『転生したらバーバリアンだった』第593話あらすじ&考察|未知の裂け目に挑む5人編成の意味
地下1階に現れた「本物の裂け目」
すべての守護者像を攻略したことで開いた石扉。その奥に待っていたのは、不気味な赤いポータルだった。
これまでビョルン・ヤンデルたちは、守護者像から入るボス空間も便宜上「裂け目」のように扱っていた。しかし魔術師たちによれば、あちらには通常の裂け目ポータルが持つ特徴がなく、その先にも独立したボス空間しか存在していなかった。
今回は違う。
「裂け目だ」
魔力の波長を調べた魔術師が、今度こそ本物だと判断する。
つまり地下1階で、初めて正式な裂け目と考えられるポータルが発見されたのだ。
地下1階固有の裂け目なのか
ビョルンは、裂け目が存在したこと自体にはそれほど驚かない。
地下1階も一つの独立した階層である以上、その階層だけに対応した特殊な裂け目が存在していても不思議ではない。
族長からは、これまで裂け目が発生する場面を見たことがないため期待しすぎない方がいいとも聞いていた。それでもビョルンは、最初から「存在しない」と決めつけてはいなかった。
通常の裂け目のようにランダム発生するのではなく、特定の場所で条件を満たしたときだけ開く仕組みなのではないか。
すべての守護者像を攻略し、石扉が開いた直後にポータルが現れた状況を考えれば、そう推測する余地はある。
ただし、まだ確定ではない。
そしてビョルンが本当に警戒していたのは、その正体よりも内部について何一つ分からないことだった。
ビョルンが未知の裂け目を恐れる理由
魔術師たちがポータルを調査する間、ビョルンは少し離れた場所で考えを整理する。
もともとは、地下1階からさらに上位階層の裂け目へつながる仕組みも想像していた。今回のポータルがそうである可能性も完全には否定できない。
しかし、長年『Dungeon and Stone』を攻略してきた感覚では、地下1階固有の裂け目である可能性の方が高そうに思える。
そのとき彼の胸に湧いたのは、好奇心ではなく不安だった。
「ここはゲームじゃない」
この一言が、第593話におけるビョルンの判断をほぼすべて説明している。
ゲームなら未知のコンテンツは歓迎すべきものだ。
新しい敵、新しい地形、新しいギミック。それを試し、失敗し、攻略法を探すこと自体が楽しみになる。
だが現在の世界では、一度の失敗が本物の死につながる。
ゲームなら罠を踏んでも次は避けられる。
敵の能力を知らず全滅しても、次回は対策できる。
死を情報へ変換できるのがゲームだった。
現実ではそうはいかない。
守護者も不明。
モンスターも不明。
地形も不明。
攻略条件も不明。
その状態で、最初の一回を成功させなければならない。
ビョルンが未知を必要以上に恐れているのではない。
むしろ、初見攻略がどれほど危険か知り尽くしているからこその慎重さだった。
ゲーム時代の初見攻略は失敗の積み重ねだった
ビョルンは『Dungeon and Stone』で数多くの裂け目を攻略してきた。
今では攻略方法を熟知している場所にも、当然ながら最初の挑戦があった。
血の要塞、氷河洞窟、白の神殿。
その多くで、初見時にはゲームオーバーを経験している。
慎重に進んでも死ぬ。
正しいと思った選択が致命傷になる。
未知のギミックを知らなかったというだけで、育てたキャラクターが失われる。
そこから原因を分析し、装備を変え、編成を変え、ルートを修正して正解に近づいてきた。
つまり、これまでのビョルンを支えていた最大の武器は単純な戦闘力ではない。
「この先で何が起こるか知っている」という情報量だった。
今回はそれがない。
しかも自分たちが、すべてのギミックを戦力差だけで踏み潰せるほど圧倒的だという保証もない。
だからこそビョルンは、戦う前の準備に最大限の価値を置く。
魔術師たちが得た二つの情報
調査が一区切りつくと、遠征軍上層部による会議が開かれる。
そこで共有された重要情報は二つあった。
一つ目は、裂け目が短時間で自然消滅する可能性が低いこと。
ポータルの魔力密度などに弱まる兆候がないため、慌てて突入する必要はなさそうだという。
これはビョルンにとって大きい。
時間があるなら、それを準備へ変えられる。
未知の場所へ挑む以上、焦りほど危険なものはない。
二つ目は、内部へ入れる人数。
魔術師たちは最大5人ではないかと推測した。
ところが根拠を聞くと、魔法的に人数制限を解析したわけではない。
石扉の内側に描かれた壁画を検討し、「5人を意味しているのではないか」と判断しただけだった。
