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【徹底解説】巡礼者として追われるビョルン|『転生したらバーバリアンだった』第483話あらすじ&考察
導入
『転生したらバーバリアンだった』第483話は、ドレッドフィア戦の延長でありながら、これまでのボス攻略とはまったく違う緊張感を持つ一話だった。
今回のビョルン・ヤンデルは、強くない。
いや、正確に言えば、強さを奪われている。
圧倒的な肉体も、積み上げてきた聖水(Essence)の力も、高額な装備も、番号付きアイテムも、仲間の存在さえもない。手元にあるのは、粗末な服と、骨で作られた簡素な錐だけである。
これまでのビョルンは、無茶な状況でも突破してきた。怪物じみた耐久力、巨大化による制圧力、仲間との連携、事前知識を活かした攻略。それらが組み合わさることで、彼は数々の死線を越えてきた。
しかし第483話で試されるのは、そうした「完成されたビョルン」ではない。
何も持たない状態で、なお生き残れるのか。
それが今回の核心である。
そして、この話で登場する「巡礼者」という言葉も重要だ。ビョルンは突如として帝国兵から追われる立場となり、魔女戦争に関わるらしき歴史の中へ放り込まれる。単なる戦闘イベントではなく、世界の過去や陣営構造に触れる隠し要素が始まった可能性が高い。
第483話は、ビョルンの強さを一度剥ぎ取り、そのうえで「本当に彼を支えているものは何か」を浮かび上がらせる回だった。
第483話あらすじ|すべてを失った洞窟の入口
ビョルンが最初に行ったのは、戦闘でも逃走でもない。
待つことだった。
予想外の状況に置かれたとき、焦って動くほど危険なものはない。パニックになって走り出せば、罠を踏むかもしれない。目の前の相手に反射的に攻撃すれば、取り返しのつかない敵対行動になるかもしれない。
だからビョルンは、まず呼吸を整える。
自分を落ち着かせ、目を閉じ、そして改めて状況を確認する。
この判断がいかにもビョルンらしい。彼は荒々しいバーバリアンでありながら、実際には極めて慎重な探索者でもある。勢いで押し切る場面も多いが、その根底には常に「情報を集めてから動く」という生存戦略がある。
目を開けた先にあったのは、洞窟の入口だった。
外から光が差し込んでいる。その先には大勢の兵士たちが集まっていた。彼らは透明な障壁の向こうで怒鳴っているが、最初は声が聞こえない。映像だけが届き、音だけが遮断されているような不気味な状況である。
しかし、より深刻なのは周囲の異変だった。
仲間がいない。
エルウィンも、アイナルも、他の仲間たちも見えない。共にドレッドフィアへ挑んでいたはずなのに、ビョルンは一人で洞窟に放り出されている。
さらに装備も消えていた。
愛用していた武器も、高価な盾も、王室近衛騎士団の紋章も、身につけていた番号付きアイテムも、すべて失われている。代わりに彼が身につけていたのは、擦り切れたような粗末な服。そして手にしていたのは、モンスターの骨を削っただけのような骨錐だった。
探索者にとって装備は命そのものだ。武器は攻撃力であり、盾は生存率であり、番号付きアイテムは切り札である。それをすべて奪われるということは、これまで築いてきた戦闘スタイルを根本から破壊されることに等しい。
だが、本当の問題はさらに別にあった。
身体が重い。
装備を失ったなら、本来は身軽になるはずである。にもかかわらず、ビョルンはまるで見えない重りを背負っているかのような鈍さを感じていた。
そこで彼は、状況を示す決定的な情報に触れる。
「全キャラクターステータスは15に固定されます」
この一文が意味するのは、ビョルンの肉体的優位がほぼ消えたということだ。怪物と殴り合える筋力も、致命傷に耐える頑丈さも、探索者として鍛え上げた身体能力も、今は封じられている。
それだけではない。
聖水によって得た能力も封印されていた。
オーガの力も、ボル=ヘルチャンの能力も、バイオンの力も使えない。次元収納も開けない。予備の装備や道具を取り出すこともできない。
