転生したらバーバリアンだった 第570話 あらすじ&考察|ゴーストバスターズ閉鎖とビョルン・ヤンデル、イ・ベクホの決裂
ゴーストバスターズ閉鎖――外界との情報経路が消える
悪霊であることを知られてはいけない世界で、同じ境遇のプレイヤーたちが匿名で交流できる場所。それが「ゴーストバスターズ」だった。
前話の最後、そこに突然のサービス終了告知が掲載される。
当然、掲示板は大混乱に陥った。
閉鎖を撤回してほしいと懇願する者、運営に怒りをぶつける者、ゴーストバスターズに救われた過去を語る者。購入したGPの返金を気にする現実的な投稿もあれば、王家と運営の関係から閉鎖理由を推測する者もいた。
ゴーストバスターズが終わる。
その事実だけでこれほど騒ぎになるのは、この場所が単なる掲示板ではなかったからだ。
この世界でプレイヤーは、自分が「悪霊」であることを隠して生きなければならない。同じ境遇の者と安全に情報交換できる場所は貴重であり、人によっては精神的な支えでもあった。
しかしビョルン・ヤンデルは、いつまでも掲示板の騒ぎを追い続けなかった。
投稿の多くは感情的な反応か、根拠の薄い推測にすぎない。
ならば、自分で考える。
なぜゴーストバスターズは突然閉鎖されるのか。
ビョルンが最初に疑ったのは王家だった。
彼はこれまでの経験から、ゴーストバスターズのGMと王家の間に協力関係があることを知っている。そのため、コミュニティそのものを閉鎖するほどの事態が起きたのなら、王家が関係している可能性を考えるのは自然だった。
ただし、理由までは分からない。
王家とGMの間で問題が起きたのか。それとも別の事情なのか。
そして何より、タイミングが最悪だった。
「なんでよりによって、地下1階にいる時に……」
現在、ビョルンたちはまだ地下1階から帰還できていない。
族長の島では魔術師たちが次元碑を調べており、その魔力の流れから強制的に作動させられる可能性が浮上している。成功すれば帰還への道が開くかもしれないが、まだ確定した話ではない。
そんな状態でゴーストバスターズまで閉鎖される。
地下にいながら外界の情報を得られる経路が消え、場合によっては外へ働きかける手段まで失われる。
ビョルンにとってこれは、単なるウェブサービスの終了ではない。
探索を支えていた情報戦力の一つが失われる危機だった。
GMへの接触とイ・ベクホとの対決
推測ではなく本人に聞く
掲示板を読んでも答えが出ないなら、当事者へ聞けばいい。
ビョルンはゴーストバスターズのGM「Elfnunalove」へ1対1のチャット申請を送る。
だが返事は来なかった。
拒否されるわけでもなく、ただ無反応。
いつ返事が来るか分からない相手を待ち続けるより、今のうちに確認しておくべきことが他にある。
ミーシャ・カルシュタイン。
復活の石。
そして、その裏で動いていたと思われる人物。
ビョルンは「Long Live Korean Independence」のチャットルームへ入る。
そこにはヒョンビョルとイ・ベクホがいた。
「ヒョンビョル、少し席を外してくれ」
普段の雑談とは明らかに違う空気を察し、ヒョンビョルは退出する。
二人きりになったところで、ビョルンは遠回しな探り合いをしなかった。
イ・ベクホが自分の怒りの理由を本当に知らないのか、それとも「どこまで知られているか」を確認しようとしているのかは分からない。
ならば核心だけをぶつける。
「復活の石」
その一言でイ・ベクホの態度が変わった。
彼はすぐに事情を理解し、計画が失敗したらしいと判断する。そしてミーシャが何を話したのかを気にした。
その反応だけで十分だった。
復活の石をミーシャへ渡した件に、イ・ベクホが関わっていた。
ビョルンが本当に知りたいのは、やったかどうかではない。
「なぜ、あんなことをした?」
なぜミーシャを使ったのか。
なぜ自分たちの関係に介入したのか。
そこに対するイ・ベクホの答えは、彼の価値観をはっきり示すものだった。
イ・ベクホが復活の石を渡した理由
「切れないなら、切れるようにする」
イ・ベクホの理屈は単純だった。
ビョルンがいつまでも自分から縁を切れない。
だから手を貸した。
「お前が先に縁を切れないからだ」
イ・ベクホが見ているのは、現在の人間関係よりも最終的な帰還だ。
いつか元の世界へ戻るのであれば、こちらで築いた関係はいずれ手放すことになる。
少なくとも彼は、そう考えているように見える。
ならばビョルン自身が切れない関係を、外から切れるようにすればいい。
その手段としてミーシャと復活の石を利用した。
恐ろしいのは、強い憎悪から行動したわけではない点だ。
目的から逆算し、必要だと思ったから実行する。
