『ゲーム世界でバーバリアンとして生き残る』第85話:バロン・マルトアン(1) 完全要約・考察付き
下水道からの帰還
長い探索と戦闘を終え、ビョルンたちが下水道から出てきたとき、すでに空は暗くなっていた。
そこで待っていたのは、行政官のシャビンと、いつも図書館にいる冷たい雰囲気の魔導士――ラグナだった。
「無事でよかったです!」
「……どうしてお前らがここに?」
ビョルンは驚く。普通なら朝を待ってから別の探索者を派遣するはずだ。それなのに行政官と司書が自ら来たというのだ。
ラグナは普段の地味な服装とは違い、豪奢なローブに杖と高価なポーションを携えている。どうやらただの司書ではなく、相当な実力者であるらしい。
任務の報告と報酬
報告内容は「下水道で逃亡者を一名発見、討伐」といたってシンプル。
証拠の映像は壊れてしまったが、幸いにも死体から身元証明用のIDカードを発見していたため、報酬は問題なく受理された。
その後、教会から派遣されたパラディンが登場。討伐したのが裏切りの司祭エリサ・ベヘンクであることを確認し、深々と頭を下げる。
「この貢献を教会は決して忘れません」
やけに曖昧な言い回しだが、正式な賞金は冒険者ギルドから支払われるらしい。
翌日、ギルドで受け取ったのはなんと――総額1000万ストーン。
5人で分けても1人あたり200万ストーンという大金だ。
仲間たちは歓喜し、ビョルンは「命を懸けた見返りだ」と胸の内で苦く笑った。
行政官シャビンからの呼び出し
報酬を山分けしたあと、仲間は酒場で大騒ぎ。
一方ビョルンは、シャビンに呼ばれて行政局の施設管理課を訪れる。
「明日、時間があれば図書館に立ち寄ってください」
どうやらラグナが何か用意しているらしい。彼女の冷たい態度の裏に、隠された意図があるのかもしれない。
酒場での再会
行政局を出て酒場に戻ると、仲間たちはすでに泥酔していた。
ミーシャは顔を真っ赤にして大声で笑い、ドワーフのヒクロドは下品な冗談を飛ばし、ドゥワルキーは机に突っ伏して意味不明な呪文をつぶやいている。
ビョルンは溜息をつきながらも、介抱のためミーシャの隣に座り、強引にトマトジュースを飲ませる。
その時、彼女が頬を赤らめながら切り出した。
「……父上が、あなたを呼んで――」
しかし言葉は最後まで続かない。
不穏な影
そこに割り込んできたのは、以前酒場で出会った痩せ型の探索者、ハンス・ホッジ。
ビョルンは内心うんざりする。過去に“ハンス”と名のつく者たちと関わるたび、碌なことがなかったからだ。
「話がある」と言う彼を冷たく突っぱねると、ハンスは寂しそうに退散していった。
嫌な胸騒ぎを覚えながらも、ビョルンは「これで厄介ごとは避けられた」と安堵しかける。
だが――。
モセラン騎士団の来訪
酒場の扉が勢いよく開き、重い鎧をまとった騎士たちが一斉に入ってきた。
彼らの胸には、街最強の軍事組織「モセラン」の紋章が輝いている。
「なぜ奴らがこんな裏通りの酒場に……?」
場の空気が一気に凍りつく。
彼らは血と死を伴う存在として有名で、誰もが息を潜めた。
そして――騎士たちはビョルンの席へと真っ直ぐ進み、重々しい声で告げる。
「リオル・ウォブ・ドゥワルキー、お前を“貴族侮辱”の罪で逮捕する!」
狙われたのはビョルンではなく、酔いつぶれていた仲間のドゥワルキーだった。
第85話の見どころ・考察
- 下水道編の一区切り
報酬の受け取りで大金を得たものの、ビョルンだけが「本当の記憶」を抱えている。彼の沈黙が今後どう響くかが重要だ。 - ミーシャの父の存在
彼女が言いかけた「父上」が誰なのか。貴族か、大商人か、それとも別の存在か――物語に新たな伏線が張られた。 - ハンス再び
またもや現れた“ハンス”。ただの偶然か、それとも深い因縁の前触れか。 - モセラン騎士団の介入
圧倒的な権力を持つ騎士団が仲間を名指しで逮捕。果たしてドゥワルキーは何をしでかしたのか? そしてビョルンたちはどう動くのか。
まとめ
第85話は「下水道編」から「貴族社会との対立」へ物語がシフトする重要な回でした。
報酬で束の間の安堵を得た矢先、仲間のドゥワルキーが逮捕されるという新たな事件が発生。
ここからビョルンは、迷宮探索だけでなく 街の権力構造 にも巻き込まれていくことになります。