つまりビョルンは、肉体、装備、能力、仲間という四つの柱を同時に失ったのである。
これは単なる弱体化ではない。
探索者としての前提条件をすべて奪う初期化イベントだ。
「巡礼者」として裁かれる立場
やがて洞窟入口の障壁が弱まり、兵士たちの声が聞こえ始める。
そこでビョルンは、彼らが帝国兵であることに気付く。装備や雰囲気は、かつてドッペルゲンガーの森で見た帝国兵に近い。
しかし問題は、彼らの所属ではなく、ビョルンへ向けている敵意だった。
「邪悪なる巡礼者を裁く時だ!」
帝国兵たちは、ビョルンを「巡礼者」と呼んでいた。
この言葉は本話の重要キーワードである。兵士たちの反応から見る限り、巡礼者とは単なる旅人や信仰者ではない。むしろ帝国側から見れば、裁かれるべき罪人、あるいは人類への裏切り者に近い存在として扱われている。
さらに会話の断片から、巡礼者は魔女戦争において魔女側へ加担した者たちである可能性が示される。
ここで面白いのは、ビョルン自身にはその自覚がまったくないことだ。
彼は自分の意思で魔女側へついたわけではない。気づいたらその立場に置かれていただけである。だが、このイベント内の世界では、彼はすでに「裁かれるべき巡礼者」として認識されている。
つまりビョルンは、知らない歴史の中で、知らない罪を背負わされている。
この構図は非常に不穏だ。
帝国兵から見れば、ビョルンは悪である。
しかしビョルンから見れば、帝国兵こそ自分を殺そうとする敵である。
どちらが正義なのかは、まだ分からない。
ただ一つ確かなのは、捕まれば終わりだということだった。
ビョルンは即座に結論を出す。
今は戦うべきではない。
逃げるべきだ。
そして洞窟の奥へ走り出す。
ドレッドフィア第4フェーズと隠し要素
逃走しながら、ビョルンはこの状況を分析する。
本来、ドレッドフィアの第4フェーズは、五人以下のレイドにおいて発生する特殊な戦闘空間だった。暗闇に包まれた密室で、巨大化したドレッドフィアと戦う。取り巻きのような存在も現れ、広範囲攻撃や回避困難な技も使われる。
ただし、ビョルンはその攻略法を知っていた。
危険ではあるが、完全な初見殺しではない。スキルには対処法があり、脱出手段も存在する。だからこそ、彼はこのレイド自体を過度には恐れていなかった。
だが、今起きていることは、その知識から外れている。
洞窟。
帝国兵。
巡礼者。
能力値固定。
聖水封印。
仲間との分断。
これは通常の第4フェーズではない。
そこでビョルンは、隠し要素が発動したと考える。
『ダンジョン・アンド・ストーン』には、通常の攻略ルートとは別に、数多くの隠し要素が存在する。特定条件を満たしたときだけ発生するイベント、特殊な会話、限定アイテム、裏ルート。プレイヤーの知識や発想を試すような仕掛けが多い作品だった。
今回もその一種だと考えれば、筋は通る。
ただし厄介なのは、ビョルンがこの隠し要素を知らないことだ。前世の知識を持つ彼にとっても完全な未知。つまり、いつものように攻略情報をなぞることはできない。
だが、それでも彼は絶望しない。
なぜならゲームである以上、突破不可能な隠し要素は基本的に存在しないからだ。
もちろん難易度は高いだろう。初見殺しもあるだろう。だが、必ずどこかに攻略の糸口がある。そう信じられるからこそ、ビョルンは情報収集を続ける。
この思考が彼の強さである。
知らないから諦めるのではない。
知らないなら調べる。
分からないなら試す。
これがビョルンの探索者としての本質だ。
巡礼者に与えられた特典
逃げ続ける中で、ビョルンは自分に不利な条件ばかりが課されているわけではないと気付く。
最初に分かったのは視界だ。
帝国兵たちは洞窟の暗さに苦しんでいる。松明を持ち、足場を確認しながら進んでいる。彼らにとって洞窟内はかなり見えにくい環境らしい。
ところがビョルンには、周囲がはっきり見えていた。
壁面の形。
発光結晶の位置。
通路の分岐。
兵士たちの動き。
すべて把握できる。
