JAグループが国内コメの過半を集荷し、出荷量を調整して価格を下支え
  2. 全農(JA全農)が卸への販売価格を事実上の指標にしており、小売はその“天井”を超えにくい
  3. 政府は毎年約21万tを買い入れ、備蓄100万t前後を常備して“下値”をガード
  4. コメ先物市場は取引量が小さく、市場ベースの価格形成が機能しづらい
  5. 結果、小売用袋米は為替や国際相場が下がっても数%しか動かない構造が続く

1. JA集荷システム――“入口”で量を握る

指標数値・ポイント
集荷シェア全国平均 54%(北海道80%・九州75%) JAcom
全農の役割①集荷米を一括保管 ②精米業者・卸に販売
→ 取扱量が多い都道府県では**“全農値”が地域の基準相場**
価格調整例年9月の作柄・需要見通しを基に
◎ 生産者保管量の呼びかけ
◎ 集荷価格の微調整 で出荷ペースをコントロール

ポイント
JAは「農家の販売窓口」「保管倉庫」「金融」の三位一体。集荷量を握ることで需給を人為的に平準化でき、米価の急落を回避しやすい。


2. 政府備蓄米――“出口”で価格を支える

項目仕組み数値
適正備蓄水準大不作に備え、約100万tを常備2024年6月末:91万t残高 農林水産省農林水産省
買入ペース毎年播種前に20〜21万tを契約買入
放出ルール原則売却せず5年保管→飼料用や輸出用に回す
価格効果不作年でも“国家買い入れ”で瞬時に需給タイト化→ 下落リスクを排除

イメージ

  • “価格が崩れそう”=政府が買い増して在庫を積み上げ
  • “豊作で余り米”でも棚上げ保管→ 市場に出てこない=価格は維持

3. 卸・小売マージン構造と値付け慣行

流通段階典型マージン備考
精米業者 → 卸2〜3円/kg精米歩留・保管リスク込み
卸 → 小売5〜8円/kg買い切りが多く過剰在庫リスク小
小売 → 消費者10〜15円/kg“特売”でも2〜3円/kg値引きが限度
  • 袋売り(家庭用)市場は年1%縮小 ─ “量より単価”で利益を確保
  • 新米期(10〜11月)を除き、年間での店頭価格変動は±5%程度
  • 為替や国際相場が下がっても、国内産中心ゆえ転嫁しにくい

4. 米先物市場が育たない3つの理由

  1. 取引高が少なく価格指標になりにくい(出荷の54%をJAが握り先物を使わない)
  2. 消費者や外食が「国産ブランド」を重視=輸入米ヘッジの需要が薄い
  3. “現物渡し”が産地限定で配送コスト・品質差が大きい

2021年、大阪取引所のコメ先物は参加者不足で本上場を断念—市場メカニズムが働く窓が閉じたまま


5. まとめ & 次回予告

要点3行

  1. JAと全農が集荷量・販売価格の基準を握り、下振れを抑制
  2. 政府備蓄が100万tの“防波堤”となり、市場へ余剰が流れない
  3. 卸・小売も薄利固定で、消費者価格は小幅にしか動かない

次回は**「輸入規制と需要減少なのに高値が続く真の構造」**を解説します。

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