それがイ・ベクホだった。
ビョルンも目的のために嘘をつき、情報を隠し、相手を誘導してきた。
だが、それでも仲間を自分の目的のための部品として扱うことまではできない。
二人の違いは、目的ではなく「何を犠牲にできるか」という線引きにある。
復活の石には別の役割もあった
ところが、復活の石を渡した理由はそれだけではなかった。
ビョルンは皮肉を込め、結果として貴重な石を無料で手に入れたようなものだと返す。
しかしイ・ベクホは惜しがらない。
むしろ、ビョルンが持っているならそれでいいという。
「復活の石で戻るなら、本当の死じゃない」
イ・ベクホによれば、復活の石による蘇生なら、彼が語る「記録」と矛盾しないらしい。
彼は記録の流れを川のようなものとして捉えており、最終的な到達点があっても、その途中で何が起きるかには幅があると考えているようだ。
本話だけでは「記録」の仕組みを完全には判断できない。
ただ一つ明確なのは、イ・ベクホがビョルンを最後まで生かすことを非常に重視しているという点だ。
ミーシャを通じて復活の石を使わせる計画が失敗しても、石がビョルンの近くに残れば生命を守る保険になる。
どちらに転んでも意味がある。
イ・ベクホはそこまで計算していた。
ビョルンが復活の石を捨てられない理由
弱点は「仲間を見捨てられないこと」
イ・ベクホは、復活の石が気に入らないなら捨てればいいと言う。
同時に、ビョルンには捨てられないとも見抜いていた。
「お前、捨てられないだろ?」
ビョルンが惜しんでいるのは、貴重なアイテムではない。
仲間を救える可能性そのものだ。
探索中、仲間が死ぬかもしれない。
その時に復活の石があれば助けられる可能性がある。
ならば、たとえ代償があったとしても使ってしまう。
ビョルン自身、それを否定できなかった。
そしてイ・ベクホは、さらにドゥワルキーの死を持ち出す。
かつて仲間を失い、ビョルンがどれほど悲しんだのかを知っているからだ。
もしあの時、復活の石を持っていたなら。
救える可能性があったなら。
使わずにいられただろうか。
イ・ベクホの言い方はビョルンを激怒させるものだったが、内容そのものには反論しづらい。
彼はビョルンの過去から、未来の行動まで読んでいる。
復活の石は強力な保険だ。
しかし同時に、「救えるかもしれない」という選択肢をビョルンへ突きつけ続ける。
その意味では、戦力を増やす道具でありながら、判断を縛る鎖にもなり得る。
第570話の戦いは「心理戦」
分析する側とされる側が逆転する
第570話には、大規模な戦闘がない。
剣も魔法も使われない。
それでもビョルンとイ・ベクホの会話は、戦闘に近い緊張感を持っている。
普段のビョルンは、敵の能力や目的を観察し、最も生存率の高い攻略法を組み立てる側だ。
相手が何をできるのか。
どんな条件で動くのか。
こちらの戦力をどう配置するのか。
しかし今回は逆だった。
分析されているのがビョルンである。
イ・ベクホは、ビョルンが仲間を捨てられないことを知っている。
責任を背負うことも知っている。
救える手段があるなら、自分が損をしてでも使う可能性が高いことも分かっている。
だから復活の石を近くに置けばいい。
普通の罠なら避けられる。
危険な装備なら捨てられる。
だが今回利用されているのは、ビョルン自身の価値観だ。
完全に逃れるには「仲間を見捨てられる人間」になるしかない。
それができないとイ・ベクホは知っている。
この点で、心理戦ではイ・ベクホが一歩先を進んでいた。
王家遠征軍と地下1階――情報も戦力になる探索
強大な遠征軍がいても自由には動けない
現在のビョルンは、普段の仲間だけで迷宮を攻略しているわけではない。
王家遠征軍という大規模な集団と共に地下1階を探索している。
人数が多ければ、戦闘力だけでなく索敵や魔術的な解析など、個人ではできないことを分担できる。
今回の次元碑もその一例だ。
魔術師たちが魔力の流れを調査し、強制的に作動させられる可能性を探っている。
ビョルンがどれほど強くても、これは腕力で解決できない。
専門家に任せ、結果を待つしかない。
一方、大規模な集団と行動することには制約もある。
ビョルンは他の遠征隊員が知らない情報を持っている。
しかし、知っているからといって一直線に行動すれば不自然だ。
「なぜそれを知っているのか」まで説明できる形で動かなければならない。
前話で次元碑を改めて「発見する」手順を踏んだのも、そのためだった。
ビョルン自身が知っている情報と、周囲から見て知っていても不自然ではない情報。
この二つを分けて行動する必要がある。
地下1階の探索では、戦闘力だけでなく情報管理まで重要になっている。