「まるで暗闇を見通しているようだ」
帝国兵の言葉は、巡礼者側に暗視に近い補正が与えられていることを示している。
これは大きい。
能力値が低くても、視界で優位に立てるなら逃走にも奇襲にも使える。暗所での戦闘では、ほんの少しの視認差が生死を分ける。敵が見えない角度から接近できるだけで、戦力差は大きく縮まる。
さらに、もう一つ重要な特典がある。
洞窟内のモンスターがビョルンを襲わないのだ。
ゴブリンのような低級モンスターたちは、むしろ帝国兵へ襲いかかる。普段なら敵でしかない存在が、今回はビョルンを助けるように動いている。
この逆転は象徴的である。
探索者としてのビョルンにとって、モンスターは討伐対象だった。だが巡礼者としてのビョルンにとって、モンスターは同じ陣営、あるいは少なくとも敵対しない存在になっている。
ここから見えてくるのは、巡礼者イベントの基本構造だ。
帝国兵は敵。
洞窟のモンスターは味方寄り。
巡礼者は洞窟側の存在。
そう考えると、このイベントは単なる逃走劇ではない。帝国と巡礼者、あるいは帝国と魔女側勢力の対立を再現した歴史イベントである可能性が高い。
仲間との分断とビョルンの不安
ビョルンは走りながら、仲間たちのことも考える。
最も可能性が高いのは、全員が別々の地点からスタートしているというものだ。パーティを分断し、それぞれに生存を強いるイベントは、ゲーム的にもよくある構造である。
エルウィンなら、まだ生き残れる可能性は高い。
彼女には追跡能力があり、森や暗所での適応力もある。身体能力が制限されていたとしても、感覚と判断力で何とか状況を掴めるかもしれない。
問題はアイナルだ。
彼は戦闘力こそ高いが、方向感覚に不安がある。未知の洞窟で単独行動を強いられた場合、合流に手間取る可能性が高い。敵を倒す力があっても、進むべき方向が分からなければ危険は増す。
さらに、魔法職の仲間が単独で放り出されているなら、それも深刻だ。魔法使いは距離と準備があってこそ強い。装備や護衛を失った状態では、物理的な接近戦に弱い。
ビョルンは当然、仲間を心配する。
だが、その心配に引きずられすぎない。
ここが重要だ。
今すぐ探しに行きたい。
しかし、居場所が分からない。
自分自身の状況すら把握しきれていない。
ならば、まずは生き残り、情報を集めるべきである。
感情ではなく優先順位で動く。
これもまた、ビョルンの強さだ。
逃走から狩りへ|生存戦略の転換
しばらく逃げ続けたビョルンは、このままでは状況が好転しないと判断する。
逃げるだけでは情報が増えない。
体力は消耗する。
帝国兵は追ってくる。
そして何より、このイベントのクリア条件が分からない。
洞窟から脱出すればいいのか。
帝国兵を全滅させればいいのか。
中央の何らかの施設へ到達する必要があるのか。
それとも仲間との合流が第一条件なのか。
判断材料が足りない。
ならば、情報を得るために行動を変えるしかない。
ビョルンは逃げる側から、待ち伏せる側へ切り替える。
発光結晶の陰に身を隠し、追ってくる帝国兵を待つ。
この場所選びが巧い。
結晶はビョルンにとっては視界を確保する光源だが、帝国兵にとっては視界を乱す眩しさにもなる。暗い洞窟で松明を頼りに進む兵士たちにとって、強い光と影の境界は死角を生みやすい。
そこにビョルンは潜む。
やがて三人の帝国兵が通路へ入ってくる。
三対一。
能力値15。
武器は骨錐。
普通に考えれば不利である。
だが、ビョルンは勝算を見出す。
兵士たちは強くない。少なくとも探索者上位層のような化け物ではない。動きは硬く、洞窟に慣れておらず、モンスターの妨害にも神経を削られている。
戦闘は能力値だけで決まらない。
視界。
地形。
不意打ち。
経験。
覚悟。
それらを組み合わせれば、三人でも倒せる。
「三人ならやれる」
この判断は無謀ではない。
ビョルンがこれまでの死線で培った経験に基づく、冷静な見積もりである。
骨錐だけの奇襲戦
兵士たちが横を通り過ぎる。
最後尾の兵士が、ビョルンの射程に入る。
その瞬間、彼は動いた。
