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【徹底解説】最後の賢者の仲間ブルグリッド登場|『転生したらバーバリアンだった』第515話あらすじ&考察
前話で、青い肌と鋭い牙を持つ原住民は、自分たちを「人間」と名乗り、ビョルンたちを「魔物」と呼んだ。
人間側から見れば、原住民は明らかに魔物のような姿をしている。
しかし、原住民側から見れば、言葉の通じない巨大な異種族が武器を持って島へ侵入してきたのだ。彼らが探索者を魔物と認識するのも、不自然ではない。
第515話では、この価値観の反転が、食事、生命維持、挨拶、家族、社会制度へと広がっていく。
前半は奇妙な異文化交流として進むが、後半では原住民の戦士たちが現れ、一触即発の交渉へ変化する。
そして最後には、最後の賢者の仲間と同じ名前を持ち、ラフドニア語まで話す長老ブルグリッドが登場する。
原住民との出会いは、単なる新種の発見ではない。
迷宮の失われた歴史へつながる入口だった。
「人間」を名乗る原住民への反応
小さな原住民は、自分たちを人間と呼び、ビョルンたちを魔物だと主張した。
人間側は原住民を魔物と呼び、原住民側も探索者を魔物と呼ぶ。
互いに自分たちを世界の基準とし、姿や文化の違う相手を異形の存在として分類していた。
ビョルンは、その状況を面白いと感じた。
原住民の主張を正しいと認めたわけではない。ただ、相手の立場から見れば、確かにビョルンたちのほうが魔物に見えると理解できたのである。
事情を聞いたアイナルは、原住民の主張を笑い飛ばした。
自分が魔物と呼ばれても、自分自身の価値が変わるわけではない。アイナルらしい単純な反応だが、余計な偏見を持たないという意味では健全でもある。
他の仲間たちは、好奇心、戸惑い、不快感など、それぞれ異なる反応を見せた。
意外だったのは、魔術師ベルシルがほとんど驚かなかったことだ。
彼女がプレイヤーであるなら、世界によって常識や分類が異なることに慣れているのかもしれない。ラフドニアの人間と魔物という区分も、絶対的な真理ではなく、この世界の住民が便宜的に決めたものだと受け入れやすかったのだろう。
もしレイヴンが同行していれば、原住民の生態、言語、社会構造について質問を重ねていたはずだ。
ビョルンも同じように、目の前の存在への好奇心を抑えられなくなっていた。
ビョルンが選んだ「探索者」という自己紹介
小さな原住民は、ビョルンたちが何者なのかと問い返した。
単純なようで、答えるのが難しい質問である。
人間だと答えても、相手も自分を人間と呼んでいる。
バーバリアンだと答えれば、ビョルン個人の種族しか表せない。仲間には妖精や獣人など、異なる種族もいる。
ビョルンは考えた末、自分たちを「探索者」と説明した。
「俺たちは探索者だ。」
探索者とは、迷宮を歩き回り、未知のものを探し、魔物を倒す者。
種族ではなく、役割によって自分たちを定義したのである。
これは一行全体を説明する言葉として適切だった。
一方、原住民側から見れば、探索者という存在は恐ろしく聞こえた可能性もある。
迷宮を移動し、新しいものを発見し、魔物を殺す者。
原住民が自分たちを人間、ビョルンたちを魔物と考えているなら、探索者とは自分たちのような存在を探し出して殺す者という意味にもなる。
同じ言葉でも、聞く者の立場によって意味は変わる。
原住民独自の意思表示
ビョルンたちが島の外から来たと聞くと、小さな原住民は右手の人差し指を下へ向けた。
どうやら、人間のうなずきに近い仕草らしい。
ビョルンも人差し指を下へ向けると、原住民は指を二度動かして返した。
言葉が通じても、身振りや挨拶まで共通しているとは限らない。
