バーバリアンとして生き残る – 第87話 「バロン・マルトアン (3)」要約と考察
第87話は、前話で明らかになった衝撃の“著者名”に続き、ビョルンがさらなる糸口を追いかけつつ、ついに現バロン・マルトアンと対面するエピソードです。
ドゥワルキーの迷宮出禁をどう覆すか、その方策を仲間内で議論し、最終的にバロン本人へ直談判する流れとなりますが、そこで浮かび上がるのは「彼自身は知らなかった」という意外な事実。そして物語は新たな交渉劇へと突入していきます。
オーリル・ガビスの名が残す謎
前話のラストで登場した著者名 オーリル・ガビス。それは、ビョルンがかつてプレイしていたゲーム『Dungeon and Stone』の開発者の名前でした。
ただの偶然ではなく、明確にこの世界の書物に刻まれている。
この発見にビョルンは二つの可能性を考えます。
- この本を書いたのは「プレイヤー」
- もしくは「オーリル本人」
後者だとすれば、この世界そのものに開発者が関わっていることを意味し、ビョルンがここに転生した謎と直結するかもしれません。
“神”のような存在なのか?――そんな不安すら抱きながら、ビョルンは慎重に調べを進める決意を固めます。
証拠として、彼はこっそり本の端を破り取り、紙の製造年代を調べることを思いつきます。
夜明けの図書館 – ラグナとのやり取り
夜通し本を読み漁ったビョルンは、気づけば朝になっていました。居眠りしているラグナに毛布をかけようとすると、彼女はすぐに目を覚まし「誤解しないで」と慌てます。
ビョルンが帰り際に振り返ると、彼女は疲れた表情で伸びをしていました。小さな場面ですが、彼女の人柄の柔らかさを感じさせる描写です。
魔塔での依頼 – レイヴンの条件
次にビョルンが向かったのは魔法塔。ターゲットは、もう一人の魔術師レイヴンです。ドゥワルキーの穴を埋められるかと勧誘してみますが、ドアをバタンと閉められて即拒否。
しかし本題は別。例の破り取った紙切れを見せ、いつ作られたものか鑑定してほしいと依頼します。
レイヴンは興味を示しつつも、「ただではやらない」と条件を突きつけます。
それは――彼女の先輩たちの研究を手伝うこと。どうやら変人ぞろいの魔術師たちに振り回されており、代わりにビョルンを“実験材料”として差し出そうという魂胆でした。
要求は「一度だけ手伝え」というもの。仕方なく了承したビョルンは、結果が出るのを一週間後に待つことになります。
朝の酒場 – ミーシャとの小さな会話
まだ朝9時。集合時間には早いがやることもないので、ビョルンは酒場へ向かいます。そこには既にミーシャが待っていました。
「昨日、何を言いかけた?」と問いかけるビョルン。前夜、彼女は大事なことを話そうとしたのですが、酔っていて遮られてしまったのです。
しかしミーシャ自身は覚えていません。本当に忘れているらしく、曖昧に笑って流してしまいます。
ビョルンは怒りもせず受け流します。この「些細なことで怒らない」という彼の態度は、バーバリアンながら大人の落ち着きを感じさせます。
会議開始 – 解決策を巡る議論
やがて仲間たちが全員集まり、話し合いが始まります。議題はもちろん「ドゥワルキーの迷宮出禁をどうするか」。
まずビョルンが口を開きます。
「新しい仲間を探すのが一番現実的だ」
既に二人の魔術師に声をかけて断られていることも明かします。冷たいように聞こえますが、これはチーム存続を考えた上での現実的判断です。
次にミーシャ。彼女は「モセラン騎士団は賄賂に弱い」という噂を調べ、金で解決しようと提案します。しかし即座に却下。彼らは「非貴族からの賄賂」を受け取ることは決してないのです。
最後にロトミラー。彼は「貴族を相手にどう動けばいいか分からない」と率直に降参宣言。これに対してムラド(ドワーフ)は「仕方ない」と慰めますが、同じように現実的な答えは出ません。
ムラドとドゥワルキーの提案 – 直談判
結局、最後に出された案は――
「直接バロン・マルトアンに会って訴える」
無謀にも聞こえますが、彼らはすでに情報を掴んでいました。バロンは定期的にある茶店を訪れており、そこを張り込めば必ず会えるというのです。
ビョルンは「なぜ全員で行く必要がある?」と渋りますが、ムラドは「勇気が必要だ!」と泣きつきます。結局、報酬として「成功不成功に関わらず30万ストーン支払う」と言われ、ビョルンも折れます。
茶店での邂逅 – バロン・マルトアン登場
その日の午後、茶店に現れるバロンを待ち構えた一行。やがて従者を従えた男が姿を見せます。
計画通り、まずはドゥワルキーが前に出て土下座し、必死に訴えます。ところが――
バロン本人は「ドゥワルキー? どこかで聞いた名だな」と首をかしげるばかり。
実は今回の一件、バロン本人の指示ではありませんでした。
執事が独断で「不要な存在」と処理したにすぎず、当の本人は存在すら把握していなかったのです。
ドゥワルキーにとっては屈辱的な事実。しかし同時に“取るに足らない存在”とみなされているからこそ、逆に交渉の余地があるとも言えました。
バロンとの交渉 – 新たな条件
ビョルンが前に出て、堂々と自己紹介します。「ヤンデルの息子、ビョルン」と。バーバリアンだけは王命によって“貴族に対して失礼に話しても無礼には当たらない”という特例があり、その強気な態度が通用します。
バロンは面白がり、「久々にバーバリアンと話すが奇妙な気分だ」と興味を示します。
事情を説明すると、彼は一応耳を傾けますが、「なぜ私がそんなことをしなければならない?」と平然と首をかしげます。
その後、執事が耳打ちすると、バロンは急にビョルンを値踏みするような視線を向けます。どうやら「リトル・バルカン」として既に噂が広まっていたのです。
そして意外な展開――
「頼みを一つ聞いてくれるなら、この件を解決してやろう」
バロン・マルトアンは取引を持ちかけてきました。
第87話のテーマと意味
- メタ的伏線の深化
- オーリル・ガビスの名前は、ビョルンの転生やこの世界の成立に直結する核心的な謎。作者の存在が物語世界に影を落としていることが明確になった。
- 現実主義と理想主義の衝突
- ビョルンの「新しい仲間を探す」という現実路線と、仲間たちの「ドゥワルキーを救いたい」という理想路線。その対立が議論を通して描かれた。
- 権力構造の冷酷さ
- バロン本人が「知らなかった」と言い切る場面は、貴族社会の冷淡さを象徴する。人一人の人生が執事の判断で左右されるほど、庶民と権力者の世界は乖離している。
- 新たな交渉の幕開け
- バロンの“頼み”は、今後の物語に新たな試練をもたらすことは間違いない。ドゥワルキー救出は単なる情けではなく、代償を伴う契約となる。
まとめ
第87話は、「ドゥワルキー追放問題」の真相が明らかになると同時に、物語が次の段階へ進む準備を整えた章でした。
バロン本人が黒幕ではなかったことは意外な展開でしたが、それ以上に重要なのは「交渉の余地が生まれた」という点です。
そして最後に突きつけられる「条件付きの解決策」。
果たしてバロンが求める“頼み”とは何なのか?
次章以降で明らかになるであろうその内容は、冒険者チームにとって新たな試練となることは間違いありません。