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【徹底解説】雨季5日目、ハーピー戦から裂け目の守護者へ|『転生したらバーバリアンだった』第536話「虹(3)」あらすじ&考察
長老の村から脱出したビョルン・ヤンデルたちは、再び地上へ戻ってきた。
しかし、そこに待っていたのは安全ではない。
雨季5日目。
島では今なおモンスターが暴れ回り、互いに殺し合い、血と肉片を撒き散らしている。
それでもビョルンは、地上へ戻った瞬間に違和感を覚えた。
初日より、明らかにモンスターが少ない。
怪物がいなくなったわけではない。
戦場として見れば、依然として十分危険だ。
だが雨季初日の圧倒的な物量を知っているビョルンからすれば、差は歴然としていた。
そして、その事実は別の疑念も生み出す。
長老は、この変化を知っていたのではないか。
雨季が進めば地上の危険度は下がっていく。
それを探索者たちへ知らせず、「外へ出れば死ぬ」と思わせておけば、誰も村から出ようとしない。
安全を提供することで依存させる。
そう考えれば、長老が探索者たちを村へ留め続けられた理由にも説明がつく。
ビョルンは改めて長老へ嫌悪を覚える。
しかし、今は怒っている場合ではない。
彼には大勢の探索者を率いるリーダーとして、別の仕事が残っていた。
全員をこの島から生きて脱出させること。
- 雨季5日目――怪物の数は明らかに減っていた
- 長老は雨季の変化を隠していた?
- それでもリーダーは今を見る
- 危険の中でも魔石を拾う
- アイナルがレベルアップ
- 「第3等級以上なら自由に吸収していい」
- 将来の利益より、今の生存率
- 怪物の雨が「チャンス」に変わる
- それでも現実は甘くない
- ハーピー戦――経験の差が最初の一手を決める
- 《破滅の歌》――本当に危険なのは攻撃後
- エルウィン抜きで攻略する
- 三人でハーピー本体へ
- 《破滅の印》――100秒の死刑宣告
- ハーピーは長期戦を許さない
- 《模倣》――味方の能力が敵側へ渡る
- 《自己複製》――ハーピーが二体へ
- 逃げても助からない
- 《英雄の道》――強くなりながら死へ近づく
- ハーピー撃破――No.9999が発動
- 最後の一撃を与えたのは別の存在
- No.7「ミライエルの翠槍」
- 考察:長老は「安全」を利用して探索者を支配していた
- 考察:なぜ聖水をその場で吸収させたのか
- 考察:ビョルンは報酬設計で士気を上げた
- 考察:ハーピーはなぜ長期戦になるほど危険なのか
- 《破滅の歌》と増殖の相乗効果
- 考察:《破滅の印》はビョルンに刺さる能力
- 《破滅の印》と《英雄の道》の危険な関係
- 考察:《模倣》の聖水は誰向きか
- 考察:タイタンの乱入は直前の危機を終わらせてもいる
- No.7を持つ裂け目の守護者
- 消耗した状態で始まる最悪の次戦
- 雨季は「数」から「質」の脅威へ
- 用語解説
- まとめ
雨季5日目――怪物の数は明らかに減っていた
地下村を抜けて地上へ戻ると、周囲ではさまざまなモンスターが争っていた。
唸り声。
叫び声。
衝突音。
雨季の島らしい混沌そのものだ。
しかし、初日とは違う。
モンスターの密度が明らかに低い。
初日は少し進むだけでも次々と新しい怪物が現れ、空からも地上からも途切れることなく襲われた。
今はそこまでではない。
怪物はいるが、間を縫って移動する余地がある。
ビョルンはその差を、豪雨と小雨ほど違うと感じる。
そこで頭に浮かんだのは安堵より、長老への苛立ちだった。
長老は雨季の変化を隠していた?