足音を殺し、距離を詰め、骨錐を首へ突き立てる。
最初の一撃は成功した。
不意を突かれた兵士は声を上げる間もなく崩れる。だが、完全な無音とはいかない。倒れる音、肉を裂く音、仲間の異変。それらを察知した残り二人が振り返る。
ここからは速度が重要だった。
ビョルンは倒れた兵士の身体を利用し、相手の視界と動きを乱す。そして二人目の首を狙う。
だが、骨錐は狙い通りには通らなかった。
革鎧に阻まれ、鎖骨付近で止まる。
しかも抜けない。
武器が使えなくなる。
普通なら焦る場面だ。
しかしビョルンは、そこで止まらない。
武器を捨てる。
この判断が速い。
骨錐にこだわって引き抜こうとすれば、その数秒で殺される。ならば武器を捨ててでも次の行動へ移るべきだ。
彼は相手に組み付き、腕を制し、首を露出させる。
そして噛みつく。
頸動脈を狙った、あまりにも原始的な殺し方だった。
ここには、ビョルンの戦闘経験が凝縮されている。
武器がなくても殺せる。
鎧の隙間を狙えばいい。
相手が人間なら、急所を潰せば死ぬ。
その事実を、彼はためらわず実行する。
二人目が倒れ、残るは一人。
最後の兵士は怯えていた。
当然だろう。
仲間二人が、ほとんど素手の相手に殺された。しかも片方は噛み殺されたに等しい。訓練された兵士であっても、精神が揺らぐには十分すぎる光景である。
兵士は槍を突き出す。
だが動きが硬い。
ビョルンは槍の軌道を読み、柄を掴み、体勢を崩す。そして相手の頭を岩床へ叩きつける。
一度では終わらない。
確実に動かなくなるまで叩きつける。
これは華麗な戦闘ではない。
泥臭く、血生臭く、見栄えのしない殺し合いである。
しかし、だからこそ今回のビョルンの強さが際立つ。
聖水もない。
装備もない。
それでも戦える。
なぜなら彼は、戦闘を「能力のぶつけ合い」ではなく「生き残るための手段」として理解しているからだ。
戦利品回収と文明の力
三人の帝国兵を倒したビョルンは、休むより先に戦利品を確認する。
革鎧。
布製の上着。
帝国の紋章。
メイス。
盾。
槍。
両手槌。
食料と水。
どれも高級品ではない。だが、今のビョルンには十分すぎる価値があった。
特に靴と防具の意味は大きい。粗末な服と裸同然の状態で洞窟を走るのと、最低限の装備を整えて移動するのでは、生存率がまるで違う。足元が守られるだけで移動効率は上がる。盾があれば不意の攻撃を受けられる。メイスがあれば骨錐よりも安定して戦える。
ビョルンはここで、文明の力を実感する。
どれほど粗末に見える装備でも、何もない状態と比べれば圧倒的な差がある。
これは今回のイベント全体にも通じる。
最初はゼロに戻される。
そこから現地調達で少しずつ生存能力を上げていく。
まるでローグライクのような構造である。
初期装備は貧弱。
敵を倒して装備を奪う。
物資を補給する。
安全圏を広げる。
そして次の敵へ挑む。
この流れが見えた時点で、ビョルンはただの逃亡者ではなくなった。
攻略者に戻りつつあった。
変装失敗が示す巡礼者判定
装備を手に入れたビョルンは、次に帝国兵への変装を試みる。
考え方としては自然だ。
帝国兵の装備を身につければ、敵の警戒をすり抜けられるかもしれない。少なくとも遠目には仲間に見えるはずだ。うまく近づければ、捕虜を取って情報を聞き出すこともできる。
ところが、この作戦は失敗する。
帝国兵たちはビョルンを見た瞬間、巡礼者だと判断した。
つまり、外見だけでは誤魔化せない。
ここは重要な伏線である。
巡礼者には、帝国兵側から認識できる何らかの特徴がある。
それは肉眼で見えるものなのか。
魔力のような反応なのか。
魂や陣営属性に近いものなのか。
あるいはイベント上のシステム判定なのか。
現時点では断定できない。
ただ、帝国兵たちは装備ではなく「存在そのもの」でビョルンを見分けている。
このことは、巡礼者が単なる変装可能な役割ではなく、世界そのものに刻まれた陣営であることを示している。
帝国兵は帝国側。
ビョルンは巡礼者側。
装備を変えても、所属は変わらない。