人間にとって自然なうなずきや握手も、その社会の文化によって意味づけられた行動である。
ビョルンが相手の仕草をまねたことは、小さいながらも信頼を築く行動だった。
相手の文化を否定せず、自分から合わせる。
最初は命乞いをしていた小さな原住民が、次第に会話を楽しむようになった背景には、こうした積み重ねがあったのだろう。
ビョルンは会話が長くなると判断し、仲間たちへ周囲の警戒を命じた。
一行はビョルンを中心にした防御陣形へ移り、エルウィンが森を警戒し、アメリアが罠や地面の異変を確認する。
ビョルンが異種族との会話を担当し、仲間がその時間を守る。
戦闘だけでなく、情報収集でも役割分担が機能していた。
「食べる」を知らない原住民
ビョルンは相手との距離を縮めるため、干し肉を差し出した。
人間社会では、食べ物を分けることは分かりやすい友好の意思表示になる。
しかし、小さな原住民は干し肉を見つめ、不思議そうに問い返した。
「“食べる”って何?」
ビョルンは一瞬、言葉を失った。
冗談ではない。
原住民は、本当に食べるという行為を知らなかった。
ビョルンは、歯で食べ物をかみ、飲み込むことだと説明し、実際に干し肉を食べて見せた。
それを見た原住民は、強い嫌悪感を示した。
彼らにとって、歯は食べ物をかむための器官ではない。
敵を殺すための武器だった。
その歯で物を細かくし、身体の内部へ入れるという発想が理解できなかったのである。
原住民は、人間と同じように会話し、感情や家族を持つ。
一方で、食事という生命維持の基本行為を必要としない。
知性や社会性では人間に近く、身体の仕組みでは迷宮の魔物に近い。
原住民を人間と呼ぶべきか、魔物と呼ぶべきかという問いは、さらに複雑になった。
生命の水と原住民の生態
何も食べずにどうやって生きるのかと尋ねると、小さな原住民は当然のように答えた。
「生命の水さえ飲めば、僕たち人間はずっと生きられる。」
原住民は腰の袋から、小さな陶器の瓶を取り出した。
陶器の存在だけでも、原住民が道具を製造し、液体を保存する技術を持っていることが分かる。
ビョルンは中身を少し分けてもらい、ベルシルへ調査を頼んだ。
ベルシルは高い魔力密度に気づき、その正体を見抜いた。
砕いた魔石を水へ溶かした液体。
ラフドニアで魔道具を作る材料として使われる魔力水と、ほぼ同じ製法だった。
人間側では工業材料に近い液体を、原住民は生命維持のために飲んでいる。
原住民が生命の水だけで生きられるなら、魔石の確保は人間社会における食料生産に相当する。
魔物を倒す。
魔石を回収する。
砕いて水へ溶かす。
それを飲むことで生命を維持する。
原住民の戦闘能力が高い理由も、単なる防衛だけではないのかもしれない。
魔物を狩れなければ、村の生命資源を確保できない。
戦士は外敵から共同体を守る者であると同時に、人間社会の農民や狩人のような生産者でもある。
また、魔石を適切な濃度へ調整し、生命の水として保存・配布する技術者も必要になる。
戦士だけでなく、加工や資源管理を担う階層が村に存在する可能性も高い。
ただし、「ずっと生きられる」という言葉が完全な不老不死を意味するとは限らない。
食料を必要としないという意味なのか。
老化を抑えるのか。
人間より長寿であるため、子供が永遠と表現しているだけなのか。
現時点では不明である。
それでも、後に登場する長老ブルグリッドの正体を考えるうえで、重要な伏線となる。
マルピチとの名乗り
ビョルンが生命の水について質問を続けると、小さな原住民は、自分を乱暴な呼び方で呼ばないよう抗議した。
「僕はマルピチだ!」
こうして、小さな原住民の名前が判明した。
ビョルンは短くマルと呼ぶことにし、自分も「ヤンデルの息子、ビョルン」と名乗った。