ビョルンは情報と戦力を組み合わせる
ビョルンの強さは、本人のステータスだけではない。
これまでの判断を整理すると、
情報を集める→ 危険度を判断する→ 必要な能力を持つ相手を使う→ 次の行動を選ぶ
という流れがある。
次元碑なら魔術師。
遠征軍全体の問題なら指揮系統。
外界の情報ならゴーストバスターズ。
運営側について知りたければGM。
イ・ベクホにしか分からないことなら、信用できなくても本人へ聞く。
重要なのは、信用することと利用することを分けている点だ。
完全に信じられる相手だけで攻略できるほど、この世界は単純ではない。
だから危険人物からでも情報を取る。
王家を警戒しながらも遠征軍の戦力を利用する。
そうして複数の情報と能力を組み合わせることが、ビョルンの基本的な攻略法になっている。
だからこそゴーストバスターズ閉鎖の損失も大きい。
単なる交流場所ではなく、ビョルンの「構築」に組み込まれていた情報源だからだ。
イ・ベクホが突きつけるビョルン自身の矛盾
「お前も他人を騙している」
イ・ベクホはさらにビョルンを追い込む。
ミーシャとの関係が完全に壊れたのなら、石を返してもらえばいい。
また同じように育て直すのは面倒だ。
人間関係まで計画の一部として扱う言葉に、ビョルンの怒りは増していく。
そしてイ・ベクホは、ビョルン自身の行動へ矛先を向ける。
ビョルンも他人を騙してきた。
自分が悪霊であることを仲間へ明かしているわけではない。
それなのに、自分が騙された時だけ相手を責めるのか。
その指摘は、ビョルンが触れられたくない部分だった。
「黙れ」
ここで冷静さが崩れる。
ビョルンは、イ・ベクホを殺したいほど腹が立っていることまで認める。
だが、この場所では実際に殴ることも剣を振るうこともできない。
いつものように物理的な力で押し切る選択肢がない。
「怒った方が負けなら、今日は俺の負けだ」
ビョルン自身がそう認めるほど、会話の主導権はイ・ベクホ側に傾いていた。
ただし、ビョルンが情報収集より感情を優先したことを、単純な失敗だけで片付けるのも難しい。
情報を得られるなら仲間を道具として扱われても我慢する。
それを徹底すれば、今度は自分自身がイ・ベクホの価値観へ近づいてしまう。
合理性をどこまで優先できるのか。
そこにも二人の境界線がある。
「次に会った時」――二人の関係に入った決定的な亀裂
イ・ベクホはさらに新しい提案を持ち出そうとする。
だがビョルンは、もう聞かなかった。
耳を塞ぎ、自分が言うべきことだけを伝える。
「またいつか会うんだろ?」
ゴーストバスターズが閉鎖されても、二人の因縁まで消えるとは限らない。
いつか再び直接会う時が来る。
その時、ビョルンはイ・ベクホの「願い」を叶えると言い残す。
イ・ベクホが以前から望んでいるのは、この世界から抜け出すことだ。
そのため、この言葉が単純な友好的約束ではないことは分かる。
ただし、ビョルンが具体的に何をするつもりなのかまでは、本話の段階では断定できない。
確かなのは、これまで危うい協力関係を続けてきた二人の間に、決定的な亀裂が入ったことだ。
ビョルンはそのままチャットルームを退出する。
一人になったビョルンと最後の情報源
自分の部屋へ戻ったビョルンは、すぐに動けなかった。
戦闘をしたわけでもないのに、精神的には大きく消耗している。
時間が経ってから考えれば、言い返したかったことも、聞いておけばよかったことも浮かんでくる。
普段なら極限状態でも次の手を考えるビョルンが、会話だけでそこまで乱された。
それだけイ・ベクホが深いところを突いてきたということだ。
しばらくして確認すると、先ほどのチャットルームには誰も残っていない。
GMからの返答もない。
しかしビョルンは、完全に手詰まりになったとは考えなかった。
地下1階から脱出できれば、GM本人を直接探すという手段もある。
そして今すぐ利用できる、別の運営側との接点も残されている。
視界がぼやけ、見慣れたメッセージが現れる。
「ようこそ、監視者」
円卓会議だ。
ゴーストバスターズが閉鎖されれば、これまでと同じ形で利用できる機会も失われる可能性がある。
地下1階から戻れるかは分からない。
次元碑の研究も続いている。
GMは沈黙したまま。
イ・ベクホとの関係にも大きな亀裂が入った。
そんな中で、最後に残された情報収集の場へビョルンが入ろうとするところで第570話は終わる。
第570話考察|二人を分けたのは「何を犠牲にできるか」
帰還を目指しても、生き方は同じではない
ビョルンとイ・ベクホの対立は、「帰りたい者」と「残りたい者」の単純な衝突ではない。