雨季が進めば、降ってくるモンスターの数が減る。
長老が長期間この島で暮らしてきたなら、その周期を知らないはずがない。
それなのに探索者たちへ伝えていなかった。
ビョルンは、その理由を考える。
地上がずっと危険だと思わせればいい。
外へ出たら死ぬ。
そう信じ込ませれば、探索者たちは自分から村へ残る。
無理やり閉じ込める必要はない。
安全な場所を一つだけ提示し、それ以外は危険だと思わせる。
それだけで人は依存する。
長老の村は単なる避難所ではなく、探索者を囲い込むための仕組みでもあった可能性がある。
第534話でビョルンが感じた「親切すぎる」という違和感は、また一つ裏付けられた。
それでもリーダーは今を見る
長老への怒りはある。
騙されていたという不快感もある。
しかしビョルンは、そこへ意識を引きずられない。
今優先すべきものは明確だ。
「陣形を組め!」
探索者たちへ指示を飛ばす。
そして続ける。
「この島を出るぞ!」
ここから再び、ビョルンは完全にリーダーとして動き始める。
先頭に立つのは自分。
盾で危険な攻撃を受ける。
近づいてきたモンスターはハンマーで叩き潰す。
後衛が動きやすいように道を作る。
長老を恨むのは後でもできる。
だが仲間の命は、今守らなければ失われる。
危険の中でも魔石を拾う
ビョルンは先頭で戦いながら、一行を前へ進ませる。
そして戦闘に少し余裕があると判断した瞬間、別の指示を出した。
「魔術師! 余裕があれば魔石を回収しろ!」
普通なら脱出だけに集中してもおかしくない。
だがビョルンは、地面に散らばる魔石を見逃さない。
大量のモンスターが死んだ結果、そこら中に戦利品が転がっている。
彼の感覚では、地面に金が落ちているのと同じだった。
危険なら拾わない。
だが拾う余裕があるなら拾う。
モンスターの数が減ったことで、全員を戦闘へ投入しなくても前進できる。
その余剰を戦利品回収へ回す。
安全を削って利益を取っているのではない。
余裕が生まれた分だけ、利益へ変えている。
探索者として極めて合理的な判断だ。
アイナルがレベルアップ
ビョルンたちはそのままさまざまなモンスターを倒しながら進んでいく。
そして十分ほど経った頃、アイナルが大声を上げた。
魂が満ちた。
さらに強くなった。
実際に増えたのは主に魂力だが、ビョルンにとってより重要なのは別の点だった。
新しい聖水枠が増えた。
成長しているのはアイナルだけではない。
ヘックス一族やアルミン探索隊の探索者たちもレベルアップし、聖水枠を増やしている。
それを確認したビョルンは、通常ならかなり問題になりそうな決断を下した。
「第3等級以上なら自由に吸収していい」
やがて第4等級の聖水がドロップする。
本来なら非常に価値のある戦利品だ。
安全に保存し、あとで分配する。
あるいは売却して利益を分ける。
それが普通だろう。
しかしビョルンは方針を変える。
「これから聖水は自由に吸収していい! 第3等級以上なら等級は気にするな!」
探索者たちは驚く。
誰かがその場で吸収すれば、あとから売却して公平に分配することはできない。
それでもビョルンは許可した。
理由は単純だ。
今は平常時ではない。
将来の利益より、今の生存率
聖水を保存して持ち帰れば、あとで大金になる。
しかし今ここで吸収すれば、
新しい能力。
基礎能力の上昇。
戦闘力の増加。
生存率の向上。
へ即座に変わる。
しかもこの先、何が出現するかわからない。
だったら今強くなったほうがいい。
将来の利益より、今の命。
ビョルンは聖水を戦利品ではなく、現地で使える強化資源として扱った。
さらに重要なのは、自分だけが優先して吸収するルールにしていないことだ。
条件を満たせば誰でもいい。
だから探索者たちの反応も大きく変わった。
怪物の雨が「チャンス」に変わる
この命令を聞いた瞬間、探索者たちから歓声が上がる。
それまで怪物の雨は、ただ恐ろしい災害だった。
いつ死ぬかわからない。
戦えば消耗する。
だが高等級聖水を自由に吸収できるなら、見え方は変わる。
怪物が降ってくる。
それは危険だ。
しかし同時に、
一気に強くなれる機会でもある。
同じ状況なのに、意味が変わった。