マルピチは、ビョルンの名前を変だと評した。
ビョルンたちが原住民の名を奇妙に感じるように、原住民側から見ればラフドニアの名も不自然に聞こえる。
自分たちの文化だけが普通なのではない。
互いに相手を変わっていると感じているのだ。
マルピチは人差し指を差し出し、ビョルンも指先を合わせた。
原住民における握手のようなものだろう。
最初は命乞いをしていたマルピチが、今はビョルンと名前を交換し、挨拶を交わしている。
完全な信頼ではないが、ビョルンを会話可能な相手として認識し始めた証拠だった。
閉ざされた原住民の村
ビョルンはようやく、本来聞くべきだった村の入口について尋ねた。
マルピチはためらわず答えた。
「今は、入口がないよ。」
場所を知らないのではない。
大人たちが入口を閉じたため、外から入れないという意味だった。
村の住民であるマルピチ自身も戻れない。
原住民は通常、雨季以外に入口を完全封鎖することはないという。
村が地下に存在するなら、雨季に入口を閉じるのは合理的である。
大量の雨水の流入を防ぐ。
地盤が緩んだ時期に魔物が侵入するのを防ぐ。
土砂崩れや通路の崩壊から住民を守る。
消えた入口は迷宮の不可解な現象ではなく、原住民自身が操作する防衛設備だった可能性が高い。
雨季でもない今、入口が閉じられたのは、マルピチが捕虜を解放したためだった。
原住民の大人たちは、逃亡した探索者がまだ村内に隠れていると考え、入口を閉じて内部を捜索しているのだろう。
捜索しても見つからなければ、探索者が外へ逃げたことに気づく。
そして追跡部隊が現れる。
さらに、村の子供であるマルピチまで消えていると分かれば、原住民側はすぐに地上へ出てくるはずだ。
ビョルンたちに残された時間は多くなかった。
友好か殲滅か
ビョルンは、マルピチから得た情報を仲間たちへ共有した。
相手と遭遇してから方針を決めるのでは遅い。
原住民が武器を構えて現れたとき、誰か一人でも先走れば戦闘が始まる。
そこでビョルンは投票を提案した。
「仲良くなるか、全員殺すかだ。」
極端な二択に見えるが、探索者としては合理的だった。
原住民を敵として残しながら島を探索すれば、いつ罠や奇襲を受けるか分からない。
相手は地形を熟知し、銀獅子クランを一方的に壊滅させている。
敵対するなら、背後の脅威を完全に排除する必要がある。
一方、友好関係を結べれば、原住民は極めて価値の高い協力者になる。
島の地形。
安全な経路。
雨季の変化。
未知の魔物の能力。
魔石の採取場所。
地下空間の構造。
生命の水の技術。
古代語や迷宮の歴史。
この土地で生きてきた者だけが知る情報を得られる。
マルピチは子供であり、村の歴史や重要な秘密までは知らない可能性が高い。質の高い情報を得るには、大人や長老と話す必要がある。
アメリアは、大人を一人捕らえて尋問すればよいと考えた。
だが、マルピチを捕らえられたのは子供だったからであり、大人の戦士が同じ強さとは限らない。
それに、現時点では暴力以外の方法が残っている。
アメリアは、人間でなければ不必要に殺さないという倫理の対象外だと考えたが、すぐに気づく。
原住民自身は、自分たちを人間と名乗っている。
言葉、家族、社会を持つ相手を、姿が違うという理由だけで魔物と同じように扱えるのか。
議論の末、友好三票、殲滅三票となった。
最後の判断は、再びビョルンへ委ねられた。
盾を貫く原住民の矢
ビョルンが決断しようとした瞬間、空気が裂けた。
戦士としての直感が危険を知らせ、身体が思考より早く動く。
ビョルンが盾を構えた直後、強烈な衝撃が腕へ伝わった。
矢が盾へ突き刺さったのである。
完全には貫通していない。
しかし、矢じりは盾の表面を破り、内部へ深く食い込んでいた。
