――最新RCTが証明した 「最小投資・最大リターン」 プログラム
この記事でわかること
- たった 1 セット×9 種目で筋厚が伸びた最新ランダム化比較試験(RCT)の概要
- 実験と同じメニューの具体的な種目・負荷・休憩・進め方
- 継続を助ける栄養・回復・記録のコツ
- 「1セットじゃ本当に足りない?」といったよくある質問
本記事は 全3回シリーズ の第1回。今回は “シングルセット法” を徹底解剖します。
1. 研究で実証された「1セット法」のインパクト
2024年に発表された RCT では、若いトレーニー42名が
- 週2回 / 8週間
- 1回30分前後
- 9種目を各1セット(8–12RM)
でトレーニングした結果、上腕・大腿の筋厚が平均4〜6%増。
2分前後のセット間休憩を挟んでもセッション全体は約30分で終了し、筋力も向上しました。さらに、限界まで行った場合(0RIR)と「あと2回残し(2RIR)」のグループ間で大差はなく、“追い込みすぎなくても” 十分効果的と示唆されました。 sportrxiv.org
この結果は、最小限トレーニングをまとめたレビューでもサポートされており、「1種目1セット」でも強度を確保すれば筋肥大は得られる というコンセンサスが強まりつつあります。 SpringerLinkSpringerLink
2. 実験と同じ “9 種目 × 1 セット” メニュー
種目 | 主要ターゲット | 負荷設定 |
---|---|---|
1. ラットプルダウン | 広背筋 | 8–12RM |
2. シーテッドロー | 中背部 | 8–12RM |
3. マシンショルダープレス | 三角筋 | 8–12RM |
4. マシンチェストプレス | 大胸筋 | 8–12RM |
5. ケーブルトライセップスプレスダウン | 上腕三頭筋 | 8–12RM |
6. ダンベルカール(スピネイテッド) | 上腕二頭筋 | 8–12RM |
7. スミススクワット | 大腿四頭筋・殿筋 | 8–12RM |
8. 45°レッグプレス | 大腿四頭筋・殿筋 | 8–12RM |
9. レッグエクステンション | 大腿四頭筋 | 8–12RM |
やり方
- ウォームアップ:各関節を動かすダイナミックストレッチ+空シャフト1セット
- 上表の順に 1 セットずつ実施
- セット間休憩 120 秒
- 8〜12回で失敗したら OK。13回以上できた場合は次回 +2〜5% 負荷
所要時間:ウォームアップ含め約30分
頻度:週2回(例:月・木)
3. 進捗を加速する 5 つのポイント
(1) “限界 −1 回” の強度を守る
- セット末に「あと1回ギリ挙がるか?」という負荷を目安に。
- 余裕ならプレートを+2.5kg、小数プレートが無ければレップ数を増やし次回重量アップ。
(2) セッション記録をアプリで可視化
- 重量/回数/主観的キツさ(RPE)をメモ。微調整が容易。
(3) タンパク質=体重×1.6g/日が目安
- 朝食や就寝前にも 20–30g 摂ると合成刺激を分散できる。
(4) 睡眠 7 時間 & 48h 以上の同部位休養
- 超回復を逃さない。
(5) 4 週ごとにメニューをローテ
- 例:ラットプルダウン→チンニング、マシンチェスト→ダンベルプレス。
- 新刺激で伸び悩みを防ぐ。
4. よくある質問 (FAQ)
Q1. 1セットだけで本当に十分?
A. メタ解析では「多セット > 1セット」でわずかな優位差もありますが、時間効率を考えると1セットでも“費用対効果”は高い。忙しい人の“第一歩”に最適です。 SpringerLink
Q2. 自宅でもできる?
A. ダンベル+チューブがあれば代替可能:
ラットプル→チューブチン、チェストプレス→フロアダンベルプレス、スクワット→バックパック加重スクワット…など。
Q3. 体脂肪は落ちる?
A. 消費カロリー自体は少なめ。食事管理との併用が前提です。
Q4. 中高年でも安全?
A. 高血圧・関節疾患がある場合は医師に相談。フォーム重視・可動域内で行えばリスクは低め。
5. まとめ & 次回予告
- 30分・週2回、1種目1セットでも8週間で筋厚+4〜6%。
- カギは 高い努力度 と 漸進的負荷。
- 時間がない社会人に“筋トレの最低ライン”として勧めやすい。
次回(第2回) は、週3回×12–15分で実践できる「1セット・7種目法」(Schoenfeld 2019)を深掘りします。お楽しみに!
参考文献
- Hermann T et al. “Without fail: Muscular adaptations in single-set resistance training…” (Preprint, 2024). sportrxiv.org
- Fyfe JJ et al. “Minimal-Dose Resistance Training for Improving Muscle Mass, Strength, and Function.” Sports Med 2022. SpringerLink
- Nuzzo JL et al. “Resistance Exercise Minimal Dose Strategies for Increasing Muscle Strength in the General Population: an Overview.” Sports Med 2024. SpringerLink