ビョルンは演説をしたわけではない。
ただ報酬のルールを変えた。
それだけで、探索者たちは前向きになる。
危険しか見えなければ逃げたくなる。
だが危険の先に明確な利益があれば、人は前へ進める。
探索者という人種をよく理解した判断だ。
それでも現実は甘くない
一行の雰囲気は良くなった。
魔石も集まる。
レベルも上がる。
聖水が落ちれば即座に戦力強化できる。
雨季という災害が、巨大な狩り場に見え始める。
しかし、その空気を壊す存在が前方へ降り立った。
地面が大きく揺れる。
白い羽。
巨大な翼。
竜のような胴体。
長い首。
そしてその先にある――。
人間の顔。
第2等級飛行モンスター。
ハーピー。
今回の脱出戦で初めて現れた、本格的な壁だった。
ハーピー戦――経験の差が最初の一手を決める
多くの探索者は第2等級モンスターとの実戦経験が多くない。
そのうえ、ハーピーの外見は異様だ。
人間の顔を持つ巨大な怪鳥。
普通なら恐怖で判断が遅れてもおかしくない。
しかしビョルンには『ダンジョン・アンド・ストーン』で何度も戦った経験がある。
だから、相手が動くより先に命令できる。
「魔術師! 防壁を張れ!」
直後、ハーピーの目が黒く染まった。
《破滅の歌》――本当に危険なのは攻撃後
ハーピーが《破滅の歌》を発動する。
空から大量の黄色い光が降り注ぐ。
爆発が続き、周囲の地面が吹き飛ぶ。
しかし事前に張った防壁は耐えている。
直接的な火力は、それほど圧倒的ではない。
問題はその後だった。
着弾地点にできた穴から、小型ハーピーが次々と姿を現す。
ビョルンはすぐに叫ぶ。
「先にそいつらを倒せ!」
小型個体は単なる雑魚ではない。
約一分で成体になる。
そして成体になれば、《破滅の歌》を含むスキルを使い始める。
つまり放置すれば、
一体が小型個体を生む。
小型個体が成長する。
成長した個体がまた増やす。
という連鎖が始まる。
ハーピー戦では時間そのものが敵になる。
エルウィン抜きで攻略する
ビョルンは反射的にエルウィンを呼ぼうとする。
しかし途中で止める。
村から脱出する際、《集中射撃》をはじめとした能力を使い切り、エルウィンには魔力がほとんど残っていない。
そこで即座に編成を変更する。
「アメリア、ミーシャ! 俺についてこい! アイナルは他の奴らを守れ! ベルシルは後方を頼む!」
ビョルンが本体。
アメリアとミーシャも本体へ。
アイナルは周囲の防衛。
ベルシルは後方管理。
エース一人が使えないなら、他の戦力で形を作るだけだ。
強い一人が使えなくなった瞬間に崩れるパーティーでは、生き残れない。
三人でハーピー本体へ
中央にビョルン。
右側にアメリア。
左側にミーシャ。
ビョルンが正面からハーピーの注意を引きつけ、左右から二人が攻撃する。
《巨体化》による大きな身体と高い脅威値によって、ハーピーの視線はビョルンへ向く。
ビョルンが盾を叩き込む。
ハーピーがよろめく。
その瞬間、アメリアとミーシャが下半身へ攻撃を集中する。
本体を固定し、左右から削る。
短時間で終わらせたい。
しかし、ここからハーピーの本領が発揮される。
《破滅の印》――100秒の死刑宣告
ハーピーの目から光が放たれる。
狙われたのはビョルンだった。
胸に焼けるような感覚が広がる。
《破滅の印》。
効果は、
毎秒、最大HPの1%を失う。
単純計算では100秒。
しかも避けられない。
盾でも防げない。
時間経過でも消えない。
術者か対象のどちらかが死ぬまで続く。
つまり高HP、高防御、高耐性というビョルンの長所を無視しながら、強制的に時間制限をかけてくる。
ハーピーは長期戦を許さない
《破滅の歌》で小型個体を増やす。
小型個体は時間経過で成長する。
《破滅の印》は時間経過でHPを削る。
能力構成を見れば、ハーピーの狙いは明確だ。
時間が経つほど有利になる。
だから守りを固めて長期戦に持ち込む戦法そのものが罠になる。
ビョルンが選ぶべき攻略法は一つ。
自然再生と回復役で耐えながら、可能な限り早く本体を倒す。
「俺のことはいい! 攻撃に集中しろ!」
回復役の仕事も、HPを満タンへ戻すことではない。
ビョルンが本体を倒すまでの数秒を買うこと。
それだけだ。