魔法や特殊能力ではない。
純粋な弓と矢による物理攻撃だった。
盾へ深く矢を食い込ませるには、射手の筋力だけでなく、弓の張力、弦の素材、重い矢、高硬度の矢じり、正確な射撃技術が必要になる。
原住民は、高い身体能力だけでなく、優れた武器製造技術も持っている。
さらに、矢は単なる殺傷攻撃ではなかった。
一方向から攻撃し、全員の注意を射手へ向ける。
その隙に、別方向から武装した戦士たちが接近する。
弓、槍、刃物。
原住民は役割に応じて異なる武器を使い、マルピチ救出のために包囲を作ろうとしていた。
マルピチを盾にするビョルン
敵の目的がマルピチなら、そこに攻撃を止めるための弱点がある。
ビョルンは矢を受けた盾を捨て、マルピチを抱え上げた。
原住民の戦士たちの動きが止まる。
ビョルンが使ったのは、物理攻撃を防ぐ盾ではない。
敵の意思決定を縛る心理的な盾だった。
矢を放てば、マルピチへ当たるかもしれない。
一斉に接近すれば、ビョルンが子供を殺す可能性がある。
原住民側は人数と地形の優位を持ちながら、攻撃という選択肢を奪われた。
「武器を捨てろ。さもなければ、この子供を殺す。」
言葉が通じることにも、原住民たちは動揺した。
意思疎通のできない魔物だと思っていた相手が、自分たちの言語を使い、明確な要求を突きつけたのである。
アメリアは、友好を考えていたはずのビョルンが、子供を人質にしたことへ驚いた。
「これが仲良くなる方法なの?」
ビョルンにとって矛盾はなかった。
相手はすでに矢を放っている。
まず攻撃を止め、話し合える状況を作る。
「戦ってから仲良くなる。」
ビョルンの交渉は洗練された外交ではない。
力関係を明らかにし、相手がこちらを無視できなくなってから対話を始める、バーバリアンらしい現実的な方法だった。
巨大な弓を持つマルピチの父親
やがて、茂みの奥から身長三・五メートルほどの巨大な原住民が現れた。
その身体に合わせた大弓を持っている。
盾へ矢を突き刺した射手は、この個体だった。
長い弓と高い張力の弦を巨大な腕で引き、重い矢を放つ。
森のなかで正確に射撃できることからも、地形と射撃地点を熟知していることが分かる。
マルピチは、その大柄な戦士を父親と呼んだ。
救出部隊を率いる戦士が父親なら、マルピチが村で重要視されている理由にも説明がつく。
有力な戦士の子供、あるいは村の指導層に属する家族なのかもしれない。
父親と子供のやり取りには、人間と変わらない家族感情が表れていた。
子供は父親に武器を捨てないよう叫び、父親は感情を抑えて黙るよう命じる。
姿や生態が違っても、家族を心配する気持ちは理解できるものだった。
村への招待
ビョルンが武器を捨てるよう要求すると、マルピチの父親は予想外の提案をした。
「魔物よ、お前を我々の村へ招待する。」
子供を人質に取られている状況で、相手を村へ招く。
ビョルンは罠を疑った。
地下の狭い通路へ誘い込まれれば、人数や逃走経路を制限される。
入口を閉じられれば、完全に敵地へ閉じ込められる。
原住民側は、捕らえられている探索者たちも無事だと説明したが、ビョルンには信用する根拠がない。
さらに、望むならマルピチを人質にしたままでもよいと提案されたが、ビョルンは拒否した。
人質は戦闘を止める一時的な手段としては有効だった。
しかし、子供を拘束したまま村へ入れば、長期的な友好関係を作ることは難しくなる。
また、地下では人質を簡単に奪い返される可能性もある。
短期的な切り札を、恒久的な安全保証と勘違いしない。
ビョルンは人質の役割が終わりつつあることを理解していた。
マルピチの父親は、少しだけ待ってほしいと頼んだ。
増援を呼ぶ可能性もあったが、古代語で会話できると分かってから、原住民側の敵意は明らかに弱まっている。