このルールが今後どのように効いてくるかは大きな注目点だ。
帝国兵討伐で能力値が上がる
変装は失敗したが、戦闘を通じてビョルンはさらに重要なルールを発見する。
帝国兵を五人倒したところで、システムメッセージが表示される。
「全能力値が1上昇します」
この瞬間、巡礼者イベントの方向性が一気に見えてくる。
最初に能力値を15へ固定する。
聖水を封印する。
装備を奪う。
その代わり、帝国兵を倒すことで能力値が上昇する。
つまり、今回のイベントには独自の成長システムがある。
通常の探索者は、聖水を得ることで強くなる。モンスターを倒し、聖水を獲得し、能力を組み合わせることで戦闘スタイルを作っていく。
しかし巡礼者イベントでは、その通常ルールが封印されている。
代わりに、帝国兵の討伐が成長条件になっている。
これは非常にゲーム的だ。
敵を倒す。
能力値が上がる。
装備を奪う。
さらに強い敵へ挑めるようになる。
このサイクルを回すことで、初期化されたビョルンは再び力を取り戻していくのだろう。
ここで重要なのは、ビョルンがこのルールに気付いたことだ。
一度ルールが見えれば、彼は強い。
なぜなら、ビョルンは単に戦うだけの人物ではなく、システムを理解して利用するタイプの攻略者だからである。
巡礼者イベントは何を試しているのか
今回のイベントは、ビョルンにとって非常に厳しい試練である。
だが、単に弱体化して苦しめるだけのイベントではない。
むしろこれは、ビョルンの本質を試す構造になっている。
第一に、知識依存からの切り離し。
ビョルンは前世のゲーム知識を武器にしてきた。しかし今回の隠し要素は未知であり、攻略情報がない。つまり、彼は事前知識ではなく、その場の観察と判断で進まなければならない。
第二に、聖水依存からの切り離し。
これまでのビョルンは、高位聖水の組み合わせによって強大な戦力を発揮してきた。しかし今回はそれらが封印されている。純粋な戦闘技術と生存能力だけが頼りになる。
第三に、仲間依存からの切り離し。
ビョルンの強さは仲間との連携にも支えられている。だが今回は、仲間がいない。判断も戦闘も逃走も、すべて一人で行う必要がある。
第四に、装備依存からの切り離し。
番号付きアイテムや高性能装備も失われた。つまり、切り札でゴリ押すこともできない。
こうして見ると、巡礼者イベントはビョルンから「外側の強さ」をすべて剥ぎ取っている。
そして残った「内側の強さ」を試している。
冷静さ。
観察力。
恐怖への耐性。
戦闘経験。
状況適応力。
判断の速さ。
それらが本当に備わっているかを、今回のイベントは容赦なく突きつけている。
魔女戦争と歴史の歪み
「巡礼者」という言葉から見えてくる最大のテーマは、魔女戦争の歴史である。
帝国兵たちは巡礼者を悪と断定している。
裏切り者。
裁かれるべき存在。
人類の敵。
そうした前提で行動している。
しかし、読者視点ではまだ分からない。
本当に巡礼者は悪だったのか。
魔女側についた者たちは、単なる裏切り者だったのか。
そもそも帝国側の歴史認識は正しいのか。
歴史は勝者によって書かれる。
もし帝国が魔女戦争の勝者であるなら、巡礼者たちが悪として記録されているのは当然かもしれない。だが、それは事実そのものとは限らない。
今回の洞窟では、モンスターたちが巡礼者側に近い動きを見せている。ビョルンを襲わず、帝国兵へ攻撃を仕掛ける。これは単なる偶然ではなく、陣営構造を示しているように見える。
帝国から見れば、魔女側は悪。
しかし洞窟側から見れば、帝国こそ侵入者。
この二重構造が、今後の物語に深みを与えていく可能性がある。
ビョルンは今、歴史の敗者側に立たされている。
だからこそ、これまで語られてきた「正史」とは違う視点を見ることになるかもしれない。
ビョルンの本当の強さ
第483話で最も強く印象に残るのは、ビョルンが弱体化してもなおビョルンであり続けたことだ。
能力値を奪われた。
聖水を封じられた。
装備を失った。
仲間とも分断された。
普通なら、ここで心が折れてもおかしくない。