《模倣》――味方の能力が敵側へ渡る
戦闘が激しくなると、ハーピーの顔が変化する。
アメリアの顔。
《模倣》。
周囲にいる人物から、能力をランダムにコピーするスキルだ。
この能力の厄介さは、ハーピー自身の能力だけ覚えていても完全には対策できないことにある。
周囲に誰がいるかで、使える能力が変わる。
強力な仲間がいれば、その強さが敵側の選択肢にもなる。
そして今回、最悪に近い能力を引き当てる。
《自己複製》――ハーピーが二体へ
《自己複製》。
一体だったハーピーが二体に増える。
単純に敵の数が倍になっただけではない。
《破滅の歌》も増える。
《破滅の印》も増える。
増殖速度そのものが上がる。
ここから戦場は一気に悪化する。
別のハーピーが《破滅の歌》。
さらに《破滅の印》。
ビョルンへのHP減少量は毎秒2%へ。
そして最初に生まれた小型ハーピーの一体が成長してしまう。
成体になった個体も能力を使う。
再び《破滅の歌》。
さらに《破滅の印》。
ついに、
毎秒3%。
逃げても助からない
毎秒3%。
単純計算なら約33秒。
自然再生もある。
治療も入る。
それでも回復役が永遠に維持できる量ではない。
しかも逃げても解除されない。
術者が生きている限り、HPは減り続ける。
つまり退却という選択肢すら消えた。
倒すか、死ぬか。
完全な短期決戦になる。
《英雄の道》――強くなりながら死へ近づく
ビョルンのHPが50%を下回る。
受動能力《英雄の道》が発動。
HPが低いほど、全耐性が上昇する。
一見すると《破滅の印》との相性は悪くない。
勝手にHPが減る。
そのぶん耐性が上がる。
通常攻撃には強くなる。
しかし根本的な問題は解決しない。
《破滅の印》によるHP減少そのものは止まらない。
ビョルンは強くなりながら、同時に死へ近づいている。
さらにHP20%を下回ると、《英雄の道》は最大効果へ到達する。
もう余裕はない。
どちらかが先に倒れる。
ハーピーか。
ビョルンか。
ハーピー撃破――No.9999が発動
決着の瞬間、ハーピーが倒れる。
そして番号付きアイテムNo.9999「初心者の幸運」が発動。
聖水がドロップする。
白色。
ビョルンは《模倣》の聖水だと判断する。
構築の核にするほどではない。
それでも十分価値がある能力だ。
周囲の味方によって性能が変わるため、固定火力より柔軟性を求める構築では面白い。
ようやく第2等級モンスターを倒し、高価値な聖水まで得た。
普通なら大きな勝利だ。
しかし喜んでいる時間はなかった。
最後の一撃を与えたのは別の存在
ハーピーの頭を見る。
巨大な槍が突き刺さっている。
ビョルンたちの武器ではない。
つまり最後の一撃を与えたのは別の存在だった。
影から現れたのは人型の巨大モンスター。
約三メートル。
岩のような皮膚。
タイタン。
またしても第2等級モンスターだ。
ビョルンはHP20%以下まで追い込まれた直後。
エルウィンも魔力切れ。
回復役も消耗している。
その状態で次の第2等級。
それだけでも十分に悪い。
だが本当の問題は武器だった。
No.7「ミライエルの翠槍」
タイタンが持っていたのは赤い槍。
ビョルンには見覚えがある。
No.7。
ミライエルの翠槍。
番号付きアイテム。
しかも一桁。
通常装備とは別格の存在だ。
問題は「強い槍を持っている」ことだけではない。
なぜタイタンが、その武器を持っているのか。
その答えはすぐに出る。
「天上の槍兵ミライエル」が人間の存在に怒りを覚えた。
ビョルンは理解する。
裂け目の守護者。
目の前にいるのは、ただの第2等級タイタンではない。
考察:長老は「安全」を利用して探索者を支配していた
今回の冒頭で明らかになった雨季の変化は、長老の村を考えるうえでかなり重要だ。
地上は確かに危険だった。
だがその危険度は日を追うごとに下がる。
もし長老がそれを知っていたなら、「安全な村」を提供する行為の意味も変わる。
情報を与えなければいい。
雨季はずっと危険だと思わせる。
すると探索者は、自分の意思で村へ残る。
安全を提供することと、自由を奪うことは両立する。
外へ出るかどうかを判断できる情報を独占すれば、鎖がなくても人を縛れる。