周囲からは、ビョルンが長老の語っていた存在ではないかという声も聞こえた。
原住民は以前から、外部から言葉の通じる者が現れる可能性を知っていたのかもしれない。
長老ブルグリッドの登場
約十分後、原住民の戦士たちが左右へ分かれ、中央へ道を作った。
そこから、白いひげを持つ老いた原住民が現れる。
大きな武器は持っていない。
しかし、彼が姿を見せた瞬間、戦場の主導権は巨大な射手から老人へ移った。
戦士たちは発言を控え、命令を待つ姿勢を取る。
原住民社会では、戦闘力だけで序列が決まるわけではない。
知識、経験、伝承を持つ長老が、共同体全体の判断を担っているのだろう。
長老はビョルンへ名を尋ねた。
「ヤンデルの息子、ビョルンだ。」
長老はその名を良い名前だと評し、戦士たちへ後退を命じた。
そして、自らをブルグリッドと名乗った。
ビョルンは、その名前に聞き覚えを感じた。
アメリアへ確認すると、最後の賢者の仲間の一人にもブルグリッドという人物がいたという。
最後の賢者。
古代語。
原住民。
ラフドニア。
別々に見えていた要素が、長老ブルグリッドを中心につながり始めた。
ラフドニア語を話す長老
ブルグリッドはビョルンへ手を差し出した。
マルピチの指先を合わせる挨拶ではない。
人間社会の握手だった。
そして、古代語ではなく、流暢なラフドニア語で話しかけた。
「お会いできて光栄です。ラフドニアから来た探索者ですね。」
ブルグリッドは、ラフドニアという都市を知っている。
探索者という概念も理解している。
言語は自然に身につくものではない。
誰かから学ぶか、その言葉を使う者と長期間交流する必要がある。
つまり、ブルグリッド本人、または彼の知識を伝えた者は、過去にラフドニアの住民と接触している。
最後の賢者との関係を疑うのは自然だった。
ブルグリッドは本人なのか
最も衝撃的な仮説は、目の前のブルグリッドが、最後の賢者の仲間本人であるというものだ。
通常なら、時代の違いから否定される。
しかし、原住民には生命の水がある。
マルピチは、生命の水を飲めば永遠に生きられると語った。
原住民が人間よりはるかに長寿なら、ブルグリッドが最後の賢者の時代から生き続けていても不可能とは言い切れない。
最後の賢者と行動し、ラフドニア語や探索者について学び、その後この村へ戻って長老となった。
この仮説なら、名前、言語能力、外部世界への理解が一つにつながる。
別の可能性として、最後の賢者の仲間の子孫や、名前と知識を受け継いだ長老とも考えられる。
原住民社会で、重要人物の名前と役割が代々継承されているのかもしれない。
本人でも子孫でもないとしても、ブルグリッドが最後の賢者に関する記録を受け継いでいる可能性は高い。
どの仮説でも、原住民の村が最後の賢者と無関係とは考えにくい。
食事をしない社会の構造
原住民社会は、人間社会とは根本的に異なる可能性がある。
人間の社会は、食料確保を中心に形作られている。
農地を守り、家畜を育て、収穫物を保存し、運搬する。
原住民が生命の水だけで生きるなら、農業や牧畜は必要ない。
その代わり、魔石が生命資源になる。
魔物を倒す戦士は、防衛者であると同時に、共同体の生命を支える生産者でもある。
魔石を砕き、適切な濃度で水へ溶かし、陶器の瓶へ保存する技術者も重要になる。
生命の水を管理する者は、住民の命を左右する。
長老の権力が、歴史や知識だけでなく、生命資源の管理と結びついている可能性もある。
食料不足の代わりに、原住民社会では魔石不足が起こる。
周囲の魔物が減少すれば、生命の水を作れない。
雨季に地上へ出られなければ、備蓄に頼らなければならない。