しかも本人たちも、間違っている可能性を認めている。
「何言ってんだ、この魔術師」
ビョルンが拍子抜けするのも無理はない。
それでも、他に手掛かりがない以上は利用する。
ひとまず5人を前提として最適なパーティーを組み、推測が外れた場合に備えて追加の人員も準備しておく。
不確かな情報を捨てず、同時に信用しすぎない。
この姿勢は、未知を攻略するビョルンの基本思想でもある。
最初に選ばれたジェローム・セイントレッド
最大5人なら、一枠ごとの価値は非常に大きい。
そこでビョルンが最初に参加意思を確認したのが、ジェローム・セイントレッドだった。
彼は遠征軍でも高い戦力を持つ。
しかし、今回ビョルンが特に注目しているのは別の部分だ。
「どうせ死んでも大丈夫だろ」
かなり冷酷に聞こえる。
だが、これは未知の探索だからこその判断である。
何が起きるか分からない場所では、誰かが最初に危険へ触れなければならない場合がある。
敵の攻撃を受けて初めて威力が分かるかもしれない。
何かに触れなければ仕掛けの性質を確認できないかもしれない。
もちろん、実際にそのようなギミックが存在すると決まったわけではない。
しかし可能性を考えれば、普通の仲間より失敗時の損失を抑えられる者を連れていく価値は大きい。
ジェロームには《異端者の祭壇(Heretic Altar)》による復活という特殊な事情がある。
復活できるから無謀に扱っていいわけではない。
それでも、同じ危険を負うなら彼の方が戦略上有利になる。
復活できても代償は残る
ジェロームは同行を了承する代わりに、重要な所持品をビョルンへ預ける。
その中にはカルイの心臓も含まれていた。
《異端者の祭壇》では、装備を定期的に登録しておかなければ、復活時にすべての所持品まで戻るとは限らない。
つまり死亡しても本人は戻れるが、装備まで無条件に守られるわけではない。
そこで重要品を先に外へ逃がしておく。
ここには、ビョルンとジェロームに共通した考え方が見える。
危険を完全になくすのではなく、危険が現実になったときの被害を小さくする。
二人を結ぶ奇妙な信用
ビョルンは、なぜそれほど重要な物を自分へ預けられるのかと尋ねる。
「なんで俺を信用する?」
ジェロームが持ち出したのは、過去にビョルンが王家探索団長の遺体を渡した件だった。
二人は無条件に信頼し合う親友ではない。
互いに相手の事情を知り、裏切った場合に相応の代償が発生する関係にある。
だからこそ裏切りにくい。
善意だけでなく利害によって成立している信用である。
過去に複雑な因縁を持つ二人だが、現在は互いの能力と立場を理解し、必要な場面では協力できるところまで関係が変化している。
「強い5人」ではなく「対応できる5人」を選ぶ
ビョルンとジェロームが決まり、残りは三枠。
ここからビョルンは単純な戦闘力ではなく、役割を基準にメンバーを選んでいく。
前衛ばかりでは、魔法が必要な状況へ対応できない。
攻撃役だけでは回復が不足する。
守りに偏れば、敵を倒す速度が足りなくなる可能性がある。
未知の探索で最も避けたいのは、必要な能力を誰一人持っていない状況だ。
そこで残る枠のうち二つを、魔術師と聖職者に決める。
ビョルンとジェロームが前線を担当できる以上、それ以外の機能を追加した方がパーティー全体の対応範囲は広がる。
未知だからこそ、特定の敵への特化ではなく汎用性を優先する。
レイヴンではなくガーウィンを選んだ理由
魔術師枠に選ばれたのは、ガーウィン・ヴェシルスだった。
ジェロームは、ビョルンがレイヴンを選ぶと思っていたらしい。
しかしビョルンは、より適任だと判断したガーウィンを選ぶ。
ガーウィンには軍属魔術師としての経験があり、探索経験も豊富。さらに高位魔法を扱える実力も確認されている。
「遊びに行くわけじゃない」
今回必要なのは、仲のいい仲間ではない。
生き残る確率を高めてくれる人材だ。
より適任の魔術師がいるなら、付き合いの長さを理由にレイヴンを選ぶ必要はない。
一方で、ジェロームはビョルンが仲間を大切にしていることも見抜いている。
レイヴンを危険から守るために外したと断定することはできない。
ただ、能力面でガーウィンを選ぶことが合理的であり、その結果としてレイヴンを未知の危険へ連れていかずに済む。
合理性と仲間への感情が、同じ結論を指しているとも考えられる。
スヴェン・パラブではなくエデン・ヘスティア
聖職者枠では、スヴェン・パラブも候補になる。
前話では、危険を察知する彼の異常な直感が攻略に大きく役立った。