ビョルンが長老を信用できなかった理由が、さらに明確になった。
考察:なぜ聖水をその場で吸収させたのか
通常なら、高等級の聖水を自由に吸収させるのはかなり大胆だ。
売れば大金。
分配すれば全員に利益が出る。
しかし雨季の島では、その価値より即時戦力のほうが重要になる。
今吸収すれば、この場で一人が強くなる。
次の戦闘で、その能力によって誰かが助かるかもしれない。
つまりビョルンは、
市場価値と戦場価値を切り分けた。
平時なら売る。
非常時なら使う。
リーダーとして合理的な判断だ。
考察:ビョルンは報酬設計で士気を上げた
怪物の雨そのものは変わらない。
だが「高等級聖水を自由に吸収していい」と言っただけで、探索者たちの見方が変わった。
災害がチャンスに見える。
ビョルンは長い演説で鼓舞したわけではない。
戦えば報われる仕組みを作った。
探索者は危険を恐れる一方、利益にも敏感だ。
だから「危険の向こう側に自分の成長がある」とわかれば前向きになれる。
ビョルンのリーダーシップは、感情へ直接訴えるというより、行動したくなる環境を作るタイプだ。
考察:ハーピーはなぜ長期戦になるほど危険なのか
ハーピーの能力には明確な共通点がある。
《破滅の歌》で小型個体を作る。
小型個体が時間経過で成長する。
《破滅の印》で対象へ死亡までの時間制限を与える。
《模倣》によって予想外の能力を追加する。
つまり、
時間経過そのものがハーピー側の強化になる。
これが最も恐ろしい。
攻撃力が極端に高いから危険なのではない。
長期戦へ持ち込まれた時点で負け筋が増え続ける構築になっている。
《破滅の歌》と増殖の相乗効果
《破滅の歌》そのもののダメージは防壁で耐えられた。
しかし本質は小型個体生成。
小型個体が成長すれば、また《破滅の歌》を使える。
さらに今回、《模倣》から《自己複製》まで発動した。
本体そのものが増えたことで、増殖速度はさらに上がる。
一つ一つの能力ではなく、
能力同士が時間経過を軸に噛み合っている。
前話でビョルンが長老の構築を「5点」と評価したのとは対照的に、ハーピーは目的が非常に明確な構築だ。
「長期戦になれば勝つ」。
そこへ全能力が向いている。
考察:《破滅の印》はビョルンに刺さる能力
ビョルンは本来、長期戦に強い。
HPが高い。
耐性が高い。
盾もある。
再生力も高い。
だが《破滅の印》は、その強みをほぼ無視する。
最大HPの割合で削る。
防御できない。
避けられない。
解除もできない。
つまり、
耐久型の相手へ時間制限を押しつける能力だ。
ビョルンのような盾役だからこそ、非常に相性が悪い。
《破滅の印》と《英雄の道》の危険な関係
HPが下がれば、《英雄の道》によってビョルンの耐性は上がる。
そのため《破滅の印》によるHP減少が、結果的にビョルンを強化する。
しかし良いことではない。
耐性が上がっても、《破滅の印》によるHP減少は続く。
つまり、
通常攻撃には強くなるが、残り時間は減り続ける。
HP20%以下で最大強化。
だが同時に、もっとも死に近い状態でもある。
瀕死強化は安全を作る能力ではない。
最後の数秒で逆転するための保険に近い。
考察:《模倣》の聖水は誰向きか
ハーピーから落ちた《模倣》は、非常に柔軟な能力だ。
周囲にいる人物の能力をコピーできる。
そのため、強い仲間が多ければ選択肢も増える。
一方でランダム性があり、欲しい能力が必ず得られるとは限らない。
その意味で、
構築の核より、対応力を補う能力
として向いている可能性が高い。
ビョルンのように役割が固まった盾役より、状況によって役割を変える探索者のほうが活かしやすそうだ。
考察:タイタンの乱入は直前の危機を終わらせてもいる
タイタンの出現は明らかに悪い知らせだ。
しかし皮肉な点もある。
ハーピーへ最後の一撃を入れたことで、術者が死亡した。
結果、《破滅の印》も終わる。
つまり、
新しい危機が、直前の危機を強制終了させた。
雨季らしい混沌だ。
ただし、代わりに現れた相手があまりにも危険すぎる。
No.7を持つ裂け目の守護者
目の前の存在は外見上タイタン。
それだけなら第2等級モンスターだ。
しかし今回は条件が違う。