しかしビョルンは折れない。
まず待つ。
次に見る。
情報を整理する。
仮説を立てる。
逃げる。
必要なら戦う。
戦った後は奪う。
奪ったものを使って、次の手を考える。
この一連の流れが、彼の本当の強さを示している。
ビョルンの強さは、単に筋力や耐久力ではない。
もちろん、それらも彼の武器だった。
だが本質はそこではない。
彼は、どれほど不利な状況でも「今できる最善」を探し続ける。
これが探索者としての強さである。
そして、帝国兵を倒すことで能力値が上がるというルールを発見したことで、彼はようやくこのイベントの攻略口を掴んだ。
ここから先は、ただ逃げるだけではない。
帝国兵を狩り、装備を整え、能力値を上げ、仲間との合流を目指す。
ビョルンはすでに、巡礼者イベントを「恐怖の空間」ではなく「攻略対象」として見始めている。
この切り替わりこそ、第483話の最大の転換点だった。
用語解説
巡礼者
今回のイベントにおいて、ビョルンが置かれた立場を示す言葉。帝国兵からは魔女戦争において魔女側へ加担した存在、あるいは人類を裏切った者として扱われている。ただし、現時点では帝国側の認識が真実かどうかは分からない。洞窟内のモンスターが巡礼者に敵対していないことから、単純な悪役ではなく、別の歴史的背景を持つ陣営である可能性が高い。
ドレッドフィア
恐怖を司る強敵であり、今回の異常イベントの発端となった存在。本来の第4フェーズでは特殊な戦闘空間でのボス戦になるはずだったが、今回はそこから外れた隠し要素が発動したように見える。ビョルンが知る通常攻略とは異なる展開になっている点が重要である。
帝国兵
巡礼者を討伐対象として追う兵士たち。統一された装備や組織的な行動から、単なる敵モンスターではなく、イベント内の歴史や国家構造を背負った存在と考えられる。五人討伐すると能力値上昇が発生したことから、巡礼者イベントにおける成長資源としての役割も持っている。
番号付きアイテム
ビョルンが普段使用している強力な特殊装備群。今回はこれらがすべて消失しており、通常時の戦闘スタイルを封じる要因になっている。番号付きアイテムが使えないことで、ビョルンは装備依存ではなく現地調達による生存を強いられる。
まとめ
第483話は、ビョルン・ヤンデルというキャラクターの本質を描く回だった。
今回の重要ポイントは五つある。
一つ目は、ビョルンが能力値15に固定され、聖水や装備をすべて封じられたこと。
二つ目は、彼が「巡礼者」として帝国兵から追われる立場になったこと。
三つ目は、巡礼者には暗闇への適応やモンスターから敵対されにくい特性があること。
四つ目は、帝国兵を倒すことで能力値が上昇する専用成長システムが存在すること。
五つ目は、今回のイベントが魔女戦争の歴史に関わる隠し要素である可能性が高いことだ。
特に注目すべきは、ビョルンが弱体化してもなお冷静さを失わなかった点である。
彼の強さは、聖水や装備だけで成り立っているわけではない。
観察し、考え、試し、奪い、適応する。
その探索者としての基礎能力こそが、ビョルン最大の武器なのだと改めて示された。
次回の注目点は、まず仲間たちとの合流である。エルウィンやアイナルたちも同じように別地点へ飛ばされているなら、それぞれがどのように生き延びるのかが重要になる。
次に、巡礼者イベントのクリア条件だ。帝国兵を倒し続ければいいのか、どこかへ到達する必要があるのか、それとも魔女戦争の真実に触れることが目的なのか。現時点ではまだ不明である。
そして最後に、魔女戦争そのものの再解釈である。帝国が語る正義と、巡礼者側の立場。その食い違いが明らかになれば、物語全体の世界観にも大きな影響を与えるだろう。
第483話は、ビョルンがすべてを失う回でありながら、同時に彼が再び攻略者として立ち上がる回でもあった。
逃亡は終わった。
ここからは、巡礼者としての攻略が始まる。
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