しかし今回は選ばれなかった。
理由の一つは役割の重複だ。
スヴェンはパラディンであり、ビョルンとジェロームに加えれば前線がさらに厚くなる。
だが最大5人という制限があるなら、その一枠を専門の回復・支援役へ回した方が対応範囲は広い。
さらにビョルンは、スヴェンの直感にも限界があると考える。
「危険が分かるだけじゃ駄目だ」
二つの道の片方が危険なら、避ければいい。
しかし一本道しかなければどうするのか。
目の前の敵を倒さなければ進めないなら、危険だと分かっても突破するしかない。
スヴェンの能力を低く評価しているのではない。
今回の任務に必要な能力かどうかを切り分けた結果だ。
そこでジェロームが推薦したのが、リアトラス教会の大司教エデン・ヘスティアだった。
王家遠征軍の人材層と、最後の一枠
ビョルンはエデンの肩書きだけで採用を決めない。
使える神聖術を確認し、実際の能力を把握していく。
ガーウィンに対しても同じだ。
「使える魔法を全部言え」
ガーウィンが面倒そうにしても、ビョルンは確認を続ける。
未知の裂け目では、「強いらしい」という曖昧な理解では足りない。
誰が何をできるのかを知らなければ、戦闘中に適切な指示を出せないからだ。
ガーウィンは固有魔法を除けば低位魔法にも広く対応し、高位魔法も複数扱える。
エデンもまた、高水準の聖職者だった。
ここでビョルンは、王家が選抜した遠征軍の人材層の厚さを改めて実感する。
そして四人が決まったところで、最後に不足している役割を確認する。
純粋な火力役だ。
ビョルンとジェロームが前衛。
エデンが回復と支援。
ガーウィンが魔法を担当する。
守りと対応力は高いが、敵を素早く仕留める役割が不足している。
そこで最後の一枠に選ばれたのがエルウィンだった。
レイヴンにはガーウィンという代替候補がいた。
しかし攻撃役として遠征軍を見渡したとき、ビョルンはエルウィンを最適と判断する。
仲間だから連れていくのでも、仲間だから外すのでもない。
必要なら連れていく。
より適任がいるなら外す。
そこに、現在のビョルンの指揮官としての厳しさがある。
5人に圧縮された「小型王家遠征軍」
こうして5人が決まる。
ビョルンとジェロームが前線。
ガーウィンが魔法。
エデンが回復と支援。
エルウィンが火力。
これは単なる強者の寄せ集めではない。
王家遠征軍という大集団が持つ機能を、5人へ圧縮した編成と見ることができる。
大規模遠征なら、一人に足りない部分を別の隊員が補える。
前衛が崩れれば別の戦士を出す。
負傷者は後方へ下げる。
必要な魔法があれば別の魔術師に任せる。
しかし裂け目内部へ入れるのが5人なら、その強みは使えない。
内部では5人だけで、
防御・攻撃・回復・魔法・探索対応
を成立させなければならない。
情報が少ないからこそ、編成を尖らせず、多くの状況に対応できる形へ整えている。
強者5人を「パーティー」に変える数日間
メンバーが決まっても、ビョルンはすぐに突入しない。
それぞれの能力を共有し、立ち位置や探索時の注意点を確認し、少人数での連携訓練まで行う。
さらに、性格面に問題がないかも観察する。
これは未知の探索では非常に重要だ。
ガーウィンやエデンは個人として優秀でも、小規模な5人以下のパーティーで動く経験はそれほど多くない。
大人数の遠征なら、自分の専門分野に集中しやすい。
しかし5人だけなら、一人の判断ミスがそのまま陣形の穴になる。
前衛が出すぎれば後衛との距離が開く。
魔術師が狙われたとき誰が守るのか。
回復役を敵が狙ったら誰が対応するのか。
未知の敵を相手にしてから相談していたのでは遅い。
だから事前に基本的な動きを合わせる。
個人として強いことと、5人組として強いことは別問題なのだ。
前話の経験も今回の構築に生きている
前話では、ビョルンとスヴェンの二人で守護者を攻略した。
その戦闘では大量のモンスターを突破する必要があり、ビョルン自身も範囲攻撃を扱える魔術師がいれば道を開きやすかったと考えている。
二人だけでも突破できたのは、ビョルンが敵の仕組みや進むべきルートを知っていた部分が大きい。
今回は、その知識がない。
ならば前話のような不足を最初から減らしておく。
魔術師を入れる。
専門の回復役を入れる。
火力役も確保する。
ビョルンは過去の成功を「勝てたから問題ない」で終わらせない。
何が不足していたのかを抽出し、次の編成へ反映する。
これも彼の攻略能力の一部だ。
ビョルン本来の強さは「攻略情報」だけではない