- 第2等級モンスターの身体
- 裂け目の守護者
- No.7「ミライエルの翠槍」
三つの危険要素が重なっている。
つまり通常のタイタンの知識だけで戦えるとは限らない。
裂け目の守護者として、どんな能力補正や特殊行動を持つのか。
番号付きアイテムがどこまで性能を引き上げるのか。
改めて解析する必要がある。
消耗した状態で始まる最悪の次戦
ミライエル出現時点で、ビョルンたちは万全ではない。
ビョルンはHP20%以下まで追い込まれた直後。
回復役も消耗。
エルウィンは魔力切れ。
他の探索者も連戦中。
周囲には雨季のモンスターも残っている。
つまり敵の性能だけでなく、こちら側の資源不足まで問題になる。
ハーピー戦では撃破速度が勝負だった。
次は立て直す時間そのものを確保できるかが重要になるだろう。
雨季は「数」から「質」の脅威へ
第536話の序盤では、雨季のモンスター数が大きく減ったことが強調された。
初日ほど数の暴力に苦しむ必要はない。
だから魔石回収もできた。
聖水吸収もできた。
探索者たちは、雨季を稼ぎ場として見始めた。
しかし最後に現れたミライエルは、その考え方へ冷水を浴びせる。
怪物の「数」は減った。
だが代わりに、
一体で戦況をひっくり返すほど質の高い敵
が現れる。
雨季が楽になったわけではない。
危険の種類が変わっただけなのかもしれない。
用語解説
《破滅の歌》
ハーピーが使用する範囲能力。
大量の光線を降らせるだけでなく、着弾地点から小型ハーピーを発生させる。
小型個体は時間経過で成体になるため、増殖を防ぐための早期処理が重要。
《破滅の印》
対象の最大HPを毎秒1%ずつ減少させる呪い。
回避や防御ができず、術者か対象が死亡するまで続く。
複数個体から受けると効果が重複する。
《模倣》
周囲にいるキャラクターの能力をランダムにコピーする能力。
今回、ハーピー撃破後に聖水としてドロップしたとビョルンは判断している。
《英雄の道》
ビョルンのHPが減少するほど、全耐性を高める受動能力。
HP20%以下で最大効果へ到達する。
No.9999「初心者の幸運」
モンスター撃破時の聖水ドロップに関係する番号付きアイテム。
今回もハーピー撃破時に発動した。
No.7「ミライエルの翠槍」
裂け目の守護者「天上の槍兵ミライエル」が所持している番号付きアイテム。
一桁番号であり、通常装備とは別格の危険要素として警戒する必要がある。
まとめ
第536話「虹(3)」では、長老の村から脱出したビョルンたちが、雨季5日目の地上を突破しようとする様子が描かれた。
まず判明したのは、初日よりモンスターの数が大幅に減っていること。
この変化を見たビョルンは、長老が雨季の情報を意図的に隠し、探索者たちを村へ依存させていた可能性を疑う。
それでも感情を引きずらず、すぐ脱出へ集中する。
さらに余裕が生まれれば魔石回収。
仲間が成長すれば、第3等級以上の聖水を即時吸収可能にする。
危険を利益と戦力へ変える探索者らしい判断が続く。
しかしその空気は、第2等級モンスター・ハーピーの出現で一変した。
《破滅の歌》による増殖。
《破滅の印》による時間制限。
《模倣》からの《自己複製》。
さらに呪いが三重に重なり、ビョルンはHP20%以下まで追い込まれる。
それでも《英雄の道》の強化を利用しながら戦い続け、ついにハーピーは死亡。
No.9999「初心者の幸運」によって、《模倣》と考えられる聖水までドロップした。
だが最後の一撃を与えたのはビョルンたちではない。
現れたのはタイタン。
その手にはNo.7「ミライエルの翠槍」。
さらに正体は、**裂け目の守護者「天上の槍兵ミライエル」**だった。
怪物の数は減った。
しかし危険そのものが減ったわけではない。
次にビョルンたちが相手にするのは、通常の第2等級モンスターではなく、一桁の番号付きアイテムを持つ特殊個体。
第536話は、雨季を「稼ぎ場」へ変え始めた探索者たちへ、
この島では利益が大きいほど、そのすぐ隣にさらに大きな死が待っている
と突きつける形で幕を閉じた。
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