―輸入規制・需要減少でも高値が続く“最後の砦”を解剖
5行まとめ
- 778%の高関税と年77万tのミニマムアクセス(MA)枠で、実質的にコメ輸入が抑制される
- 家庭用の**1人当たり消費量は1962年の118㎏→2024年49㎏**へ半減でも、単価アップで売上維持
- 大手産地は**ブランド米化(新之助・雪若丸など)**で高付加価値を狙い、値崩れを回避
- 炊飯ロボや無洗米ニーズでプレミアム商品が拡大──“量より質”シフトが加速
- 今後の米価はCPTPP・FTA再交渉と円安がカギ。自由化が進めば“二極化”シナリオも
1. 778%関税とミニマムアクセス枠:輸入の“高い壁”
区分 | 内容 | ソース |
---|---|---|
関税 | MA枠を超える輸入米に **778%**もの従価税(または341円/kg) | キヤノングローバル戦略研究所 |
MA(最低輸入機会) | WTO合意で77万t/年を無税または低税で輸入 —主に業務用・加工用・援助用 | SS Rice News |
実効 | 枠外輸入は100〜200t/年にとどまり、市場シェアは 0.05%以下 | SS Rice News |
ポイント
- “国際価格<国産価格”でも高関税が価格差を維持
- MA米は外食・加工向けが中心=家庭用袋米の価格競争に波及しづらい
2. 消費量は半減、それでも単価アップでカバー
- 1962年:118kg → 2024年:49kg/人・年(−59%) 農林水産省
- 家庭用需要が減る一方、
- 中食・外食向けは高付加価値米を採用
- 精米メーカーは“つや姫ブレンド”などブランド混米で単価維持
3. ブランド米化+高付加価値戦略
ブランド米 | デビュー | 参考小売(5kg) | USP |
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新之助(新潟) | 2017 | 3,200円 | 大粒・低アミロースで冷めても旨い |
雪若丸(山形) | 2018 | 2,980円 | 粒感しっかり、カレー・丼需要狙い |
金色の風(岩手) | 2020 | 3,400円 | 甘み&香り、ギフト需要 |
価格は従来コシヒカリ比+15〜30%。
“量より質”を徹底し、値下げ合戦を回避。
4. 未来シナリオ3つ
シナリオ | 条件 | 米価への影響 |
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① 部分自由化 | CPTPP再協議で関税段階引き下げ | 輸入比率拡大→ 中長期で下落圧力 |
② 完全自由化 | FTA網拡大+円高 | 国産プレミアム米と“廉価輸入米”の 二極化 |
③ 現状維持+円安 | 農地集約遅れ・円安進行 | 生産コスト上昇で 米価さらに上昇 |
5. まとめ
- 高関税+MA枠が海外米をブロックし、国内需給で価格が決まる
- 消費量減を高単価ブランド化で補填――“質への転換”が進行中
- 将来の米価は 貿易自由化のスピードと円相場次第で大きく変動
シリーズ総括 ― 3回のキーテイク
回 | 一言まとめ |
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① 生産サイド | 高コスト・減反・補助金で“原価の底”が高い |
② 流通サイド | JA+政府備蓄が量・価格をコントロール |
③ 需要・国際 | 高関税とブランド戦略で“国内価格を死守” |
価格を動かす3大改革案
- 農地集約×スマート農機でコスト半減
- JA集荷の一部市場化+先物再整備で透明価格
- 段階的関税引き下げと所得補償型政策で消費者メリット確保