これまでビョルンの大きな武器だったのは、『Dungeon and Stone』の攻略知識だ。
しかし第593話では、それが通用しない。
そのため逆に、彼が持つ別の強さがはっきり見えてくる。
情報を集める。
信頼度を評価する。
不足する役割を洗い出す。
失敗した場合の損失を考える。
適切な人材を選ぶ。
能力を確認し、連携を作る。
予備案まで用意する。
つまり彼の本当の強みは、答えを覚えていることだけではない。
答えがない状況で、正解へ近づく方法を知っていることだ。
特に「最大5人」という不確かな情報への対応が象徴的である。
壁画の解釈にすぎず、間違っている可能性もある。
それでも完全に無視はしない。
5人を前提に構築しつつ、外れた場合の保険も作る。
不確かな情報を、確定情報か無価値かの二択で扱わない。
この柔軟さが、未知を相手にしたときのビョルンを支えている。
情報と戦力を相互に補う攻略理論
今回の判断を整理すると、ビョルンが情報と戦力を同じ攻略資源として扱っていることが分かる。
情報が十分なら、必要な能力を絞り込める。
敵の弱点や攻略法が分かっていれば、少ない戦力でも勝てる。
逆に情報が足りなければ、戦力側に余裕を持たせる。
汎用性の高い魔術師。
専門の回復役。
高火力のディーラー。
失敗時の損失が比較的小さいジェローム。
さらに事前の聞き取りと訓練で、味方についての情報不足も減らしていく。
つまりビョルンは、
情報不足を戦力で埋め、戦力の不確実性を情報で埋めている。
第593話のパーティー構築は、この考え方を具体的に見せた回でもある。
「RPG(1)」というタイトルの意味
第593話のタイトルは「RPG(1)」。
内容もまさにRPGらしい。
前衛。
魔術師。
回復役。
ディーラー。
それぞれの役割を組み合わせ、弱点を補い、未知の場所へ挑む。
しかし同時に、ビョルンは今回ほど強く「これはゲームではない」と意識している。
ゲームなら、編成を間違えてもやり直せる。
敵を見てからメンバーを変更できる。
現実では、それができない。
だからこそ、ゲーム以上に真剣にパーティーを構築しなければならない。
リトライできないRPGだから、最初の編成で可能な限り正解へ近づく。
この矛盾した構図が、第593話のタイトルを印象的なものにしている。
数日の準備を終え、第3記録庫へ
幸い、裂け目にはすぐ消える兆候がない。
ビョルンたちは数日を使い、能力確認と連携訓練を続けた。
時間そのものには戦闘力がない。
しかし準備へ投入すれば、生存率へ変えることができる。
そして、できることをすべて終えた段階で突入の日を迎える。
それでも最後まで不確定要素は残る。
本当に5人入れるのか。
一人が通過したあともポータルは維持されるのか。
そこでビョルンが最初に入る。
「先に入れ」
ビョルンが通過したあともポータルが残っていれば、残る4人が続く。
最後の瞬間まで、一つ確認してから次へ進む方針は変わらない。
万一ほかのメンバーが続けなかった場合まで想定して言葉を交わし、ビョルンは仲間たちへの挨拶を済ませる。
情報は集めた。
5人も選んだ。
能力も確認した。
連携も練習した。
あとは、実際に中へ入らなければ分からない。
そしてビョルンは赤いポータルを越える。
「第3記録庫へ入場しました」
ここで初めて、探索先に具体的な名称が示される。
さらに、
「役割が付与されます」
という謎めいた通知が続く。
その「役割」が何を意味するのかは、この時点ではまだ分からない。
第593話は、数日かけて未知を可能な限り小さくしたビョルンが、最後に残った未知へ自ら踏み込むところで幕を閉じる。
まとめ|第593話で重要だったポイント
- 地下1階の守護者をすべて攻略した先で、本物の裂け目が発見された。
- ビョルンは初見攻略の危険を熟知しているため、強さだけでなく役割と対応力を重視して5人を選んだ。
- ジェローム、ガーウィン、エデン、エルウィンを加え、王家遠征軍の機能を5人へ圧縮したような編成を構築した。
- 能力確認、ポジショニング、少人数戦の訓練まで行い、強者の寄せ集めを一つのパーティーへ変えた。
- ゲーム知識が使えない状況だからこそ、ビョルンの「情報不足を戦力で補い、戦力を情報で管理する攻略能力」が際立った。
次回の注目点
- 「第3記録庫」とはどのような場所なのか。
- 付与される「役割」が、裂け目の攻略にどのような意味を持つのか。
- ビョルンが準備した5人編成は、未知のルールに対してどこまで機能するのか。