他の集落が存在するなら、魔物の生息地や魔石を巡る争いが起きる可能性もある。
長寿社会における子供の価値
原住民が極端な長寿なら、子供の価値も人間社会とは異なる。
大人が何百年も生きるなら、世代交代は非常に遅く、出生数も少ない可能性がある。
その場合、子供一人を失う損失は大きい。
マルピチ救出のために多数の戦士が動いたのも、父親が有力者だからだけではなく、原住民社会で子供そのものが希少だからかもしれない。
ビョルンがマルピチを人質にした瞬間、戦士たちが攻撃を止めたことにも、子供の重要性が関係している可能性がある。
ビョルンの交渉は正しかったのか
友好を考える相手の子供を人質にする行動は、信頼関係を築く方法としては乱暴である。
原住民側には、子供を盾にする卑怯な魔物という印象が残ったはずだ。
一方、原住民は先に矢を放った。
その威力はビョルンの盾へ深く食い込むほど高く、周囲には複数の戦士が潜んでいた。
地形も人数も相手が有利だった。
ビョルンはマルピチを人質にすることで、誰も殺さずに戦闘を停止させた。
戦術としては成功している。
洗練された外交ではないが、襲撃直後の戦場で交渉の機会を作る方法としては有効だった。
そして、相手が対話を選んだ後は、マルピチを人質にしたまま村へ入ることを拒否した。
必要な場面では非情な手段を使う。
役割が終われば手放す。
ビョルンは、残酷さそのものを目的としていたわけではない。
原住民と友好を結ぶ価値
原住民との友好は、善意だけでなく迷宮攻略上の戦略でもある。
島の地図。
安全な通路。
未知の魔物の能力。
雨季の環境変化。
魔石の採取場所。
地下集落。
生命の水。
古代文明。
最後の賢者に関する情報。
原住民は、探索者が長い時間をかけても得られない知識を持っている。
殲滅すれば、村の資源は得られるかもしれない。
しかし、知識を持つ者を殺せば、失われた情報は二度と取り戻せない。
探索者にとって、未知の情報は財宝以上の価値を持つ場合がある。
ただし、無条件に信用することも危険だ。
銀獅子クランの仲間は殺され、捕虜にされている。
村への招待も、地下へ誘い込む罠かもしれない。
長老が友好的でも、戦士や被害者の家族が同じ考えとは限らない。
人間側にも原住民を憎む生還者がいる。
異種族間の友好は、指導者同士が握手するだけで完成するものではない。
まとめ
第515話では、原住民との接触によって、人間と魔物の境界がさらに曖昧になった。
マルピチは食事を知らず、魔石由来の生命の水で生きている。
身体の仕組みは魔物に近い一方、名前、家族、挨拶、好奇心、恐怖といった人間と共通する感情や文化を持っていた。
ビョルンは、自分たちを人間ではなく探索者と説明した。
それは異なる種族の仲間をまとめる言葉だったが、原住民側から見れば、迷宮を歩き回り魔物を殺す危険な存在という意味にもなる。
友好か殲滅かという投票は三対三に分かれた。
その直後、原住民の矢がビョルンの盾へ突き刺さる。
ビョルンはマルピチを人質にし、原住民側の攻撃を停止させた。
「戦ってから仲良くなる。」
粗暴ではあるが、誰も殺さずに交渉へ移るという意味では成功した方法だった。
そして現れた長老ブルグリッドは、最後の賢者の仲間と同じ名を持ち、ラフドニア語を話した。
生命の水による長寿が事実なら、本人である可能性すら否定できない。
子孫や知識の継承者だったとしても、原住民の村が最後の賢者と深く関係している可能性は高い。
第515話は、未知の種族を発見した回ではない。
ビョルンが、迷宮内部で生き続けてきた文明と出会い、最後の賢者の時代へつながる扉を開いた回なのである。
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