二人とも、この世界の外を意識している。
違うのは、そのために何を切り捨てられるかだ。
イ・ベクホは、最終目的のためなら現在の人間関係へ介入できる。
ビョルンが自分で切れないなら、切れる状況を作ればいい。
一方のビョルンも、必要なら嘘をつき、人を利用する。
それでも仲間を「目的達成の邪魔だから」という理由で切り捨てることはできない。
だから復活の石も捨てられない。
イ・ベクホから渡された危険な道具だと分かっていても、いつか仲間の命を救える可能性がある。
その可能性を捨てる方が、ビョルンには難しい。
イ・ベクホにとって、それは弱点だ。
しかし別の見方をすれば、その弱点こそがビョルンをビョルンたらしめている。
イ・ベクホは敵とも味方とも言い切れない
イ・ベクホの不気味さは、ビョルンを殺そうとしているわけではない点にもある。
むしろ生かそうとしている。
復活の石まで用意し、ビョルンが最後まで進める可能性を高めようとしている。
目的だけを見れば、支援者にも見える。
しかし、そのためなら本人の意思を無視し、ミーシャとの関係まで操作できる。
つまり、
目的の一部では味方に近く、手段と価値観では敵に近い。
だから完全に信用することも、簡単に切り捨てることも難しかった。
今回、イ・ベクホがその境界を大きく越えたことで、ビョルンの態度も変わった。
「Closed」が示す複数の閉塞
第570話では、さまざまなものが同時に閉じようとしている。
最も分かりやすいのはゴーストバスターズ。
プレイヤーたちをつないできた情報経路が閉じる。
ビョルンとイ・ベクホの関係にも大きな亀裂が入る。
ミーシャとの関係も前話から揺らいだまま。
そして物理的にも、ビョルンは地下1階に取り残されている。
場所。情報。人間関係。
異なる種類の閉塞が重なっている。
それでもビョルンは完全には止まらない。
掲示板で答えが出なければGMへ聞く。
GMが答えなければ別の経路を探す。
次元碑の問題は魔術師に任せる。
自分にできることと、他人に任せるべきことを切り分けながら、次の一手を探す。
第570話に派手な戦闘はない。
それでも描かれているのは、これまでの迷宮攻略と同じだ。
情報を集め、相手の目的を読み、利用可能な戦力を組み合わせ、限られた選択肢から生き残る道を選ぶ。
ただし今回は、そこにビョルン自身の感情が最大の変数として入り込んだ。
合理性だけなら仲間を切り捨てた方が楽な場面もある。
それでもできない。
イ・ベクホはそれを弱さとして利用する。
だが、その非合理さがあったからこそ、ビョルンはこれまで仲間と共に戦ってきた。
最適解だけを選ばないビョルンと、目的のためなら最適解を選び続けるイ・ベクホ。
第570話は、その違いを真正面から描いた回だった。
まとめ|ゴーストバスターズ閉鎖とビョルンの転換点
第570話では、ゴーストバスターズの閉鎖と復活の石を巡る真相が重なり、ビョルンを取り巻く情報と人間関係が一気に揺らいだ。
イ・ベクホが恐ろしいのは、単に嘘をつくからではない。
ビョルンの性格を理解し、仲間を見捨てられないという部分まで計画に組み込んでいるからだ。
一方のビョルンも、彼の考え方を完全には否定できない部分がある。
自分自身も秘密を抱え、必要なら他人を欺いてきた。
それでも「仲間を目的のための部品として切り捨てる」という一線だけは越えられない。
そこが二人を分けている。
第570話の重要ポイント
- ゴーストバスターズ閉鎖により、地下1階にいるビョルンは重要な外界情報ルートを失おうとしている。
- 復活の石をミーシャへ渡した背後にはイ・ベクホがおり、人間関係への介入とビョルンの生存という複数の狙いがあった。
- イ・ベクホはドゥワルキーの死まで材料にし、ビョルンが仲間を見捨てられないことを正確に理解している。
- 王家遠征軍と地下1階の探索では、戦闘力だけでなく情報管理や専門家との役割分担が重要になっている。
- ビョルンとイ・ベクホの対立は、帰還そのものではなく「目的のために何を犠牲にできるか」という価値観の違いにある。
次回の注目点
- ゴーストバスターズが閉鎖される理由について手掛かりを得られるのか。
- 最後の円卓会議で、ビョルンがどの情報を優先するのか。
- 地下1階からの帰還につながる次元碑の調査がどう進むのか。
情報経路が閉じ、人間関係にも亀裂が入り、地下1階という場所からも抜け出せない。
それでもビョルンは、残された情報と戦力を組み合わせて次の一手を探す。
第570話は、ビョルンの強さが腕力だけではなく「情報をどう使うか」にあることと、その合理性を崩す最大の弱点が仲間への情であることを同時に描いた転換点だった。
